酷暑時代の買い物はどう変わるのか──楽天市場が見つけた2026年夏の新しい消費行動
夏の暑さは、もはや季節の話ではなくなってきました。気象庁は2026年4月から、最高気温40度以上の日を「酷暑日」と定義しました。これまでの「猛暑日」をさらに上回る危険な暑さが、現実のものになりつつあります。
こうした変化は、人々の暮らし方だけでなく、買い物の仕方にも影響を与えています。先ほど、楽天グループが発表した「2026年夏のトレンド予測」によると、暑さ対策関連商品の市場規模は、この5年間で6倍以上に拡大。単なる季節商品だった暑さ対策グッズは、いまや生活インフラとして定着し始めています。
さらに興味深いのは、暑さ対策だけでなく、食事やファッション、さらにはペットとの暮らし方までが変化していることです。楽天市場の購買データから見えてきたのは、「暑さを我慢する夏」から「暑さを攻略する夏」への転換でした。
「2026年夏のトレンド予測」の具体的内容
楽天グループは、2026年夏のトレンドとして、大きく「猛暑“新”対策」と「夏の風物“新”グルメ」の2つのテーマを提示しました。
【猛暑“新”対策】
- 1.ウェアラブル冷却武装
- 2.進化系冷却グッズ
- 3.多機能+ファン
- 4.避暑着
- 5.ワンにゃんクーラー
【夏の風物“新”グルメ】
- 6.辛酸冷・麺
- 7.たのしそうめん
- 8.ひんやりとろ変スイーツ
- 9.冷凍アレンジ
- 10.いえなかかき氷専門店
一見するとバラバラな商品群に見えます。しかし、その背景をたどると、そこには酷暑と向き合う生活者の新しい価値観が見えてきます。
「暑さ対策」が生活インフラになった
楽天市場によると、暑さ対策関連商品の流通総額は2020年を基準にすると2025年には約6.4倍まで拡大しています。
これは一時的なブームではありません。
これまで夏の暑さ対策といえば、扇風機や日傘を買う程度のものでした。しかし近年は、毎年のように記録的猛暑が続き、「暑さから身を守る」こと自体が生活の必須条件になっています。
実際、楽天市場が実施した調査では、約9割の人が「夏の暑さが以前より増している」と回答しています。
さらに注目すべきは、昨年の暑さ対策について「十分にできなかった」と感じている人が約3割存在することです。
理由として挙げられたのは、「対策しても暑かった」「想定以上の暑さだった」「日陰だけでは対応できなかった」といった声でした。
つまり消費者は、暑さ対策をしているにもかかわらず、それでも追いつかない現実を感じています。だからこそマーケットでは、「少し涼しくなる商品」ではなく、「確実に体温を下げる商品」が求められるようになっています。
暑さ対策は快適性を高めるためのものではなく、安全を確保するための必需品へと変化しているのです。
「涼しい」ではなく「冷やす」へ進化する猛暑対策
今年の暑さ対策トレンドで特徴的なのは、「身につけて直接冷やす」商品群の伸長です。楽天市場ではアイスハットが前年同期比約3.2倍、空調ウェアが約1.6倍と大きく伸びています。
従来の暑さ対策は、日傘や扇風機のように周囲の環境を利用して涼しさを得るものでした。
しかし酷暑時代になると、それだけでは足りません。そこで注目されているのが、体温そのものを下げるウェアラブル型の冷却機器なのです。冷却性能を重視する傾向はアンケート結果にも表れており、暑さ対策グッズ選びで最も重視されるのは「冷却効果」、次いで「持続時間」でした。
象徴的なのが高性能保冷剤です。

ステンレス製の繰り返し使える保冷剤は前年同期比14倍超という驚異的な伸びを見せています。また、聞きなれない言葉も出てきて、それがペルチェ素子。簡単に話すと、小型冷蔵庫の仕組みを首元サイズにまで小さくして、ネッククーラーにしています。そして、衣服そのものを冷やすアイスクーラーも人気を集めています。もはや、暑さを避けるのではなく、身体を直接冷却する。
消費者の発想そのものが変わり始めているのです。
ファッションも「暑さ対策」が主役になる時代
暑さ対策は機能だけでなく、ファッションの領域にも広がっています。楽天ファッションでは暑さ対策関連商品の取扱数が前年比約1.7倍となりました。かつての日焼け対策グッズには、「機能的だけれど見た目がいまひとつ」というイメージがありました。
しかし現在は違います。
レース付きフェイスカバーやデザイン性の高いアームカバーなど、おしゃれを楽しみながら暑さを防ぐ商品が人気を集めています。
特にアームカバーは、屋外ではUV対策、室内では冷房対策として使えるため、実用性とファッション性を兼ね備えたアイテムとして定着しています。
さらに子ども向け商品の伸長も目立ちます。楽天市場では子どもの暑さ対策関連商品の流通総額が前年比2倍以上となりました。
親世代にとって熱中症対策は必須でありながら、子ども自身が身につけたくなるデザインも求められています。暑さ対策は「我慢して着るもの」から「積極的に選びたくなるもの」へと進化しているのです。
家族だけでなく、ペットも守る夏へ
猛暑の影響は人間だけにとどまりません。楽天市場の調査によると、ペットを飼う人の8割以上が「夏の暑さによる影響に不安を感じている」と回答しています。
興味深いのは支出傾向です。飼い主自身の暑さ対策費用よりも、ペット向けの対策費用の方が高い価格帯に集中しています。
自分よりも愛犬や愛猫を優先している姿が見えてきます。実際に楽天市場ではペット向け暑さ対策商品の流通総額が前年同期比約3倍まで伸長しています。

クールベストや冷却マットなどの需要も高まっています。人間にとって40度近い気温が危険であるように、被毛を持つ犬や猫にとっても猛暑は命に関わる問題です。
暑さ対策市場は、人間向けの商品だけでなく、家族の一員であるペットを守るための市場へと広がり始めています。猛暑対策が「個人の問題」から「家族全体の課題」へ変化していることがよく分かります。
夏グルメは「冷たい・楽しい」がキーワードに
食の世界でも変化が起きています。楽天市場によると、夏に食べたい定番グルメの上位には冷やし中華、かき氷、そうめんが並びました。
しかし今年は単なる定番ではなく、「アップデートされた夏グルメ」が注目されています。なかでも、驚きなのは、定番アイテムが当たり前に、夏用食品になっていることです。
紀州南梅アイス梅は梅干しなのに、シャリっとひんやり。口の中でその印象が一変します。
個人的には、低温でじっくり蒸し焼きにしたチーズテリーヌが印象に残りました。面白いのは、解凍具合によって表情が変わることです。冷凍状態ならアイスのようにひんやり。

少し溶ければムースのようになめらかになり、さらに時間が経つと濃厚なチーズの風味が顔を出します。暑い夏に「冷たいものを食べる」のではなく、「変化を楽しむ」。そんな新しいスイーツの楽しみ方が広がっていることを感じさせる一品でした。
暑さを我慢するために食べるのではなく、暑さの中でも楽しめる食体験を求める。そこには、酷暑を前提とした新しい夏の楽しみ方が見えてきます。
楽天市場のデータが示す「酷暑との共存」
今回の楽天グループの発表で印象的だったのは、暑さ対策市場の拡大そのものではありません。むしろ、人々が「猛暑は特別な出来事ではなく、毎年向き合う前提条件」と捉え始めていることでした。
もちろん、そこには「今年はこれが売れそうだ」というトレンドの側面もあります。ただ、今回の発表を聞いていて感じたのは、それ以上に、人々が暑さそのものに順応し始めていることでした。
「最近の夏は暑い」と感じている人は約9割。暑さ対策市場も、この5年で6倍以上に拡大しています。市場が広がれば、それだけ新しい商品が生まれます。
しかし、その中身を見ると単純な暑さ対策だけではありません。ファンと日傘を組み合わせたり、冷凍とスイーツを掛け合わせたり、そうめんをエンターテインメントに変えたり。全く異なる要素を組み合わせる発想や、既存の商品をアップデートする工夫が随所に見られました。
暑さは確かに厳しくなっています。それでも人は、その環境に合わせて知恵を絞り、新しい楽しみ方を生み出していく。楽天市場のトレンド予測からは、猛暑という環境変化すら受け入れながら、自分たちなりの豊かさを見つけて生きていく、人間のたくましさが垣間見えた気がしました。
今日はこの辺で。