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30年目の真実は、いまも進行中──テレビアニメ『名探偵コナン』が刻んだ時間と、これからの物語

 1996年の放送開始から30年。テレビアニメ『名探偵コナン』は、世代を超えて愛され続ける存在となった。放送30周年を記念したセレモニーには、原作者の青山剛昌氏、江戸川コナン役の高山南、工藤新一・怪盗キッド役の山口勝平、そしてシリーズテーマを長年担当する倉木麻衣が集結。さらに「放送30周年記念 テレビアニメ名探偵コナン展」(東京会場:2月20日〜3月29日)開催、そして2026年4月10日(金)公開の劇場版第29弾へと続く節目の年でもある。

 30年という歳月は長い。しかし彼らの言葉から浮かび上がったのは、“変わらないもの”と“進化し続けるもの”が共存する、稀有な作品の姿だった。

「30年経った気がしない」──時間が止まった世界と、進み続けた現実

 30周年という数字を前に、原作者の青山剛昌は「もう30年も経つのかと感慨深い」と語った。

 一方で、江戸川コナン役の高山みなみは「30年という実感はあまりない」と微笑む。その理由は、コナンの物語世界にある。作中では、新一が小さくなってからまだ一年も経っていない。時間が極端にゆっくり流れる世界の中で、演じ手が“年月”を意識しすぎれば、キャラクターに影響が出てしまう。だからこそ「時間を意識しないようにしてきた」という。

 それでも現実では、膨大な事件が描かれ、数えきれないセリフが生まれた。高山が最も印象に残る言葉として挙げたのは、コナンが小さくなって初めて発したあの衝撃の一言だ。「ここから始まった」という感覚は、30年を経ても色褪せない原点である。

 山口勝平もまた、「30年と聞くと驚くが、あっという間だった」と振り返る。出番は決して多くないが、スタジオはいつも“ホーム”だったという。第1話と第2話の収録順が逆だったというエピソードも明かされ、30年目にして初めて語られる裏話が、作品の歴史の厚みを感じさせた。

時間が止まった物語世界と、確実に重なっていった制作陣の年月。その二重構造こそが、コナンという作品の不思議な持続力を支えてきたのかもしれない。

倉木麻衣と28曲──歌が寄り添い続けたコナンの心

 2000年の「Secret of my heart」から始まり、今回のエンディングテーマ「ともに風に乗る」まで、倉木麻衣はシリーズ28曲を担当。2017年には「同一アーティストによるアニメシリーズテーマソング最多数」としてギネス世界記録にも認定された。

 彼女は語る。「これは私一人のギネスではなく、コナンを愛するみんなとのギネス」。楽曲制作では常に“世界観を壊さないこと”を意識してきたという。登場人物の心情に寄り添い、物語の余韻をそっと包み込むような音楽。それが長年支持されてきた理由だ。

 特に思い出深いのは、デビュー間もない17歳の頃に歌った「Secret of my heart」。大好きだった作品のテーマを担当する奇跡に「運を使い切ったと思った」と振り返る。その曲は国内のみならずアジアにもファンを広げ、彼女自身の人生とも深く重なった。

 最新曲「ともに風に乗る」は、蘭と新一、そしてコナンの切なさに希望を重ねた楽曲だ。作曲にも携わり、「ストーリーの世界を壊さないよう、柔らかく包み込むイメージ」で制作したという。30周年を迎えた今だからこそ、過去を振り返るのではなく、未来へ風を送る一曲。その姿勢は、作品そのものと響き合っている。

声がつくことで生まれる立体感──原作者とアニメの幸福な循環

 青山剛昌は、アニメ化決定時の心境を「また儲かっちゃうかなと思いました」と冗談めかしながら語った。しかし実際には、連載と並行しながらアニメ制作にも深く関わり、映画では打ち合わせから脚本、絵コンテ、原画まで監修する徹底ぶりだ。

 「声がつくと実体感が出る」。漫画では平面だったキャラクターが、声優の演技によって立体化する。

 例えば円谷光彦は、当初は少し意地悪な表情で描いていたが、大谷育江の声の可愛らしさに影響され、次第に描写が変化したという。アニメから原作へと“逆輸入”されるこの循環は、30年続く作品ならではの成熟した関係性だ。

 声優陣も互いを意識し合う。山口は「少しでも高山さんっぽさが出たらいいな」と新一を演じていると語る。キッドとの演じ分けでは、視線の広さや熱量の違いを意識しているという。最初はキザなセリフが恥ずかしかったという告白も、30年の積み重ねがあるからこその余裕だ。

 原作、アニメ、映画、音楽。それぞれが独立しながらも、互いに影響を与え合う。この“幸福な循環”こそが、コナンというブランドを単なる長寿作品ではなく、進化し続けるコンテンツへと押し上げてきた。

30周年展、そして未来へ──変わらずに進化するという挑戦

 放送30周年を記念して開催される「テレビアニメ名探偵コナン展」は、30年の歩みを体感できる場だ。等身大キャラクターのフォトスポット、歴代テーマソングの展示、原画や絵コンテを収録したアートブック。青山自らが監修したパネルも並び、ファンにとっては時間を忘れる空間となっている。

 高山は「いい意味で変わらずにやっていきたい」と語る。チームワークを大切にし、これからも変わらぬ温度で作品を届けること。それが次の10年、20年を支える基盤になる。山口も「皆さんが満足できる作品づくりを」と誓う。

 そして青山は力強く宣言する。「まだまだ面白いことを考えていますし、謎もどんどん解けていきます」。2026年4月10日公開の劇場版第29弾も控える中、30周年は通過点に過ぎない。

“真実はいつも一つ”。その決め台詞は変わらない。しかし、その真実にたどり着くまでの道筋は、これからも新しく描き続けられる。

30年目のコナンは、過去を祝うと同時に、未来への推理を始めている。

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