1. HOME
  2. event
  3. 催し
  4. バックキャスティングで描くAI活用の未来戦略──藤元健太郎(D4DR)講演レポート

バックキャスティングで描くAI活用の未来戦略──藤元健太郎(D4DR)講演レポート

「未来は待つものではない、作り出すものだ」この言葉を胸に、D4DR株式会社代表取締役藤元健太郎氏が壇上に立ちました。バックキャスティング──聞き慣れない言葉かもしれません。しかし、その思考法こそが、私たちを「AIで何をするか」から「AIと何を創るか」へと導く羅針盤なのです。

1. AI活用の進化は三幕構成で起きている

第一幕:部分最適──目先の効率を手に入れる

 生成AIで会議の議事録を自動化したり、チャットボットで問い合わせに応答したり。ここまでは多くの企業が経験するステップ。しかし藤元氏は警鐘を鳴らします。「ここで満足してはいけない」。

第二幕:全体最適──組織の設計図を描き直す

 AIの効率化を組織全体に拡げ、業務プロセスを根本から再設計するフェーズ。農業に例えれば、単一作業の自動化から、垂直農場のように空間も時間も含めた全面最適化へ──それが第二幕です。

第三幕:超越最適──未来を創る設計思想

ここが本丸。人間の“直感”や“創造”とAIを掛け合わせ、新たな価値を生み出すステージ。

 藤元氏は、工業化社会のパラダイムを越え、江戸時代のアナログプロセスをAIで再現する“湯立て農業”の例を引き合いに出しながら、未来を描いたのです。あえて非効率な営みを“超越最適”で実現する――それがこれからの鍵だ。

・アナログが主役となる

 これは面白い着想。つまり、アナログをベースにして非生産的なものを生産的に変えてきたのが、産業化だったわけです。ところが、結果、それが人間にとって大事なものを失う結果となった。わかりやすく言えば、工業化で自然が失われるなど。

 だから、逆に非生産的だとされた部分にAIを持ち込めば、それらがより戻される。農家での作業が重労働だとすれば、AIが搭載されたロボットがそれを行うと言う具合に、アナログの世界をベースにデジタルを進めていく価値を述べたわけです。 

2. バックキャスティング――未来から逆算して今を動かす

・「未来は偶然ではなく、意志でつくられる」

 藤元氏は、まず“ありたい未来”の具体像を会場と共有した。そのうえで、「そこに到達するために今、何を捨て、何を始めるか」を逆算的に考えるよう呼びかけます。

「未来を予測するのではなく、構想し、逆算し、実践する」

 これこそがバッグキャスティングだと言っている。このフレーズは、単なるビジネスフレームワークを超えて、教育、都市設計、社会インフラのあり方にまで広がる視座を示しました。これがAIとの向き合い方で大事なことだから。

3. 未来起点で問い直す、教育と組織の在り方

・問いは「何を学ぶか」ではなく「何を創りたいか」

 従来の教育は課題解決スキルの習得が中心だが、バックキャスティングでは、「自分のありたい未来」を起点に学びを設計します。

・巨人の肩に乗る新しい学び

 ここで藤元氏は面白い例えを出しました。

 「人類の叡智=巨人の肩に立つ」という比喩で示されたのは、“過去”の知識ではなく、“未来”の問いを起点にする学び方だ。結局、僕らの今の生活は過去の人が生み出した物の上に成り立っています。

 そこで求められるのは、アンラーニング──既成概念をいったん忘れ、未知への挑戦に向かう姿勢です。

4. AIと共に拓くビジネスの新地平

・部分効率化を越えた、組織設計の刷新

 ビジネスもまた、部分最適に甘んじるだけでなく、組織全体の最適化を目指すべき段階へ。AIを活用して垂直農業を実現するように、組織構造を垂直統合する思考が必要。

・「超越最適」は有機的価値創造の源泉

 AI×人間の共創によってしか生まれ得ない価値――それこそがこれからの市場を切り拓くエンジンとなるのです。未来から逆算した発想が、“当たり前”を大転換する。

・未来を待たず、今を動かせ

 藤元健太郎氏が示したのは、壮大なビジョンだけではない。自らの意志で “未来の一歩目” を踏み出すための具体的な思考法でした。

「未来を待つのではなく、自分たちで創り出す」──その覚悟さえあれば、AIは無限の可能性を解き放つ相棒になるでしょう。

 

Current NEWS

“情報”を追う | 催し

今後のイベントはございません。