1. HOME
  2. event
  3. team145-initiative
  4. 「ばけたん」に宿る個性――ソリッドアライアンス 河原邦博さんが語る“響く商品”の作り方/キャラ談48

「ばけたん」に宿る個性――ソリッドアライアンス 河原邦博さんが語る“響く商品”の作り方/キャラ談48

僕が司会を務めるXのスペース「キャラ談 vol.48」で話した内容が非常に有益だったので、ここにログを残しておきます。ものづくりにおいて大切なのは、単なる形や機能だけではなく、それを使う人の心に「響く」かどうか。ソリッドアライアンスCEOの河原邦博さんは、「ばけたん」をはじめとするユニークな商品を次々と世に送り出してきました。その背景には、一貫して「誰かに刺さるフック」を仕込み、それを効果検証で磨き上げるという信念があります。河原さんが語る“響く商品”の作り方、その秘訣に迫る内容です。

1: IT業界から商品開発へ――常識に挑む発想

河原さんはもともと、IT業界でメモリーカードの事業に携わっていました。独立後は、ユニークなUSBメモリーを数多く手掛け、たとえば「お寿司」や「アヒル」の形をしたUSBが話題を集めました。この挑戦には「USBメモリー×造形」という独自性を追求し、大手メーカーと競合しない市場を切り開く狙いがありました。

「ありふれたものに何か違う要素を組み合わせる。それが商品の魅力を倍増させるんです」と河原さんは語ります。こうして“常識”を疑う姿勢が、後の「ばけたん」や「フリッチーズ」といったヒット商品へと繋がるのです。

2: フックを仕込む――商品が人に刺さる条件

「ただユニークなだけでは足りないんです」と河原さんは続けます。商品には必ず「誰かの心に刺さるフック」を仕込む必要がある、と彼は信じています。

例えば「ばけたん」は単なるガジェットではなく、心霊現象に興味を持つ層に向けた「お化け探知機」として開発されました。河原さん自身の好奇心に加え、心霊番組が一定の視聴率を保つという市場データをもとに、「この分野には需要がある」と確信を得たのです。さらに、「USB機能付き」という汎用性を加えることで、バラエティショップや家電量販店でも扱える商品にしました。

一方、環境問題をテーマにした「フリッチーズ」は、地球温暖化をモチーフにしたストーリー性を持つ冷蔵庫内のおもちゃです。「動物が冷蔵庫に住み着く」というユーモラスな設定が子どもにも大人にも響き、商品として広がりを見せました。

例えば、冷蔵庫を開けるとしゃべり出します。みんなしゃべる内容が異なります。中には時間に合わせてしゃべったり、ワイルドな口調のものもいます。節電のために叱ってくれます。

賢い動物たちはとってもエコですので、冷蔵庫を開けっ放しにすると注意してくれます。「フックがあれば、ただのガジェットが“共感を生む物語”になる」と河原さんは言います。

「フックがあれば、ただの面白いガジェットが“共感を生む物語”になるんです」と河原さんは強調します。

3: 効果検証で精度を高める――試行錯誤の重要性

「ヒット商品は最初から狙って作れるものではありません」と河原さんは語ります。「10個作って当たるのは1個。だからこそ、試行錯誤と効果検証が不可欠なんです」。

たとえば「ばけたん」では、初期段階でどの市場にどう響くかを実験的に販売。その結果、ITガジェットとしてだけでなく、心霊系の趣味層やバラエティショップでも好調な反応が得られたため、販売戦略を拡大しました。これに対し、「フリッチーズ」ではNHKの番組が温暖化問題を取り上げた際の反響から、商品が社会性を持つことの重要性に気づき、啓発活動のツールとしての価値を高めました。

「SNSが普及した今では、売れる商品の条件が細分化されています。どの属性にどう刺さるかを探り、それを次の商品開発に生かす。これが精度を高める秘訣です」と河原さんは語ります。

4: 商品の個性を磨く――受け入れる意見、排除する意見

効果検証と並行して、河原さんが重視しているのが「選択と集中」です。「すべての意見を取り入れると商品が薄っぺらくなります。だからこそ、強烈な個性を持ちながらも、改良すべき点は見極めて修正するんです」。

具体例として、商品レビューは確認しつつも、「売れる本質を変える意見は取り入れない」ことをルールとしています。「商品作りには強いエゴが必要です。その中で不具合や改善点だけを冷静に拾い上げるんです」と語る姿勢は、職人的なこだわりを感じさせます。

5: 海外展開とオカルト――文化のパッケージ化

河原さんは「ばけたん」を通じて、日本の「オカルト文化」を海外に広める試みにも挑戦しています。「海外ではオカルトが一つのジャンルとしてパッケージ化されていることは少ない」と指摘する河原さんは、日本ならではのまとまりを持たせた商品で、文化ごと輸出する構想を描いています。

たとえば、「幽霊」だけでなく、「UFO」「超能力」といった多様な要素を組み込むことで、独自の世界観を形成。さらに、クリエイターが自由にコンテンツを追加できるプラットフォームとして成長させることを目指しています。

6: 河原邦博が描く未来――自分を極める商品づくり

河原さんは「自分が信じるものを追求することが、商品に個性を宿す最大の鍵」だと語ります。その一方で、クリエイターにとって自分の作品を広げる力は限られており、プロデューサーやサポーターの役割がますます重要になると指摘します。

「自分が作りたい商品を、ただ作るだけではダメなんです。その商品をどう伝え、広げていくかまで考えるのが本質的なクリエイティブだと思います」と語る河原さん。自らの個性を信じつつ、それを商品として具現化し、さらに磨き上げる姿勢は、未来のクリエイターに多くの示唆を与えるでしょう。

フックと精度

非常に面白かったのは、好きなことは誰しもある。つまり、誰でもそのキュレーターになれる素質はあるということ。ただ、そこでキュレーションできるかどうかは、ちゃんと伝える言葉や伝える手段を工夫する必要があって、それは耳を傾ける人があってのことなんだということ。だから、ものづくりにおける「フック」と「精度」。それが大事だと思いました。河原さんが語るそれらの本質は、クリエイターのみならず、すべてのビジネスパーソンに通じるメッセージです。商品は単なるモノではなく、個性と物語を伝えるメディアです。挑戦を恐れず、その中で響く商品を追求する姿勢こそが、未来を切り開く鍵となるでしょう。

今日はこの辺で。

Headline

| team145-initiative

今後のイベントはございません。