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楽天・KKRによる西友株式取得の背景と展望

1. はじめに

2020年末、楽天株式会社と米投資ファンド大手のKKR & Co. Inc.(以下、KKR)が、ウォルマート・インク(以下、ウォルマート)の保有していた合同会社西友(以下、西友)の株式を取得することが発表されました。楽天は新会社を通じて西友株式の20%を取得し、KKRは過半数を取得。ウォルマートも引き続き15%を保有することで、西友は“楽天・KKR・ウォルマート”という三者が連携してDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める体制となりました。

本稿では、その背景や戦略、国内外の小売を取り巻くDXの動向について整理します。

2. 楽天とKKRの狙い:対Amazonを視野に入れたDX推進

今回の株式取得の大きなポイントは「西友のリアル店舗とネットの融合による小売DXの加速」、そして「Amazonへの対抗軸づくり」です。

1. リアルとネットの融合

  • • スーパーをはじめとする小売業の現場では、実店舗とオンライン事業をシームレスにつなぐ必要が高まっている。
  • • コロナ禍でネットスーパーやECの需要が一気に拡大し、店舗運営とオンライン販売の両立を上手に行う企業が強みを増している。

2. 対Amazonを視野に入れた協力体制

  • • Walmartは世界最大の小売企業の一角として、米国を中心にAmazonと熾烈な争いを続けている。
  • • 日本市場では依然としてAmazonの存在感が大きいものの、西友という実店舗を軸に楽天がネットで補完する構図ができれば、対Amazon戦略を強化することが可能になる。

3. KKRとは何者か:大企業子会社への投資で潜在力を引き出す

KKRはPE(プライベート・エクイティ)投資の世界的リーダーであり、大企業の子会社や事業部門への投資に強みを持っています。

  • 投資後の事業改革に長けている: 経営資源を注入し、潜在能力を引き出すノウハウが豊富。
  • • 今回の西友への投資では、楽天と協力することで、日本国内向けのDXを推し進める狙いがあるとみられます。

4. 楽天の新会社「楽天DXソリューション」とは

楽天は「リアルを含めた小売業のDX推進」を目的に、新会社「楽天DXソリューション株式会社」を2021年1月に設立しました。同社を通じて西友株式20%を取得し、さらに以下のようなサービスを提供していく計画です。

  • 実店舗のデジタル化支援: AI需要予測を活用した在庫管理や価格設定の最適化
  • OMO施策導入: オンラインとオフラインを統合したマーケティング支援
  • レジ無し決済などの新技術: スマホアプリ等を用いたスムーズな店舗体験

楽天のコマース責任者・武田和徳氏によれば、すでに「楽天西友ネットスーパー」で得たノウハウがあり、それを活かして実店舗でもDXを一気に加速させるのが狙いとのことです。

5. ウォルマートが日本市場で楽天に託す理由

ウォルマートはShopifyとの連携や自社オンラインプラットフォームを強化し、アメリカ国内ではAmazonとネット販売で競合しています。しかし、日本市場では思うようにシェアを伸ばせていない現状があります。

1. 地域性・ローカライズの重要性

  • • 国や地域によって消費者の嗜好や商習慣は大きく異なる。
  • • ウォルマートは日本の細やかな市場対応を自社で行うより、日本企業に任せるほうが得策と判断している。

2. 楽天との相互補完関係

  • • 楽天はECプラットフォームをはじめ、日本で独自の経営基盤を築いてきた。
  • • ウォルマートの米国オンラインプラットフォームに楽天が出店するなど、両社の提携実績はある。
  • • いずれもAmazonに対抗するという共通の目的があり、競合ではなく協調関係を築きやすい。

6. ローカライズとDXが小売の鍵

リアル店舗とネットの融合が進むほど、地域ならではのニーズへの細やかな対応(ローカライズ)が重要になってきます。

  • 地域に根ざした店舗運営: 品揃え・価格設定・サービスは地域性を考慮する必要がある。
  • 最大化できるテクノロジーの活用: AIやIoTなど先端技術を導入し、在庫管理や顧客分析を高度化。
  • OMO(Online Merges with Offline)志向: オンラインとオフラインを区別せず、トータルで顧客体験を向上。

7. 他社事例:ヤフー×東急不動産の連携

楽天だけでなく、他のIT企業や不動産デベロッパーも「ネットとリアルのシームレス化」を進めています。

  • ヤフー×東急不動産: ヤフー側が検索データなどを提供し、リアル商業施設に活かす。
  • PayPayモールの在庫連携: 実店舗の在庫とECの情報を一元化し、消費者がどちらで買うか瞬時に判断できる仕組みを整備。

このように、小売や商業施設におけるDXはますます進化しており、今後はさらに業種や企業の垣根を越えた連携が進むとみられます。

8. まとめ:リアル×ネット協業の再編が本格化

  • 西友の存在感: 日本を代表するスーパーマーケットチェーンの一つである西友が、楽天とKKRのタッグによって大きな転換期を迎えます。
  • ネット×リアルの推進: ローカライズを重視した店舗運営とネット通販との連携を強化し、地域密着型のDXを加速させる。
  • 海外も巻き込みつつ対Amazonを意識: ウォルマートは日本市場において楽天をパートナーとすることで、新たな可能性を模索する。
  • 業界再編の過渡期: 今後はスーパーマーケットだけでなく、物流・テクノロジー企業なども巻き込みながら、小売全体の再編がさらに進む見込みです。

楽天・KKR・ウォルマートがタッグを組む今回の取り組みは、リアルとネットが融合する小売の未来を象徴する動きと言えるでしょう。西友が先進的なDXリテーラーとして変貌を遂げれば、日本国内のスーパー業界やEC業界全体にも大きな影響を与える可能性があります。これからの展開に注目です。

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