時代を読む 特集
【特集】物流コスト増大と2024年問題に向き合うための視点
物流コストの上昇とともに、2024年問題が業界全体を揺るがしています。この問題は、単に配送の現場だけでなく、荷主や店舗、さらには消費者の意識にも深く関わっています。今回は、2024年問題に対する異なる立場からの4つのアプローチを通じて、多角的に課題の本質を探ります。それぞれの視点を理解することで、物流業界を超えた広がりを持つこの問題の解決の糸口が見えてくるでしょう。
1. ドライバーの未来を見据える-荷主の意識が問われる時
一つ目の視点は、荷主の役割に焦点を当てた小橋重信さんの主張です。ここでは、2024年問題が物流の現場だけで解決できない背景にある「荷主側の責任」について問いかけています。労働時間の制限が迫る中、今まで物流業者に依存してきた荷主が、自らの都合によって非効率な業務体制を強いていた事実が明らかになっています。
小売や製造業の荷主側が物流全体を見直し、効率化に取り組む意識改革が、ドライバーの未来と業界の持続可能性に直結するのです。この立場から見えるのは、物流業者への負担軽減には荷主側の積極的な対応が不可欠であるという視点です。
関連記事:2024年問題 の真実 ドライバーの未来を想い 今こそ荷主が考えるべき時
2. 店舗と物流の連携が顧客体験を変える-スクロール360の変革
次に、店舗と物流がどのように連携すべきかを考えるためのスクロール360の高山隆司さんのアプローチです。
スクロール360では、顧客体験を重視しながらも、労働時間の制限が引き起こす物流への影響を見据えてインフラと連携した新しい業務フローの導入を進めています。店舗が物流の現場を理解し、必要な対応を迅速に行うことで、最適なコスト管理や効率化が可能になります。
2024年問題に対して、「いかに顧客体験を損なわずに効率化を図るか」という店舗側の課題が浮き彫りになります。ここでは、物流の流れに沿った業務改善が、店舗としての競争力を高めるとともに、顧客の満足度向上にもつながるという視点が強調されています。
関連記事:顧客体験の向上に店が打ち込める理由 スクロール360の変容に時代背景と変わるべき店の実態を思う
3. 日本郵便と西濃運輸の共同配送がもたらす社会的意義
三つ目は、企業単独ではなく、複数の事業者が協力して問題解決に取り組むという視点です。
日本郵便と西濃運輸は、両社の強みを活かして共同配送の試験を重ね、オペレーションやルートの最適化を進めています。企業単体では解決できない物流コストの削減と環境負荷の低減を、他業者とも協力しながら進めることで、業界全体が利益を享受できる仕組みを築き上げようとしています。
ここでは、物流の効率化に対する社会全体の貢献と、長期的な持続可能性を目指した協業の重要性が描かれています。各社が協力することで、課題を一企業の問題として終わらせず、社会的なインフラとしての物流の在り方を再考する機会としています。
関連記事:日本郵便と西濃運輸の共同配送—必要性、課題と社会的メリット
4. 受け取り側から見直す物流の効率化—Nice Eze『スマロビ』が示す新しい解決策
最後に、消費者の立場から物流効率化を捉え直すNice Ezeの「スマロビ」を紹介します。
他の視点が荷主や物流会社の視点に寄るのに対し、スマロビは「受け取る側」の生活環境に注目し、効率化を図ろうとしています。集合住宅にAI宅配ボックスを導入し、受け取り環境をデータによって最適化することで、再配達の削減や配送の効率化を実現しています。
このアプローチは、従来の配送ルートや荷主側の構造的な問題を超え、受け取る側の習慣や環境の改善によって物流を支える新たな方法です。ここでは、受け取り側の環境整備がいかに物流の負担軽減につながるかが示され、消費者と物流の新たな関係性を提案しています。
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物流の未来を描くために必要な多様な視点
2024年問題は、物流業界の現場だけでなく、荷主、店舗、物流業者、そして消費者全体で向き合うべき課題です。それぞれが異なる視点から取り組むことで、問題の本質が見えてきます。荷主や店舗が責任を持って物流環境を整えること、業者間で協力して効率化を図ること、そして受け取る側の環境を整備すること――これらのアプローチが一体となって物流業界の未来を支えます。
各視点を通じて、事業者の皆様には、自社がどのように2024年問題に対応すべきかを考え、次の一歩を踏み出していただければ幸いです。