1. HOME
  2. 特集
  3. 商品企画とは、“誰かの悩みを照らす冒険”だ──売り場とOEM、2つの現場から考える開発の本質

時代を読む 特集

商品企画とは、“誰かの悩みを照らす冒険”だ──売り場とOEM、2つの現場から考える開発の本質

 商品を作る──それは、“誰かに届ける”ための最初の問い。この特集では、楽天市場での売り方に精通するボトルシップ佐山陽介さんと、OEMの構築者・松崎淳さん、ふたりの対話から「商品企画とは何か?」を紐解いていく。佐山さんは語る。「商品なくして、ブランディングは成立しない」と。顧客のリアクションを受け止めながら、売り場という現場でブランドが“起きる”瞬間を観察してきた。一方、松崎さんは、商品が“まだ存在しない”段階からスタートする。

  悩みの深さに寄り添い、それが適切な価値と交換されるよう設計を練る。そして、その商品をどこで売るか──チャネルまで設計するのが仕事だ。つまり、両者の立場は異なれど、ネットを活用する現代の商品開発においては、どちらも「マーケットイン」の思想に立っている。お客様の声から逆算して設計し、実践する。その連なりこそが、商品企画の本質なのである。

第1章|「ブランドは仕掛けじゃない、“現象”である」──佐山陽介さんが語る、楽天市場の売れる商品設計

楽天市場の現場を熟知する佐山陽介さんは、こう語ります──

「商品とは、お客様との“接点”そのものであり、ブランディングとはその後に“起きる現象”である」と。

佐山さんは、出店者の実践を通じて「商品は売ってみて初めて見えてくるものだ」と繰り返し説いています。たとえば、ある企業が販売したポータブル冷房が当初は振るわなかったにも関わらず、「車中泊」という検索ワードとの組み合わせに切り替えた途端にヒットした──そんな事例も紹介されています。

このように、ユーザーのリアクションを“マーケットに身を置いた中”で掴むことで、商品の本当の立ち位置が見えてくる楽天市場というフィールドは、その反応が可視化されやすく、商品ページや広告、季節戦略といった要素を“現場で調整”することで、ブランドがじわじわと「起きてくる」場所でもあるのです。

重要なのは、“理想のブランド”を頭の中で作ることではありません。目の前にいるお客様の行動から、どんな接点を設け、どんな体験を届けられるか。ブランドとは、設計されたものではなく、そうした接点を通じて“発現する現象”なのだ──佐山さんの思想は、現場を持つ事業者ほど、深く刺さることでしょう。

👉 楽天市場に学ぶ、商品設計の本質とブランド現象論 ──佐山陽介氏インタビュー

第2章|「訴求軸がすべての起点になる」──松崎淳さんが語る、商品開発とOEMの思想

 一方、商品がまだ存在しない状態──つまりゼロベースから開発を始めるとき、最初に問うべきは何か?OEM開発の現場で多くの商品を手がけてきた松崎淳さんは、迷いなくこう答えます。

「誰の、どんな悩みに応えるのか。それが見えなければ、商品設計は始まらない」と。

「すべての人に美しさを」ではなく、「乾燥で粉を吹いて人前に出づらいあなたへ」。

 このような具体的で深い悩みこそが、高単価で選ばれる商品につながる鍵だと松崎さんは言います。彼が描くのは、“悩みの深さ×価格”のL字型マトリクス。その右上、「深くて高い」ゾーンに応える設計こそが、勝負の本質です。

 さらに、彼の視点は単なる商品設計に留まりません。楽天・Amazon・自社ECなど、売る場所(チャネル)によって設計自体が変わることを熟知しており、「どこで、誰に、どんな方法で届けるか」までを商品開発の一部と見なします。松崎さんの提案は、商品とは経営戦略の延長であり、共に考える思考設計であるというもの。

ブレストを通じて悩みを浮かび上がらせ、訴求軸を磨き、リアクションに応じて調整していく──そうやって練り上げられた商品こそが、社会に必要とされる“本質的な解”になるのです。

👉 商品を“売る”前にすべきこと ── OEMメーカーの視点からの商品開発の本質と思考設計

第3章|交差点にある“商品企画”──設計と実践の往復でしか見えない真理

「ブランディングは、起きる現象である」「悩みに応えることが、商品の出発点である」

一見、入口が異なるように見えるこの2つの言葉。だが実は、その間には商品開発という一本の道が通っている。松崎さんは、ゼロベースで悩みを見極め、どんなジャンルの商品にすれば解決できるかを設計する。佐山さんは、実際に商品を“売ってみて”顧客の反応からブランディングを立ち上げる。

共通しているのは、「自分の思い込みで作るのではなく、お客様のリアクションから最適解を見出す」マーケットインの視点であるということ。そしてネットの特性は、ここに大きく貢献する。リアクションが早く、広告と反応の関係性が可視化され、訴求軸の“当たり外れ”が素早く見える。

だからこそ、今の時代に求められる商品企画は、設計×実践の往復運動であり、2人の視点は、対ではなく“連動する歯車”なのだ。

 締め:商品開発とは、共に考え、共に驚くこと

商品は、一人のひらめきで作るものではない。顧客の悩みから逆算し、それを価値あるものとして社会に“置いて”みる。すると、思わぬ反応が返ってくる──そこからまた、企画が深まっていく。

佐山陽介さんと松崎淳さん、2人の思考はそのリズムを教えてくれる。商品開発とは、“共に考え、共に驚く”こと。その営みの先に、ブランドという“現象”が、そっと芽吹いていく。

特集一覧

時代が解り未来が見える