TikTok Shop開始から1年。「フォロワー数」ではなく、「売れる人」が生まれる市場だった
TikTok Shopが日本でサービスを開始してから約1年。株式会社Nintは、この1年間の推計データをまとめた「TikTok Shop 日本市場レポート」を公開しました。市場規模は年間推計約536億円。楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングを合わせた国内3大ECモールと比べれば、まだ約0.5%の規模に過ぎません。しかし、サービス開始初月の約6.4億円から直近では約88億円へと、およそ14倍に成長しています。
もちろん、この数字だけでも十分インパクトがあります。しかし、今回のレポートで本当に興味深かったのは、市場規模よりも「何が売上を生み出しているのか」という点でした。そこには、従来のECやSNSとは少し違う、新しい商売の姿が見えてきます。
市場はまだ小さい。しかし、成長スピードは無視できません。
年間推計536億円という市場規模だけを見ると、国内EC全体の中ではまだ新しい存在です。一方で、サービス開始からわずか1年で約14倍へ拡大したという成長率は、決して見逃せるものではありません。一方、比較対象となった国内3大ECモールは同期間で前年比約4.3%の成長でした。もちろん成熟市場と新市場を単純に比較することはできませんが、TikTok Shopが現在どれほど勢いのある市場なのかは、この数字からもうかがえます。
また、売れている商品の顔ぶれにも違いがありました。3大ECモールでは家電が最も大きな構成比を占める一方、TikTok Shopでは化粧品がトップ。さらに食品や衣類など、比較的購入しやすい価格帯の商品が多く販売されています。単一カテゴリーでは「ストレス解消グッズ」が最も売れており、動画を見て「ちょっと試してみたい」と思える商品が伸びていることも、この市場ならではの特徴と言えそうです。
「フォロワーが多いほど売れる」は、この市場では当てはまりませんでした。
今回のレポートで最も印象的だったのは、「フォロワー数」と「売上」が必ずしも一致しなかったことです。売上上位300人の配信者を分析すると、約79%はフォロワー5万人未満。それにもかかわらず、市場全体の売上の66.2%を生み出していました。
反対に、フォロワー50万人以上の有名インフルエンサーはわずか5人で、売上全体に占める割合は2.9%にとどまっています。中にはフォロワー約1万3,000人で年間3億円を超える販売実績を上げた配信者もいたといいます。もちろん、フォロワー数が不要という話ではありません。しかし、少なくともTikTok Shopでは、「人気がある人」よりも、「商品の魅力を伝え、購入につなげられる人」が評価される市場になっていることが、このデータから見えてきます。
ライブコマースは「販促」ではなく、「販売チャネル」へ変わり始めています。
ライブ配信やショート動画を経由した売上は、年間売上全体の約17%に達しました。これはライブ8.2%、動画9.2%を合計した下限値であり、実際にはさらに大きい可能性もあります。さらに、1回のライブ配信で約9,000万円を売り上げた事例も紹介されています。
特に食品カテゴリーの伸びは顕著でした。開始当初は構成比2.3%だった食品は、直近では15〜21%まで拡大し、中でも米は2025年秋以降、売上ランキング上位に入る存在となっています。ライブ配信というと、これまでは「盛り上がるイベント」という印象を持つ人も少なくありませんでした。しかし、今回のデータを見る限り、ライブはすでに売上を生み出す販売チャネルとして機能し始めていることが分かります。
2年目に問われるのは、「誰が売るか」ではなく、「どう伝えるか」です。
TikTok Shop開始から1年で見えてきたのは、「フォロワー数が多い人が勝つ市場」ではなかったという事実でした。もちろん、今後市場が成熟するにつれて状況は変わるかもしれません。それでも現時点では、大きな影響力よりも、商品の魅力を動画やライブで伝え、視聴者との信頼関係を築ける人が結果を残しています。
これはECにとっても興味深い変化です。これまでのネット通販は、「検索されること」が入口でした。しかしTikTok Shopでは、「たまたま見つける」「配信を見て欲しくなる」という流れが売上につながっています。
つまり、「探して買う」から、「出会って買う」へ。ECの入り口そのものが少しずつ変わり始めているのです。TikTok Shopが日本に上陸して1年。この市場はまだ発展途上ですが、だからこそ、これからどのような売れ方が生まれていくのか。2年目は、その変化がさらに加速していくのかもしれません。