経済圏で得た信用はモバイル利用者に繋げよ 楽天グループ2023年度通期及び第4四半期(決算)発表
先ほど、楽天グループは、2023年度通期及び第4四半期の決算発表を行った。全体を通して、いかに今後、モバイルを延ばせるか。その点に集約されるのではないかというのと、やっぱり、この企業においては、ECと金融がそのモバイル成長の鍵となる。それが、率直な印象だ。
楽天グループ自体の事業は拡大
決算の内容を見てみると、通期の連結売上収益は2兆円を突破。(2兆700億円でYOYで+7.8%)第4四半期では、YOYで+3.3%。連結Non-GAAP EBITDAでは、YOYで+745億円。
第4四半期(2023Q4)で、その内訳を見ると、下記の図の通り。
2023Q3で公表した収益目標に対しては目標達成。具体的には
- ・2022年第4四半期以降 連結EBITDA黒字拡大
- ・2023年第4四半期非金融事業EBITDA黒字達成
- ・2023年12月連結Non-GAAP営業利益単月黒字達成
投資局面を終えて経営の安定化
これらを背景に、楽天グループの2023Q4でのNon-GAAP営業利益ではYOYで-72.6億円。上記12月では連結Non-GAAP営業利益で単月黒字を達成していることからも、通期での黒字化を目指す。
2024年度に向けて、より盤石な体制を作るべく、これに加え、グループレベルのセルフファンディングを行っていく。事業売却などで資金を得るなどして、資金源を増やして、無駄を排除して、循環させていく構えだ。
また、楽天モバイルの月次Non-GAAP EBITDAに関して年内に、黒字化を達成させると説明。あわせて、業務の改善も行う。その効率はどこから測られるのかという部分で、AIなどの活用をあげている。それにより、もたらされるメリットは、マーケティング効率、オペレーション効率、クライアント効率の3つの点で20%増。そのの改善が粗利を高める。
財務戦略は、これらの要素に基づき、盤石となることを強調。2024年においては、リファイナンスリスクは解消され、上記に示したセルファンディングが重要になり、そこでの成果が2025年以降に大きく寄与する。それは、フリーキャッシュフローが増大して、安定の道筋が示せるからだ。
経済圏の力でECと金融で成長続く
全体感としては以上。冒頭の話に通じるけど、楽天市場、楽天トラベルなどのインターネットセグメントと、楽天カード、楽天銀行のフィンテックが順調に伸びている。ここが彼らのコアビジネスで、全体を支えており、これに連動する形で、広告事業の売上収益が、年平均成長率を示す3年 CAGRが、16.9%となっている。
もう少し深掘りしてみよう。3年 CAGRについては、国内EC流通総額で+10.0%、楽天市場流通総額で+8.1%。楽天トラベルの国内宿泊流通総額は2019年対比で+42.5%となっている。旅行業界平均では、-9.5%であることから、経済圏の強みが最大限、活かされている。
それを通期でみると、インターネットセグメントは売上収益 YOY+9.8%。Non-GAAPで+18.9%。国内EC流通総額も+6.9%で前年比6.0兆円。
同じくフィンテックセグメントは、YOY+11.2%、Non-GAAP営業収益で+36.8%。これを裏づけるのは、カードの発行枚数が+7.1%、カードでのショッピング取扱高YOY+18.1%。ECにより金融の機会が増えるほど、証券などにも好材料が生まれ、楽天証券の総合口座数はYOY+18.1%。
モバイルの実態と見据える未来
つまり、楽天はECとカード利用の親和性の高さが企業価値を形成しているということ。課題として挙げられるモバイルの裾野はここを軸に伸ばしていくことになるだろう。
楽天モバイルの契約回線数は2023年12月時点で、609万回線。彼らとしては、2024年12月で800万から1000万回線を目標としている。ここがこの会社の肝となる。
なお、通期での売上収益はYOYで+3.9%で、Non-GAAP営業利益は、−3375億円で前年比で改善された額は1417億円。Non-GAAP EBITDAは-1791億円で、前年比で改善された額は1599億円。つまり、マイナスでありながらもコスト削減などにより、改善されていることが強調された。
改めて、モバイル成長のキーは何かを考えると、上記に示した経済圏だろう。確かに、大手三社に比べて、品質などでも遜色ないのかもしれない。そう言っても後発で、消費者の立場からすれば腰が引けるのはやむを得ない。ただ、上記に書いた通り、楽天市場他ECとカードの親和性と、利便性においては、他よりも頭ひとつ出ている印象なのは数字が立証している。なので、これを強みに、モバイルに引き込めるかということになるのではないか。
経済圏で得た信用をベースに着実に利用者増を
すると、彼らが言っている目標数値は、まずはリファラルによって実現されることを目指すのが、順当になるだろう。現に、彼らは最近、紹介キャンペーンを強化している。席上、紹介によって入っている人が、25万人程度。かなりの割合を占めていることを明らかにしている。
それに加えて、最強家族プログラムを発表したばかり。六人家族であれば、100,000ポイント獲得できるようにして、利用者の裾野を広げる。一度使えば、それが価値だと感じられる理由は、これまでの他のMVOと比べて、年間36万円の削減が可能とする金額面である。
別に、価格競争をしたいのではなく、それが適正であることを自らの事業モデルで示すわけだ。それでモバイルに導くことができれば、今度は、モバイル単体での収益を向上させる。ここで大事なのは、ARPUを上げていくこと。
これも、家族であれば、プラスに作用しやすい。そこには若年層がいるからだ。多くは、電話使用よりも、YouTubeなど、通信回線を多く使う可能性が高い。
モバイル利用者増加がECと金融を上げていく
だから、家族割でポイント還元と料金で安くしたとしても、利点が出る。長い目で見れば、ARPU(ひとりあたりの平均売上金額)を上げることになるからだ。現状、ARPUは、2023Q3で2046円、Q4で1986円。下がっているのは、BtoBの利用者が増えたことに伴う。なおさら、BtoCが増えれば、ここが上昇。2500円以上となれば、それがそのまま、モバイルの粗利となる。
ちなみに、結果、楽天市場にもプラスに作用する。以前の記事でも書いた通りだ。
だから、結局、まずは楽天市場と楽天カードで築いた信用が大事。それをベースに、モバイル会員を増やし、モバイルの利用機会を増やす。ARPUが増えれば、モバイルの粗利が増える。同時に、上記記事のように、楽天市場の購入金額が1.9倍であることからすれば、どうだろう。これまでモバイルとカードを併用してECを活用し、その売上が上昇すると共に、カード利用を伴う。だから、企業価値となる。
だから、楽天グループの未来を思えば、まずはどれだけモバイルの裾野を広げられるか。
そして利用者の信用が高まれば、自ずと経済圏に関係なく、モバイル契約が増えてくる。2023年通期の決算内容からすれば、そこが2024年における楽天の勝負の要素になっていくだろう。
今日はこの辺で。