「ケイコ 目を澄ませて」三宅唱監督
「 ケイコ 目を澄ませて」という映画を見ました。
これ、深いのは「澄ませて」という言葉は本来、「耳に」使うものなんです。そうしていないのは主人公のケイコは耳が聞こえないから。
「目はイイんです」と。ケイコはボクシングをやっていて、その事務所の会長がそう言います。ただ、そこから見える世界は、聞こえない分だけ、研ぎ澄まされていて、全てが深く感じられるものです。
作品自体は派手でもなく、ドラマチックな演出があるわけでもなく、賛否は分かれるだろうなと。でも、淡々と日々が過ぎていくだけの映像なのに、終わった後に余韻がじんわり残る感じがしました。岸井ゆきのさんという演者の魅力もあると思います。喋ることなく伝えることがどれだけ難しいかを思えば、何か心に残るというのは演技の力でしょう。
いかなる人もその現実を受け入れなければ、生きていけません。その中で何をやりがいに思うかは本人次第。決断して前に進むとして、どう考えても自分にとって不利なボクシングを選んだ彼女のまっすぐな生き方は、心に刺さります。
終わった後も、あのシーンの意味はどんな意図なのだろうと考え、余韻に浸る僕でした。