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成果を讃え、未来を語る──Rakuten SHOP OF THE YEAR 2025

2026年1月29日、グランドプリンスホテル新高輪。この日開催された「Rakuten SHOP OF THE YEAR 2025」授賞式は、一年間の成果を讃える場所として用意されていた。順位があって、拍手があって、トロフィーがある。毎年繰り返される、いつもと変わらぬ光景のはずだった。

 けれど今年、会場で立ち会って感じたのは、ここは成果を発表する場所ではなく、「これから何をやるのか」をそれぞれが言葉にする場所なのだ、ということだった。

順位は発表されるが、数字は残らない

順位は、もちろん発表される。だが不思議なことに、その数字そのものは、あまり頭に残らない。代わりに残るのは、壇上で語られた言葉の断片や、一瞬の間、声の揺れだった。誰も、数字の話だけをしていなかった。うまくいかなかった話、支えられた話、そして「ここからどうするか」という話をしていた。

会場全体が、過去の総括よりも、未来の宣言に傾いていた。

20年の積み重ねを、整理されない言葉で語る──Dark Angel(総合10位)

総合10位で登壇したDark Angelの言葉は、その象徴のように感じた。

「すいません、時間いただきます」

そう言って、話し始める。専業主婦として家庭に入りながらブランドを立ち上げたこと。20年続けてきたこと。楽天のスタッフと5時間にも及ぶ打ち合わせを重ねたこと。「⚪︎⚪︎さん、感謝します」「アキさん、小林さん、この1年間」──具体的な人の名を挙げながら、「感謝します」と何度も繰り返す。

言葉は正直、整理されてはいない。途中で詰まり、思いが先に出てくる。それでも、聞いていて目が離せなかった。

途中、「私たちのスタッフ、ごめんなさい、帰らせてしまいました」と笑いながら語る。実はスタッフの部長もいる予定だったが、帰ってもらったという。「毎日のように、長男と喧嘩しながら、毎日ミーティングをしてきた」。家族経営の現場の生々しさが、そのまま言葉になっている。

成功談というより、ここまで一緒に歩いてきた人たちの顔を、順番に思い出しているように見えた。「これからも、もっとお客様の満足が上がるようなループを作っていきたい」。この言葉も、売上の話ではない。どうすれば満足が続いていくのか、という話だった。

そして最後、「本当は、その1位を狙いたいです。ぜひ、これからも1番になりたいんで、みんな応援してください」。宣言であり、決意であり、少しだけ照れたような言い方だった。それは欲ではなく、前を向くための言葉だった気がする。

値上げの中でリピートしてくれた顧客への信頼──澤井珈琲Beans&Leaf(総合9位)

 澤井珈琲Beans&Leaf(総合9位)のスピーチは、芯がはっきりしていた。

2025年、コーヒーは原価高騰の影響を受け、前年に比べて200%、300%という大幅な値上げせざるを得なかった。それなのに、リピートしてくれ、ベストレビューとして評価を書いてくれる顧客がいる。

この言葉は、感謝であると同時に、一層の覚悟の表明に近かった。逆境の中で選ばれ続けたという事実が、むしろ責任を生んでいる。そんな緊張感が、短い言葉に込められていた。値上げという最も顧客が離れやすい局面で、それでも選ばれた。その重みを、この人は言葉少なに受け止めている。

諦めそうになった瞬間と、諦めさせてくれなかった人たち──LIFEDRINKオンラインストア(総合6位)

LIFEDRINKオンラインストア(総合6位)の言葉は、本音だった。「昨年は、諦めそうになった瞬間もあった」

でも、楽天のいろんな社員が次々に声をかけてくれたこと、諦めることを許されなかったことを語る。

「本当にありがとうございました」

ECCの具体的な名前を挙げて感謝する。厳しさと支えが同時にあったから、今、この場所に立っている。6年連続という結果は、努力の証でもあるけれど、それ以上に、続けることを選び続けた結果なんだろうと思った。このスピーチには、成功よりも継続の方が難しいという現実が、静かに滲んでいた。

「来年も皆さんと一緒に成長できたらと思ってます」。この言葉に、ようやく立ち直った組織の、静かな安堵と希望が宿っていた。

北陸から、トップラインと利益の両立を問い続ける──リカーBOSS 楽天市場店(総合5位)

リカーBOSS 楽天市場店(総合5位)の言葉からは、北陸という地域を引き合いに出して、現場の意義が唱えられた。

「弊社社員のみんな、そしてパートスタッフの皆さん、シレンダ様、そして応援してくださるメーカー様」──具体的な関係者への感謝から始まるスピーチ。

そして、昨年10月のエピソードが語られる。ストーリーの基準に満たしていなくて、担当者と、なんとかやれることを強くしようと、もう一度巻き直して数字を達成した。「すごく印象に残ってます」。この一言に、苦しい記憶と、それを乗り越えた記憶の両方が滲んでいた。

トップラインと利益、どちらも追う難しさ。地方の事業者として、効率だけでは測れない戦いがある。

「進んできた道が、間違っていなかったと思える」

この一言に、これまで積み上げてきた日々が、静かに詰まっていた。正解がわからない中で、それでも前に進んできた時間の重さが、そこにはあった。そして最後、「たくさん今まで苦しい時期もありましたし、大変な時期もあった」と正直に吐露してから、関係者とともに成長していきたい、と結んだ。

工場ではなく、テーマパークを作る──越前かに職人甲羅組(総合4位)

そして、途中、この日の空気を一段変えたのが、総合4位、越前かに職人甲羅組のスピーチだった。

代表の田辺さんは、もともと物静かな人だ。全国のお客様への感謝。漁業者、仕入れ先、地域、現場の従業員への言葉。その流れで語られたのが、福井県敦賀市で建設中の新しい工場の話だった。

「実は今日、この場に本当に立ちたいという夢がありました」

そう言って、本社がある敦賀市に建設中の新たな工場、「かに港南部」という名前のプロジェクトを語り始める。この授賞式という最高の場で、自分たちの新たな挑戦を報告したい。そういう思いで、この1年頑張ってきた。

「この工場は、通常のかにの工場ではありません。日本初、唯一のかにのテーマパークです」無料でできる工場見学。かにの博物館。そしてかにを使ったお料理体験。大人から子供まで、家族みんなで楽しめるかにのテーマパークを目指している。

なぜこの施設を作るのか。目的は3つある。

まず1つ目は、ものづくりの過程を通じてかにの魅力をもっと伝えたい。品質に対して、言葉では伝わらないものを、現場で本当に体験して、見て、感じ取ってもらいたい。

そして2つ目が、地域に根差す企業として、地元の皆様、そして地域の学校の子供たちの学びの場として提供したい。

そして3つ目が、新たな観光資源として、ふるさと納税の活性化、そして地域の経済を動かしていきたい。

「北陸新幹線が一度や転進しました。この時代、新たな時代に止められていた。今、追い風に乗って、もっともっとお客さんを喜ばせたい」

今まで築いてきたオンラインでの販売、そして実店舗での販売。ネットとリアルを融合させた新たな体験として、敦賀という小さな港町から、日本中、そして世界中へ、かにという食材の新たな楽しみ方を発信していきたい。どれも、勢いで語られている感じはない。時間をかけて考えてきたことを、ようやくこの場で話している。つまり、決意表明なのである。

「今日、この素晴らしい賞を受賞させていただきました。でも、これはゴールではありません。私たちにとって、ここからがスタートです」

この一言が、この授賞式の性格を、そのまま言い表している気がした。受賞は通過点でしかなく、本当に伝えたいのは「次に何をするか」だった。

「いつの日か、かにといえばすぐは甲羅。そう言っていただける日を必ず実現させます」

静かだが、揺るがない宣言だった。

止まらない組織を目指す──サンドラッグe-shop(総合3位)

サンドラッグe-shop(総合3位)は、合併という大きな変化の途中にある組織の話をした。

スタッフ皆さんの仕事、頑張りへの感謝から始まり、自身の経験が語られる。健康に関すること、お客様へのリピート対応。ECという業態では声が届きにくい。でも、おそらくどこの店舗も半分ぐらいは、そういった不満に関することが来ているんじゃないか。

そこにきちんと向き合っているスタッフ、コールセンターのスタッフがいるからこそ、こういったものが繋がっている。

そして本音が語られる。「うちの事情で話をすると、うちは私の会社なんですけど、去年合併したばかりで」──長年ECを担ってきたチームと、違う業種、違う会社から来た自分たち。価値観が違う。どちらかがどうということではないが、そこでせめぎ合いがあった。受け入れられないものもあった。

「そういったことを乗り越えて、ようやく今チームになろうとしてる。まだ途中です」

完成していないことを、ちゃんと認めた上で前を見る姿勢が、この場に合っていた。授賞式という晴れの舞台で、未完成を隠さない。その誠実さが、かえって信頼を生んでいた。

「でも、こういった形になる賞をもらえたことで、また来期に向けて、その本音を落としてる部分もありながらも、1つのチームになるという力になっていくと思う」

そして最後、スタッフに向けて語りかける。

「止まらない組織を目指していきます。だから、みんなも止まらない組織を目指して、僕と一緒に頑張ってくれましょう」

「おめでとう」と言われたが、「これはスタッフに対するおめでとう」だと返す。その姿勢が、組織をひとつにしていくのだろう。

ECは最強の接客業──アイリスオーヤマ(総合2位)

アイリスオーヤマ(総合2位)の言葉も、苦しい時期を経たからこそ出てきたものだった。それだけに、この総合2位という形で受賞できたことを大変嬉しく思う、と語る。ちょうど2020年、21年のコロナ禍の中で、衛生製品を含めて売り上げが絶好調になった。一方で、少しそのリバウンドもあって、着任してからどんどん数字が落ちていく。

「本当に私自身、不安の連続でした。やっぱりトップとして一番苦しいのは、メンバーを成果に導けないこと」

この時、ある人物の言葉をすごく肝に銘じた。「三木谷会長の『ECは最強の接客業』。私はこの言葉が本当に大好きです」ビジネスがうまくいかない時、やっぱり原点に帰って、接客業というところを見つめ直す。そして自分自身の言葉で、社員に言った言葉がある。

「私たちは自分ではない誰かのために仕事をしよう」

この言葉を軸に、社員と一緒に立て直してきた時間が、そのまま言葉の重さになっていた。数字ではなく、人に向き合うことを選んだ組織の、静かな強さがあった。

「本当に3年間苦労をさせてしまいました。社員の皆さん、この場所でスピーチができるような形にみんな頑張ってくれて本当にありがとう」

感謝を述べてから、最後、こう締めくくる。

「来年こそ第1位を目指して、今年、1人でも多くのお客様のために全力で頑張ってまいります」

物を売るとはどういうことか──上新電機(総合グランプリ)

総合グランプリを受賞した上新電機

「本日は素晴らしいこのような大賞を受賞させていただき、本当にありがとうございます。本当に今、感動しております」

まず午前中のジャンル賞で既に登壇していたことに触れ、「その中で、総合グランプリまで受賞するのは夢にも思っておりませんでした」と正直に語る。感動が、言葉に滲んでいた。

そして、他の受賞者の言葉に触れながら、こう続ける。

「皆さん、会社も同じような環境の影響を受けられると思うんですけれども、まさに向かい風です、こういう環境でございます」

厳しい環境認識を共有した上で、今日登壇した甲羅組の話を聞いて、共通したワードがあったと語る。

「物を手渡していく、価値を提供する、それを感謝──これに集約されてたんじゃないかなという風に思います」

競争の場でありながら、互いの言葉を受け取り、自分たちの姿勢を引き締める。この授賞式が、単なる勝ち負けの場ではないことが、よく分かる瞬間だった。

「物を売り、お客様にどういう価値を提供するのか。そういうことを考えるというのはなかなか答えが出ないと思いますけれども、すでに答えを探して模索をしながら、1歩1歩でも必ず前進しながら、楽天市場の一員として貢献しながら我々の事業を展開していきたい」

グランプリを獲った者が、他者の言葉に学び、答えのない問いを共有する。その謙虚さが、逆に、この賞の重さを際立たせていた。

「来年以降も毎年ここまでかけるよう、しっかり頑張っていきたいと思います」

不確実な時代に、変わらないもの──三木谷浩史 会長の挨拶

最後に、三木谷浩史 会長の挨拶があった。

「総合グランプリをはじめ各賞を受賞くださいました皆様、改めまして誠におめでとうございます」

2025年は、我々の問題だけではなく、世界で様々なことが起こり、また急激な為替の変動であったり、本当に色々な形で大きな大変な局面に直面されたショップさんもとても多いんではないかと思っている、と語る。世界的環境だけでなく、技術的な変化も、本当に急ピッチでどんどんと進んでいる。特にAIについて、これを皆さんぜひ使いこなしていただけるようにして、今後に活かしていきたいと思っている。

「詳しい内容は、明日の新春のプレスの中でまたお話をさせていただきたいと思っておりますが」──と、次の展開を予告しつつ、こう続ける。

「楽天一番は、そういう変化とか人とか、そういうものの流れの中での、やはり今日皆様のスピーチの中にもありましたけれども、あくまでも真摯にお客様と向き合って、最高のお客様サービスを皆さんと一緒にお客様に提供していく」

この姿勢を続けることによって、日本全国がもっと活性化するように、元気が出るように頑張っていきたい。

技術は変わる。市場も変わる。だが、商売の核にあるものは変わらない。その言葉が、この日壇上で語られてきた一つひとつのスピーチと、静かに響き合っていた。

積み上げてきた時間を言葉にし、これから先を宣言する場所

Rakuten SHOP OF THE YEAR 2025は、単なる表彰式ではなかった。それは、積み上げてきた時間を言葉にし、これから先を宣言する場所だった。順位は発表されるが、本当に残るのは数字ではなく、壇上で語られた言葉の重さ、間、揺れ、そして決意だった。

受賞者たちは、過去を振り返りながらも、未来を向いていた。そのことを、壇上で語られた一つひとつの言葉が、静かに示していた。

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