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もっと豊かで利便性の高い経済圏へ モバイル収益改善に見る本気 楽天G 2023年1-6月期 (決算)

思うにその受け止め方次第なのかもしれない。楽天グループは 2023年1-6月期の決算会見を行った。売上収益は9728億円(前年同期比+9.5%)で、営業損益は-1250億円。これを経営者の考え方に照らし合わせて、どう捉えるか。

モバイル浸透後の世界

1.ここまで投資をする理由に今の赤字の意味が見える

 

代表取締役会長 兼社長三木谷浩史さんが描くのはこのモバイルが浸透した後の世界である。そこに会社の未来を見ていて、モバイルに、スピード感を持って着手をしている。なぜモバイルなのかという部分が大事。彼曰く、それが社会的意義や楽天へのベネフィットということになる。

どうしてもそれを先行する携帯事業の三社との比較の中で、考えられがち。だが所詮、ここ数年でゼロからやり始めたことである。記者とのやりとりの中で、海外のように国からの援助が潤沢であるわけでも、国営企業から民間になったわけでも、ないと漏らす。自分達でこれだけの事業を数年単位でやっていくには、これだけの投資がかかって当然と。言いたい気持ちもわからなくもない。

だから、赤字でも良いというわけではなく、そこで投資する理由が大事なのだと思う。

それで、彼もそれに取り組んだ先の考えを見てほしいという。その先に見据えるものから逆算して、今の事業が存在して、それぞれの数字があり、投資があるというわけだ。

2.家計に与えるお金の使い道の変化

だから、むしろ、自身の考えに基づき、もっと広く携帯が浸透してこそ、ユーザーの豊かさがあることを強調。では、具体的にどういうことなのか。それは、携帯電話料金が、家族の家計に与える影響で説明し始めた。具体的にはこのスライドである。

4人家族の年間通信料金は、他であれば35万円強、必要とする。それに対して楽天であれば15万円弱で済む。それを推進する理由は、もっとモバイルを当たり前に使う世の中を思い描いているから。この安い金額に込められた意図を、携帯電話会社間での競争ではないと、暗にほのめかす。

3.浮いたお金で生活の質を向上

なるほど。そう思ったのは、そこで浮いた金額で他の楽天サービスが人々の生活を助けられるということ。楽天モバイルは、生命保険代理店のモバイル契約をサポートしている。つまり、モバイルを安く提案できる分を、生命保険にして、提案しているのだそうだ。モバイルを契機に、ライフスタイルの設計を見直すというわけである。

あくまでこれは一例である。けれど、可処分所得を増やすことが、結果、他のサービスにつながっていく。それが経済圏のさらなる活性化にもなる。詳しくは下記の表である。

そういう意義を唱えながらも、会社としてその大きな投資額は十分認識している。大きいからこそ、コストの見直しも重要としており、それに関しても説明を加える。

4.月次単位でモバイルコスト削減

コストを適正化すると、月次ベースで行われていて、それが下記の図の通り。

月単位で約150億円の削減をしていく。その中身は例えば、TVCM減少、モバイルショップの不採算店舗の撤退、ネットワーク構築に係る業務の見直しなど幅が広い。その月ベースでの達成が早まっており、2023年6月時点で129億円/月(86%)まで達成している。

それゆえに、モバイルは収益が改善しているというわけである。2023年1-6月期で営業利益は-789億円でマイナスであるものの、前年同期比で見ると+372億円。

楽天市場、トラベルが相互に利益をもたらす

1.クロスユースが浸透し各事業にプラス

楽天を形成するあらゆる事業がこのような状態であれば、それは深刻だろう。しかし、違うのである。三木谷さんの表情が明るいのは、それ以外の事業については思い描く通り、成長しているからである。

背景にあるのは、楽天経済圏の勢いだ。月間アクティブユーザー数の推移が4050万人(前年同期比 +8.2%)を記録している。それが増えるほど、クロスユースが増えて、2サービス以上の利用者は全利用者の76.7%(5年間でのCAGRで+2.3%)に及んでいる。

だから、楽天市場、楽天トラベルなどのコアビジネスの好調ぶりに繋がる。インターネットサービスセグメントでは、売上高が前年同期比+11.7%。NOn-GAPP営業利益でも前年同期比+4.3%になっている。

うまくできていると思う。外出が増えれば、トラベルが増加する。トラベルが増加すれば、ショッピングをするときに、その貯まったポイントで「楽天市場」を使う。コロナ禍を経て、ECが浸透した利点はこの辺にも現れ、デジタルという枠組みで親和性の高い両事業である。

2.国内ECは経済圏の恩恵と仕掛けで好調

その中でも、2023年1-6月期の国内ECをもう少し深掘りする。

下記の通り、流通総額が伸びて、売上高は前年同期比で+13.5%。Non-GAAP営業収益でも+2.0%。営業利益の部分から、モバイルからのSPU(スーパーポイントアッププログラム)コストを抜くと、+12.0%という状況である。

勿論、ポイント経済圏によるものも大きい。だが、この経済圏の仕組みを通して、顧客データの質が向上していることが大きいと僕は見ている。「広告事業が成長に寄与」という説明部分があったからだ。楽天IDに基づく属性が、サービス横断で適切なレコメンドへと導いているからではないか。

余談だが、こういう強みを持つことの大きさを思う。広告はEC単体での話ではないけど、横断的に捉えれば、ネットに強みを持つからこそ、広告収益の幅は大きくなっている。

2.各サービスの仕掛けが互いの回遊を最大化

話を戻して、これらを触発している要因である。楽天市場や楽天トラベルをここの中身を例にとると、外出自粛からの脱却と、セールの利用の増加。これらにより、経済圏が活性化されたことが大きい。こういう複合的な要素がそれぞれで起これば、ユーザーの回遊は増加していく。だから、それ自体が販売促進となるわけだ。

それは下の数字を見ればわかる通りだ。

国内での旅行機会が増えてトラベルの利用が増える。その一方で、市場でも大型セールなどの企画が的中。大型セールの年間流通総額に関しては+23.8%(4年間でのCAGR)という状況で、これらが機能しあって、最大化しているわけである。

改めて、経済圏によりお客様が特定でき、そしてその中で継続的な利用ができる環境を手に入れたことは大きい。だから、同じeコマース関連でもそのカラーが薄かった、ファッションジャンルでも流通総額では1.1兆円(最新12ヶ月)となった。ジャンルを問わず、小売全般で存在感を見せるようになって、その循環を加速させているわけだ。

経済圏は未だ成長を続ける

1.販促費を抑え経済圏をフックに金融はまだ伸びる

これらは特に親和性の高い、金融では顕著に力を発揮する。決済手段としてカード利用を促せるからだ。楽天カードが前年同期比+16.3%、発行枚数も前年同引+9.5%。当然、カードと密接な関係ある銀行の利用も後押しして、楽天銀行の預金残高は前年同期比+16.9%である。必然的に、その口座数も前年同期比+10.8%となっているわけだ。

もはや、インターネットビジネスと並んで、フィンテックでも存在感を発揮している。売上収益で前年同期比+13.3%、Non-GAAP営業利益では前年同期比+31.2%という高い利益率を出すに至っているわけだ。

2.モバイルの強さは定額で支払われること

注目すべきは、この経済圏という枠組みで、モバイルも大事な一因へと成長しつつある。それは日常のインフラだからだ。毎日、目にするもので、当然、毎月、通信料を払う。いわば、サブスクのような形で、安定基盤を作る。

そうやって継続顧客が生まれれば、毎月支払いが生まれる分だけ、ポイントがたまる。他のサービスを自然に優先的に継続的に選ぶ理由となるわけだ。

かくして、MNO契約前後の楽天市場の流通総額は、契約前と比較して、+53%というデータも出ているわけ。彼らが今、都心部で成長している規模感を全国に浸透させれば、1200万人の新規利用が生まれると意気込む。

それがまた、「楽天市場」などの利用を増やすわけである。結果、経済圏が楽天の出店店舗にとっても、販促要因となって、安定的な売り上げを作るベースになる。要となるのはポイントをきっかけにした、経済圏内の回遊。だけど、先ほど、予測した通り、おそらくこれからはデータをきっかけにしたその回遊で強みを発揮する。

3.モバイルへ投資する意味

回り回って、最初のモバイルの意味へと戻ってくる。多くの人のインフラだから、更に、そこを起点としたサービスが生まれ、継続する。かつ、それを進めていく度、データは蓄積されるだろう。すると、経済圏の中にいる利便性を実感していくことになって、他のサービス利用になる。

それはサブスクとは違った形で「経済圏の継続顧客」となって企業を支えていく。ここまで考えれば、今の経済圏の付加価値を高めるのはモバイル。彼らの投資の説明がつくのではないか。

とはいえ、まだ会社は赤字の状態。モバイルは今、第2フレーズで、注力するのはコスト削減の徹底、事業の安定化の実現。ただ、これも彼らの考え方を理解してもらえるユーザーを筆頭に、解約率も乱高下していたのが、他社並みの1.93%にまで落ち着いている。先ほどの改善の実態も明かして、その第2フェーズも落ち着くだろうと。そして、2024年は第3フレーズだと意気込む。それは、モバイルキャリアのトップを目指すことを意味する。

昨今、そういう思いは株価に反映されておらず、その分、日本郵便などの決算にも影響を及ぼしている。ただ、何も事業に将来性がないのではない。将来性があると知らしめられていない説明不足の要素もあるので、コミュニケーションを図りながら、理解を促していきたいと三木谷さん。だから、単純に赤字を続ける企業とは一味違った受け止め方が必要な気がしているのだ。

今日はこの辺で。

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