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楽天 がモバイルで価格破壊ができると強気な理由 2022/Q1(決算)発表

お客様によって緩急をつけて、それによって価格破壊を起こす。2022年度第一四半期決算説明会で、代表取締役会長兼社長の三木谷浩史さんの話を聞きながら、一番、感じたのはそれだった。

業績を見ながらモバイルの意図を考える

1.EC関連とフィンテックは概ね好調

実際に、その中身について触れる前に、今回の発表でのハイライトを見ると、こちらになる。

Q1/22の主要なKPIについて、グローバル流通総額は7.3兆円(前年同期比21.9%増)、国内EC流通総額は1.3兆円(2GAGR15.9%増)。

連結売上収益が4371億円(前年同期比11.7%増)で、楽天カードショッピング取扱高4.1兆円(前年同期比26.1%)と言った具合で、概ね、ECとフィンテック関連に関しては、好調を推移していると言っていいだろう。

2.決算短信ではモバイルでの赤字の大きさが目を引く

ただ、「決算短信」によれば、「モバイルセグメント」での売上収益が、マイナスとなっていて、これが会社全体で見れば、ここの割合がかなり大きいので、結果的には赤字となっている。

多くにとって気になるのはこの赤字の部分であるけど、ここは三木谷さん自身が自信を見せていて、それはモバイルに関連したビジネスの可能性であり、2030年には、今の上記の収益の中心となっている、EC、フィンテック並みに、利益を生み出すとしているのだ。

果たして、そこの部分が本当に事業として成長するのか。今回はモバイル自体の価格での差別化を例にとって、その成長について言及したい。冒頭、「緩急をつけて」と書かせてもらった通り、まさにここから、彼が意図する「モバイルの価格破壊」の本当の意味あいが、今回の決算あたりから、見えてきた気がするからだ。

国内ECの動きを例に考えてみる

1.「0円」から「980円(税抜)」へ

再三、携帯の通信料金の高さについては、この事業の立ち上げの当時から言われていたことで、実際に価格破壊をしてきた自負もあるだろう。ただ、それで言うとフェーズが変わったと言えるのかもしれない。

この日、まさに午前中に発表した通りだが、これまで1Gバイトまでは無料としていたのを最低980円(税抜)とするとしており、ここに関してこれからの考え方を示している部分があると思っていて、それが先ほどの価格破壊の意味合いにも直結する。

2.国内ECの伸びと営業収益の中身

そこを考える上で、少し話が逸れるように思えるが会社を理解する上で大事な数値が「国内EC」のハイライトで、それをここで触れてみたい。Q1/22に関して、流通総額は1.3兆円(前年同期比10%増)で、売上収益も1825億円(前年同期比11.9%増)、Non-GAAP営業利益も215億円(前年同期比77.3%増)。

この背景に何があるかというと、これはいつも話されることではあるけど、楽天IDを使うことでポイントなどの特典ゆえに、他のサービスも優先的に使われることになって、楽天西友ネットスーパー(楽天市場と併用で前年同期比48.6%増)や楽天ファッション(楽天市場と併用で前年同期比14.2%増)などで、順調な成長を見せる形となっているわけだ。

3.物流もプラスの価値を関連企業に提示し、リスクを軽減

収益の構造としても、国内ECの営業利益の詳細については下記の通りで、楽天市場、楽天トラベル、楽天GORAなど堅調であり、それはその経済圏の利用によるもので、特に、ビジネス上、上手いなと思うのは、「JP楽天ロジスティクスに物流事業を承継」という部分である。

これまで、モバイルと同様に、コストがかかっていた「物流」。しかし、この部分も、日本郵便と一体となってそのメリットを分け合う一方で、そこにおける投資の赤字部分も、お互い持ち合い、彼ら自身の負担を軽減させていることである。

こういう動きが最たるところであって、「EC」という文脈で例えるなら、「経済圏」という考え方を持ち込んで、それが収益を作り出す構造を独自に構築しているから、この発想をモバイルに取り入れるというわけである。

モバイルでの価格破壊の意味合い

1.会員サービスの中でこそ価格破壊ができる

つまり、三木谷さんのいうモバイルにおける価格破壊は「会員サービスの中で実現させる」ということにある。

確かに、これまでは全方位的に「0円」などの価格訴求をしてきたけど、当然ながら、それはお試し期間としての意味合いも強い。楽天モバイルの通信環境や関連サービスとの親和性を実感してもらい、使うかどうかの判断をしてもらうものであったわけで、その全方位を「ずっとやっていく」わけではない。

2.緩急をつけてメリットを享受

緩急つけて、一旦、環境が整ってきたこのタイミングで980円(税抜)に引き上げ、そしてそれと合わせて下記のようなサービスとの連携をアピール。その上で「楽天経済圏」のフル活用を促すことで、他のモバイルよりも「お得さ」を実感させたいという意味合いである。

それは、これから今まで以上に、デジタルに触れる機会があるから、それに見合うだけの経済圏であることも彼の自信の材料であると思う。

連携するサービス自体は、僕がみた限り、正直、楽天マガジン、musicなどはそこまで大きな目新しさは感じられなかったけれど、何よりその強みは、長らく強化してきた「楽天市場」などを筆頭とするECとその利用シーンで使われる「楽天カード」などのフィンテック事業にあると思う。

3.安さは会社の身を削っての「安売り」ではない

これらを「合わせて」使うことで、彼らに利する部分が生まれ、それで初めてモバイル事業において「安さ」を実現させるわけである。彼らのいう価格破壊は、楽天経済圏の中で活用してもらう中で、実感が得られるものである。だから、価格破壊と言っても、身を削って単なる「安売り」をしようとするわけないということを表明したということだ。

「ぶっちゃけ、ずっと0円じゃ困る」

三木谷さんは、この席上で、こう話したけど、その本質はそこにあるのだと思う。繰り返すが、単なる安売りをしたいわけではなく、新しいビジネスを他の通信事業者にはない形で持ち込むことで、今までない価格訴求をして見せると。それができるから、この事業に自分達が参入する意味があると。

4.これが利益部分の提示にも繋がる

考えてみれば、事業である以上、利益を作るのは当然で、無料で得られるサービスばかりでは会社など経営できるはずはない。ただ、他の通信事業者がこれまでやってきたことと明らかに違う点として、モバイル単体で収益を考えるのではないことだと。

通信事業者も常に設備投資に追われている部分もあるから、あその価格設定を通信事業単体で考えれば、妥当だと考えられなくもない。楽天は経済圏を絡めてその付加価値をモバイルに投下することで、他とは違う安さを実現できる。緩急つけて、ということになって、この言葉の本質であると思う。

これをひっくるめて、2030年では会社全体での利益を20%にしたいという話につながってくるわけだ。

経済圏をテコにモバイルの安さを実現させるから、お客さまにおいてもそこでのお得さをフックに、その価値を実感する事となって、サービス利用の幅を広げてほしいというわけだ。会見では他のサービスと比較しての質問が少なくなかったが、三木谷さんは「他は他」と言い切って、寧ろ適切なマーケットサイズでそれぞれが戦えばいいとしているのが印象的だった。

これらの事業を単純にシェア争いの中の競争することには何ら興味はなく、新しいマーケットを取りにいくという部分にしか目が行っていないことを象徴する姿勢だったからだ。確かに未知数な部分もあるけど、だからこそ、他より先に他が入り得ない領域に入れるのかもしれない。

今日はこの辺で。

 

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