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楽天 “送料無料ライン”開始 振り返りとこれから

 楽天 は「楽天市場」で「共通の“送料無料ライン”」を2020年3月18日、正式に導入する事を明らかにした。3,980円(税込)以上の買い物で、原則送料が無料となるというものである。ここに至るまではさまざまな議論が為され、これもまたネット通販における大事な転換期と捉え、一連の動きを整理してみたので、それを元にこの事実を受け止めてもらえたら、幸いだ。

楽天 送料無料ライン いよいよ開始

1.三木谷さんが言及して以来様々な動きが続いた

昨年の新春カンファレンスで、三木谷浩史会長兼社長がこのことを言及して以来、楽天はずっと準備を進めてきていた。

三木谷さんは「一見すると、商品単価を安く見せておきながらも、実は送料分の金額を足すと、他よりも圧倒的に金額が高くなる」などの事例があると指摘。「送料分で儲ける」店舗の姿勢に疑問を投げかけ、その信用とともに、お客様の利便性も向上させると話している。

その代わり、楽天ができることとして、送料に関わる問題として、送料分のコストは自ら物流を手掛け、Rakuten Super ExpressやRakuten Super Logisticsなどで自ら2000億円投資することで、店に極力、寄り添うことを強調していた。

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 一部、この施策に異議を唱えるべく、楽天ユニオンなどといった団体が生まれた。結果、それが公正取引委員会の調査が入ることへのきっかけを作ったように思われ、楽天市場にとって大事な局面であったことはよくわかる。

一方で、楽天市場で古くから共に切磋琢磨して伸びてきた店舗の方が立ち上がって、「楽天出店者友の会」の発足にもつながったのは記憶に新しい。

彼らは別に、楽天に味方するわけではなく、送料無料ラインに関して一定の理解を示し賛同しつつ、真の目的はこのような波乱が生まれることはプラスにならないと考え、楽天と対話を強化しようとする姿勢を鮮明にすることになる。こうした対立し合う関係性に異議を唱えた格好だ。

 

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 公正取引委員会からは「緊急停止命令」が出たことで、楽天も自らの見解を発表。自分たちの考えに理解を求めたわけである。

その後、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う現場での混乱を踏まえ、楽天は「送料無料ライン」に関して準備できている店舗に限り施行すると発表したのである。そういう動きを受けて、公正取引委員会はこの「緊急停止命令」を開始直前で取り下げることになって、一定の落ち着きを見せたのである。

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2.色々あったが「送料無料ライン」は実施に至る

そしてこの日に至る。この施策は「楽天市場」におけるお買い物における、送料をより分かりやすくすることを目的とした取り組みだと説明している。本施策の導入を記念して、楽天は「39ショップ(送料無料ライン対応のショップ)限定エントリー&3,980円(税込)以上購入でポイント5倍」キャンペーン(3月18日10:00〜3月21日9:59)を開催することを明らかにして、その店舗を後押しする姿勢を見せた。

倉庫・配送を楽天が頑張るので、送料の点で店に協力を要請

1.物流単体で見ることなく小売の受注を予測できるところに利点あり

実は楽天は楽天物流の名の下に施策をうち、失敗している実態もある。けれど、楽天が立ち上がる意味があるのはその理由からだ。楽天は売り場を持っているので、全体のある程度の売上を予測でき、配送の数も見当がつく。

つまり、この受注予測をもとにドライバーの手配をして、それに合わせて賃金に幅をもたせて、ドライバーの満足度を高めて、相対的にドライバー数を増やすことが可能だからだ。

ドライバーにかかる費用も事前に販売数が増えることが分かれば、そこにかかるコストを上昇させても、そこに投資をする必要があることがわかるわけだし、配送だけではない所に視点がある。その意味においては、楽天のようなプラットフォーマーが物流をやらざるを得ないと言っていいかもしれない。

2.送料無料ラインについて、三木谷さんは物流事業の投資とセットで考えている

確かに、店側に送料無料のラインを強いるあたり、強引だと思われる節もなくはないが、俯瞰的に様々な立場を考慮すると、一社単位で考えるフェーズではない時代が到来している。それぞれが横で連携しながら生きながらえないといけない時代の中で、今は各々が、自分の持ち場では何をしなければならないのかを、考える時期に、きていると思うのだ。

楽天はこれまでも三木谷さんのリーダーシップにより良くも悪しくも前進してきた過去がある。その意味で、楽天出店者友の会はまさにそれを見てきたからこそ、この施策にも一定の理解を示し、その成り行きを見据えようというわけであって、これは一理あると思う。

ただ、その一方で楽天はかつてネット通販事業のみだった時からすれば、大きな企業体になって店舗との距離感が生まれたというのは否定できないことであって、逆に、これを契機に店と楽天市場とが歩み寄って建設的な議論をすることを望みたい。

今回の送料無料は一つの流れに過ぎない。今後も色々と変化をしていく中で、ちゃんと店舗と楽天、足並みを揃えていかない限りは本当の意味で、ネット通販の発展にはならない。これがいつか来るネット通販にとって意味のある出来事になっていることを期待したい。

今日はこの辺で。