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【FM776 connect】 AI時代のCSが変える顧客体験

 FMドラマシティ「connect」は、エーデルワイスファームの野崎創氏とともに、時代の変化やビジネスの現場で感じたことを掘り下げる番組である。この日も、最近取材やイベントを通じて見えてきた変化について語り合った。

 今回のテーマは、AI時代のカスタマーサポートと顧客体験である。

 AIの進化によって業務効率化が進む一方で、人間が果たす役割はむしろ明確になりつつある。問い合わせ対応を自動化する企業が増える中で、顧客との関係づくりや体験設計に力を注ぐ企業も現れている。テクノロジーは人を減らすためのものなのか。それとも人の価値を高めるためのものなのか。

 番組内で交わした対話をもとに、その本質を整理してみたい。

[野崎] 77.6FM「FMドラマシティ」、「connect」をお送りしています。エーデルワイスファームの野崎創が、「ヒットの生まれ方と育て方を考える」メディア・145マガジンの石郷学編集長と、生放送でお届けしてまいります。

それでは早速、石郷さんをお呼びしましょう。石郷さん、おはようございます。

[石郷] おはようございます。

[野崎] 石郷さんをご存じない方もいらっしゃいますので、簡単にご紹介します。石郷さんはもともと、インターネット通販・EC業界向けウェブマガジン「ECのミカタ」の編集長を務めていらっしゃいました。その後独立され、現在は「ヒットの生まれ方と育て方を考える」メディア・石郷マガジンの編集長としてご活躍中です。

石郷さんとは、時代の流れやその時々のトピックについて毎度お話しいただいているんですが、私の4月・5月のスケジュールがびっしりで、今日は実に3ヶ月ぶりのご登場です。今日もいろんな楽しいお話が聞けると思いますので、どうぞよろしくお願いします。では石郷さん、早速1つ目のトピックへ参りましょう。


【第1部】AI時代のカスタマーサポート——CSは「問い合わせ対応の部署」ではない

[石郷] はい。最初のトピックは、「AI時代におけるカスタマーサポート」についてお話ししたいと思います。

先日、チャネルコーポレーションが主催するイベント「CHANNELCON 26」に行ってきたんです。チャネルコーポレーションはもともと韓国の会社で、韓国で2回開催した後、今回が日本初開催ということで注目していたイベントでした。

チャネルコーポレーションが提供している「チャネルトーク」というサービス、ECサイトを見ているとき右下にある吹き出し型の問い合わせウィンドウ、あれのひとつです。以前は顧客対応の質を上げることに注力していたイメージだったんですが、久しぶりに行ってみたら、完全にAI時代に対応したコンセプトに変わっていて、驚きました。

[野崎] へえ、どんなふうに変わっていたんですか?

[石郷] そこで一番感じたのが、「もうCSは問い合わせ対応の部署じゃないな」ということです。

これまでCSというと、返品・交換・クレーム対応といった、どちらかというと受け身のイメージがありましたよね。でも実は、CSほどお客様の本音に近い場所はないんです。

チャネルトークのようなサービスを通じて顧客対応のデータが蓄積されると、「何が大事で」「どう整理されているか」が見えてくる。その整理された情報をベースにAIが解決策を導き出し、AIが対応する。すると人間は、そこを起点に自分たちの価値を最大化できる、という話なんです。


■ 事例①:コアラ——花束とおむつケーキから始まった商品開発

[石郷] そのイベントで印象的だったのが、家具ブランド「コアラ」の禰宜田さんのお話でした。

CSの話をしているのに、問い合わせ対応の話がほとんど出てこないんです。代わりに出てきた言葉が、「花束」と「おむつケーキ」でした。

コアラのCSでは、顧客との会話の中に「結婚を機にマットレスを買い替えた」「赤ちゃんが生まれるので買い替えた」といった人生の節目が見えてくるそうなんです。そのタイミングで花束を贈ったり、おむつケーキを贈ったりしている。

しかも面白いのが、スタッフが「何か贈りたい」と思ったら、会社の許可を取らずその場で判断していいという社内文化にしているんです。

[野崎] それは会社として大きな信頼を現場に預けているということですね。

[石郷] そうなんです。するとどうなったか。CS側が自分たちで判断するようになって、オリジナルのギフトボックスまで企画し始めた。中身もホットアイマスク、ピローミスト、充電ケーブルまで充実してきた。

さらにその延長で、お客様の声から商品開発まで動き始めました。「収納しやすいものが欲しい」「持ち運びしやすいものが欲しい」「畳でも使いたい」という声を受けて、3つ折り構造・室内干し対応・畳でも使いやすい設計を取り入れた「コアラフトン OASIS」を開発したら、これがヒットしたというんです。


■ 事例②:スニーカーダンク——CSがプロダクトマネージャーになった

[石郷] もう一つ面白い事例が、スニーカーダンクです。最近話題になっていますよね。

[野崎] ああ、スニーカーの売買プラットフォームですね。

[石郷] そうです。CtoC、つまり個人から個人への販売なんですが、スニーカーには偽物問題があって、パッと見ただけでは本物かどうか判断できないものが普通に流通しているそうなんです。

そこでスニーカーダンクは、売り手から買い手へダイレクトにつなぐのではなく、一旦自社の物流拠点に商品を入れて、自分たちで検品・真贋鑑定を行ってから購入者に届ける仕組みにしています。

入ってくる商品も統一されていなければ、出ていく商品も統一されていない。その間にチェックが入る。これは顧客満足度を維持するうえで非常に複雑なオペレーションなんです。

それを整理して、共通化できる部分をAIに任せた。すると人間がやるべきことが明確になってくる。その結果、CSのスタッフが「ユーザーがどこで迷い、どこで不安を感じているか」を発見して、「預かり品の一覧が確認できるページ」を自分たちで提案・実装したというんです。

[野崎] 前半は受け身だったCSが、完全に攻めに転じているということですね。

[石郷] まさにそうです。AIが入ることで「何を効率化して、何を人間がやるべきか」が明確に分かれてきた。今まで処理に追われていたCSが、AIの介入によって別の価値を発揮し始めて、それが顧客満足度に直結し、会社の経営エンゲージメントを高めている。

これって、AIツールそのものがすごいという話じゃなくて、「会社として何を軸にするか」を整理したうえで、人間をどう最大化するかを考えることが極めて大事だ、という話なんだと思います。


■ 野崎からの補足:エーデルワイスファームの現場から

[野崎] 弊社の場合、まだチャネルトークほどのAI化はできていないんですが、CS担当者と話している中で感じることがあります。問題解決・課題解決を丁寧に棚卸ししていくと、「クレーム」という言葉でまとめていたものが、実は「改善点」として見えてくるんです。

最近で言えば、カスタマーハラスメント(カスハラ)がようやく社会的に認知されてきましたよね。それと合わせて起きているのが、「お客様の取捨選択」です。このお客様には、自分たちのサービスが合わないと明確に伝えられる時代になってきている。

[石郷] それはまさに今日の話の根幹ですね。

[野崎] 中小零細企業はずっと、大企業の商品・サービスを追いかけてきた。でも数でも価格でも絶対かなわない。それが今、「良いものは高くても売れる」という流れに少しずつ変わってきている。ただその一方で、経済格差が本格的に始まっているとも感じていて。だからこそ中小零細企業は、「どちらに自分たちの旗を立てるか」を今まさに問われている時代だと思います。

[石郷] シンプルに言えば、「何を省くか」の一点ですよね。できないことをできないと言えるかどうか。

[野崎] おっしゃる通りです。では1曲挟んで、2つ目のトピックへ参りましょう。


【第2部】人の温度が価値になる——LINEレストランプラスと國屋の哲学

[野崎] 改めてお送りしています。エーデルワイスファームの野崎創と、石郷マガジンの石郷学編集長による生放送「connect」です。石郷さん、2つ目のトピックへ参りましょう。

[石郷] はい。次は、LINEヤフーのイベント「Hello Friends with LINE」で聞いた話です。そこで飲食店グループ「國屋」の禰宜田さんのお話を直接伺う機会があって、非常に印象的でした。

背景として、飲食店のDX化が進んでいて、LINEヤフーが「LINEレストランプラス」というサービスを始めました。お店の指定場所でスマホをタッチすると、そのままLINE上でメニューが表示されてモバイルオーダーができる、というものです。

今まではQRコードを読み込んで別ページに飛ぶ形が多かったのが、LINE上でそのまま完結するので、誰でも使いやすい。正直最初は「よくある効率化の話かな」と思っていたんですが、禰宜田さんの話を聞いているうちに、まったく見え方が変わってきました。


■ 「水を頼んで、水が出てくるのは満足度ゼロ点」

[石郷] 禰宜田さんが言った言葉が面白くて。「水を頼んで、水が出てくるのは満足度ゼロ点です」と。

あって当たり前のことは、満足度を生まない。では人は何を覚えているのか。「前回来た時の話を覚えていてくれた」「おすすめを教えてくれた」「忙しそうなのに気にかけてくれた」——意外とそういうことの方を覚えているんですよね。

だから彼らは、LINEレストランプラスで注文のストレスをなくし、その分スタッフがお客様を見る時間を増やしたいと言うんです。

[野崎] 効率化ではなく、人に向き合う時間を作るためのツールとして使っているんですね。

[石郷] そうです。さらに面白いのが、モバイルオーダーの使い方の徹底ぶりで。「スタッフが自らモバイルオーダーを勧めないようにしている」というんです。お客様が店員を呼べない時だけ使えばいい。店員が手が空いているなら、普通に声をかけてもらえばいい。その住み分けを徹底した、と。

そして店員は店内を見渡して、困っているお客様に気づく。これが國屋の哲学の中心にある。


■ 100社以上の生産者と直接つながる——「誰が作ったか」を届ける意味

[石郷] なぜそこまで人の接点を大切にするかというと、國屋は100社以上の生産者と直接つながっているんです。効率は良くないかもしれないけれど、「誰が作ったのか」「どんな思いで作っているのか」という背景ごと届けたいから、店員という存在が極めて重要になってくる。

モバイルオーダーで注文という部分を効率化する一方、「この食材、実はこういう生産者が作っていて……」という会話が自然と生まれる。そのおすすめが、お客様との関係を深める。お客様は覚えられていることに感動する。だから忙しくても気にかけるようになる。この相乗効果が自然に生まれていくという話なんです。

[野崎] 素敵ですね。そしてその延長でLINEミニアプリにも連携していくと。

[石郷] そうです。お店を出たら終わりだった関係が、LINEミニアプリへの連携によって続いていく。季節のお知らせが届く、イベントの案内が届く。それがお客様との接点になっていく。

結果として客単価が倍になったというんですよ。

[野崎] これは当然の結果とも言えますね。


■ 前半・後半を通じた気づき:AIと人間の役割分担の本質

[野崎] 今回の前半と後半を整理してみると、実は真逆のようで同じことを言っていますよね。前半はAIがテーマに見えるけど、本当に言いたいのは「AIによって変わる人間の役割」。後半は人間が主役で、テクノロジーはその脇役。

近年ファストフード店でも水のセルフサービスが当たり前になっていますが、逆に「この水はどこどこの何々で汲んできたんです」なんて話をされたら、それだけで印象が全然違う。些細なことなんですが、それが独自性のあるサービスになって、ブランディングにつながっていく時代になっていくんじゃないかと思って聞いていました。

[石郷] 企業の考え方と、人との向き合い方って、不思議とリンクしているんですよね。企業理念があるからこそ、人との接点がコミュニケーションとして深くなる理由になっていく。

「このお魚にはこんな思いがあるんです」という言葉が、相手との関係を深める。それが人間の豊かさであって、そこに人間が打ち込むことが本格的に重要になってきた時代には、「水だけでいい」というお客様は必要ないわけです。

[野崎] 省くべきものを省いて、誰と向き合うかを決めて、そのお客様との体験価値を上げていく。デジタルの時代だからこそ、そういう方向に向かっていくんでしょうね。

単純に恋愛に例えると、「好きかも、好きかな」という状態を「めっちゃ好きやねん!」に変えていけるかどうか。そこだと思います。

[石郷] (笑)なるほど、深いですね。「好きかも」を「めっちゃ好きやねん」に——そこにたどり着ければ、面白いことになっていくと思います。


【エンディング】

[野崎] 気がついたらもう55分!あっという間にエンディングです。久しぶりにお話できて楽しかったです。

[石郷] こちらこそ、ありがとうございました。

[野崎] 77.6FM「FMドラマシティ」、「connect」をお聴きいただきました。またよろしくお願いします。


エッセンス:今回の学びのまとめ


① CSは「問い合わせ対応の部署」から「攻めの部署」へ
AIが定型的な問い合わせを処理するようになった結果、カスタマーサポートの人間は「お客様の本音を拾い、体験を設計する」役割に変わりつつある。コアラでは花束・おむつケーキの贈り物から商品開発(コアラフトン OASIS)へ、スニーカーダンクではCSがプロダクトマネージャーになった。CSがCX(顧客体験)を動かす時代が来ている。


② AIは「省力化」ではなく「人間の価値を最大化するための道具」
生産性が上がった分をスタッフ削減に使うのではなく、「空いたリソースを付加価値に充てる」という発想の転換が鍵。チャネルトークも、LINEレストランプラスも、ツールそのものではなく、**「その先で人間が何をするか」**が成果を決める。


③「水を出して当たり前」——満足度ゼロからの脱却
あって当たり前のサービスは満足度を生まない。人が覚えているのは、「気にかけてくれた瞬間」「名前や前回の話を覚えてくれていたこと」。便利な時代になるほど、人の温度こそが価値になる。


④ 中小零細企業の生き残り戦略——「追いつけ追い越せ」から「旗を立てる」へ
大企業に数でも価格でも勝てない時代は終わらない。だからこそ今問われているのは、**「自分たちはどちら側に旗を立てるか」**という選択。良いものが高くても売れる流れは始まっている。カスハラ対応を含め、お客様を選ぶ時代にもなってきた。


⑤「好きかも」を「めっちゃ好きやねん」に変えられるか
企業理念×顧客接点×テクノロジーの組み合わせが、お客様との関係を「取引」から「熱狂」に変える。100社以上の生産者と直接つながる國屋が客単価を倍にしたのは、まさにこの積み重ねの結果。デジタル化が進むほど、「誰が、どんな思いで作ったか」を伝える人間の存在意義が増す。

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