第9回 楽天市場サービス向上委員会が示す新たな方向性-楽天市場サービス向上委員会の進化と未来
プラットフォームとしてその運営が一方的にならぬように、議論の場を設ける「楽天市場サービス向上委員会」。楽天市場は、その成長に、出店店舗との密接なコミュニケーションが欠かせないため、その中核を担うのが、この委員会になります。2021年に設立され、年に2回の開催を通じて、楽天と出店者の間で意見交換が行われています。
10年先を見据えた楽天市場
さて、2025年2月19日に開催された「第九回 楽天市場サービス向上委員会」では、何が議論されていたのか。また、過去を振り返りつつ、この委員会の活動をみていこうと思います。
徐々にその議論の幅が広がっている様な印象を受けます。物流、顧客コミュニケーション、エンターテインメントの各分科会が、これまでの成果と今後の展望について報告しました。これまでの委員会と比べ、新たに「未来を見据えた楽天市場の在り方」を議論する場が設けられたことは、今後の方向性を考える上で極めて重要な動きといえます。
物流分科会の進化:配送満足度の向上と業界全体への影響
過去の物流分科会では、主に「送料負担の公平性」や「配送スピードの改善」などが議論されてきました。しかし、今回の委員会では、それに加えて「配送品質向上制度」の導入効果が報告されました。
楽天側からの報告の機会が増えていること自体が前進かなと受け止めています。
「最強翌日配送」ラベルの導入により、送料や納期が明確化されたことで、ユーザーの満足度は大きく向上したと説明。さらに、ラベルを獲得した商品が、未獲得の商品よりも高い売上成長率を記録するというデータが示されました。
これは、配送サービスの改善が、単なるユーザー満足度向上にとどまらず、出店店舗の売上向上にも寄与することを示唆しています。
また、再配達率の改善により、業界全体の課題解決にも貢献していることが確認されました。次回以降の委員会では、単にスピードを上げるだけでなく、受け取り利便性を高める方向での議論が深まることが予想されます。
顧客コミュニケーション分科会の進化:AI活用とレビューの質向上
これまでの顧客コミュニケーション分科会では、主に「レビューの透明性」や「カスタマーサポートの改善」が議論されてきました。しかし、今回の委員会では、AIを活用した不正レビュー対策や、カスタマーケア機能の強化に関する議論が進展しました。
特に注目すべきは、「レビューの質と量の向上」という二段階のアプローチです。
第一期では、信頼できるレビューの収集に重点が置かれ、AIを活用した不正ユーザー対策が報告されました。第二期では、レビューの量を増やし、それを効果的に活用するための施策が議論されました。
これにより、今後の楽天市場では、レビューの信頼性が高まり、ユーザーにとってより価値のある情報が提供されることが期待されるといいます。また、AIを活用したカスタマーケア機能の強化によって、出店者とユーザーのコミュニケーションの円滑化が進むと説明しています。
エンターテインメント分科会の進化:購買体験の再定義
楽天市場といえば「Shopping is Entertainment !」。それをコンセプトに掲げるエンターテインメント分科会では、従来「ポイントキャンペーンの最適化」や「ライブコマースの可能性」について議論されてきました。
しかし、今回の委員会では、より本質的な「お買い物の楽しさ」の再定義に焦点が当てられたといいます。
具体的には、「発見」や「共感」を促すコンテンツの必要性が強調され、ショップコンテンツページやフィードを活用した新たな購買体験の創出が議論されました。従来の「安さ」や「便利さ」に依存するのではなく、ユーザーが「楽しみながら買い物できる環境」を提供することが、今後の楽天市場の成長戦略の一環となることが示唆されました。
このアプローチは、単なるECプラットフォームの枠を超え、楽天市場が「エンターテインメントプラットフォーム」としての役割を強める可能性を示しています。
第9回 楽天市場サービス向上委員会の意義と今後の展望
今回の委員会がこれまでと異なる点は、「10年後の楽天市場の在り方」を議論する場が設けられたことです。
従来の委員会では、目の前の課題解決が主な議論の対象でした。しかし、第九回では、分科会を超えて、楽天市場が10年後にどのような姿を目指すべきかについて意見交換が行われました。
この動きの背景には、EC市場全体の変化があります。競争の激化、消費者行動の変化、AIやデータ活用の進化など、楽天市場を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。その中で、楽天市場が「どのような未来像を描くのか」、そして「出店者とともにどのように成長していくのか」を考えることが求められています。
次回以降の委員会では、この「未来像」に基づいた具体的なアクションプランが策定されることが期待されます。出店者と楽天の協力がより一層求められる中で、どのような施策が実行されるのか、今後の展開が注目されます。
まとめ
また、店舗との距離を縮めて、深く必要なサービスの議論が述べられるのは望ましいことだと思われます。他のプラットフォームと比べてもみられない部分です。ただ、一点、気になるのは楽天がこういうことをしていきたいという意見を述べる一方で、店舗がどういうリアクションがなされたのかの記述が少し議事録を見る限りでは薄い気がします。
店舗がそこに何を感じたのか。また、過去の議論で、店舗が発言したことに楽天はどう対応したのか。そこだと思います。そして、大事なのは、我々メディアもそうだし、この議論をした店舗の口からそれぞれの繋がりのある店舗に対して、咀嚼されて、伝わることだと思います。
せっかくRakuten NATIONSなどのネットワークがあるのですから、ここに集まる成長意欲の強い店舗に対して、こういう議論がなされたことも併せて、伝えられたりすれば、よりそこに一体感が出るのではないかと思いました。「出店者とともに成長する場」として進化し、良質な価値を創出する核心として、続けていくことを切に祈ります。
今日はこの辺で。