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家電を売って終わりにしない。エディオンが「炊飯器で親を見守る」仕組みに込めた、家電量販店の新しい役割

家電の操作履歴が、離れて暮らす家族の安心につながる。CEATEC 2026でエディオンの担当者に話を聞いてみると、そこには家電を便利にするだけではない、顧客との関係を育てるための新しい挑戦がありました。先日、幕張メッセで開催された「CEATEC 2026」に足を運んだ際、エディオンのブースが目に留まりました。家電量販店として知られる同社が、デジタル技術の展示会で何を提案しているのだろう。そんな興味から担当者に声をかけたのです。

 話を聞いてみると、単に家電をスマートフォンで操作できるようにするというものではありませんでした。

異なるメーカーの家電を一つのアプリでつなぎ、その利用状況を日々の暮らしに役立てる。さらに、その仕組みを離れて暮らす親の見守りにまで発展させているというのです。

僕が面白いと思ったのは、その技術そのものより、家電量販店という立場を生かして、顧客との関係を変えようとしている点でした。

1.メーカーの垣根を越えて家電をつなぐ。その意味は何か

まず、担当者が紹介してくれたのは「エディオンスマートアプリ」です。

例えば、帰宅する少し前にエアコンの電源を入れて、部屋を涼しくしておく。外出先から家電の運転状況を確認する。こうしたことは、既に多くのメーカーが自社のアプリで実現しています。

ただ、ここには一つ問題があります。

僕らの家にある家電は、必ずしも同じメーカーの商品ばかりではありません。エアコンはダイキン、冷蔵庫は日立、洗濯機はパナソニックというように、製品ごとにメーカーが異なることは珍しくないでしょう。

そのたびに別々のアプリを立ち上げるのでは、便利になったようで、どこか煩雑です。

エディオンが進めているのは、こうしたメーカーの垣根を越え、一つのアプリから複数の家電を管理できる仕組みです。

2025年4月に提供を開始し、対応メーカーを拡大。2026年10月にはタイガー魔法瓶も加わり、自社ブランドの「e angle」を含む10ブランドに対応するようになりました。

もっとも、すべての家電が同じように操作できるわけではありません。対応機種や機能には違いがあり、メーカー側のアプリへ移動して操作する場合もあります。

それでも、ここで重要なのは、エディオンが特定メーカーの商品だけを扱う会社ではないということです。

さまざまなメーカーの商品を販売する立場だからこそ、それらを横断する仕組みを提供できる。つまり、家電を選ぶ際の窓口だった量販店が、購入後の家電を使う際の窓口にもなろうとしているのです。

2.家電の操作履歴が、離れて暮らす親の安心につながる

そこで僕が気になったのは、このアプリが単なる操作ツールにとどまらないという点です。担当者が紹介してくれたのが「エディオン見守りサービス」でした。

これは、家電の操作状況と利用者自身による体調報告を組み合わせ、離れて暮らす家族にメールで知らせるサービスです。例えば、親がその日の体調を「元気」「調子が悪い」の二択で回答すると、その情報が家族へ届きます。

さらに、対応するエアコンや洗濯機などの操作状況も確認できます。エアコンが使われている。洗濯機が動いている。そうした情報が、暮らしの様子を知るための手がかりになるわけです。

ここで興味深いのは、特別な見守り機器を設置するのではなく、日常的に使う家電の情報を活用していることです。もちろん、家電が動いていたからといって、必ずしも本人が元気であると断定できるわけではありません。

ただ、毎日の暮らしの変化を知る一つのきっかけにはなります。この点で、従来の家電の考え方が少し変わるように感じました。家電は、洗濯する、冷やす、温めるといった目的のために購入するものです。しかし、その利用状況が別の価値を持つようになる。

商品そのものの機能は変わらなくても、情報の使い方によって、人々の暮らしに提供できる価値が広がるのです。

3.炊飯器を贈ることが、親を見守ることにつながる

その考え方を、さらに具体的な商品へ落とし込んだのが、タイガー魔法瓶と共同で企画した「親孝行見守りパック」です。これは、IoT対応の炊飯器と通信機器、さらに訪問設定サポートを組み合わせたものです。

ポイントは、毎日の炊飯という行動を、離れて暮らす家族が生活の様子を知る手がかりにすることです。

例えば、親がいつものようにご飯を炊く。その情報が記録され、家族が炊飯状況を確認できる。特別な操作を覚えてもらわなくても、普段の生活の延長で見守りにつながります。

ただ、単なる高齢者向けの監視システムではないと言う気もします。というのも、親の立場からすれば、子どもに心配されることを嬉しく思う一方で、あまり干渉されたくないという気持ちもあるでしょう。

ましてや、突然カメラを設置されたり、毎日何かを報告するよう求められたりすれば、負担に感じるかもしれません。ところが、炊飯器であれば、普段通りにご飯を炊くだけです。

子どもは「ちゃんとご飯を炊いているかな」と確認できるし、いつもと違う様子があれば、電話をしてみるきっかけにもなります。生活に馴染ませる、この仕組みが人と人との距離感を大切にしているように映りました。炊飯器を贈るという行為に、相手の暮らしを気遣う意味が加わる。家電が、人と人をつなぐ役割を持ち始めているのです。

4.技術があっても使えない。その壁を越えるのが家電量販店

ただ、一つ疑問を持ちました。こうしたIoT家電は、便利だと分かっていても、実際に使いこなしている人はどれくらいいるのだろう、ということです。

例えば、スマートフォンとの接続やWi-Fiの設定。若い人であっても、必ずしも簡単とは限りません。ましてや、離れて暮らす親のために導入する場合、子どもが実家へ帰り、機器を設定しなければならないとなれば、それ自体が負担になります。

担当者との話でも、この導入時の難しさが一つの論点になりました。そこでエディオンが生かすのが、家電量販店として培ってきた顧客との接点です。

今回の「親孝行見守りパック」では、専門スタッフが利用先の自宅を訪問し、炊飯器や通信機器の設置、アプリの設定などをサポートします。インターネット環境が整っていない家庭でも始められるよう、モバイルルーターをセットにしているのも、そのためです。

考えてみれば、ここに家電量販店ならではの強みがあります。家電メーカーは優れた商品を開発できます。しかし、それを購入した人の家庭環境や、使い始める際の困りごとまで、個別に支えるのは簡単ではありません。

一方、エディオンは家電を販売し、配送し、設置し、その後の相談にも応じてきた会社です。つまり、もともと顧客の暮らしとの接点を持っている。ソフトとハードの両面からサポートできると言うのが付加価値になっているのです。これこそが、今回の取り組みの大きな意味に思えました。

5.家電が売れた後から、新しい商売が始まる

実は、今回の取材で僕が最も考えさせられたのは、家電量販店と顧客との関係でした。従来、家電量販店と顧客の接点は、購入する時、あるいは故障や買い替えの時に生まれることが中心だったように思います。冷蔵庫が壊れたから新しいものを買う。洗濯機の調子が悪くなったから相談する。リフォームを考えるようになったので店舗へ足を運ぶ。

つまり、何かしらの必要が生じた時に、初めて接点が生まれるわけです。ところが、IoT家電がアプリでつながると、その関係が変わってきます。家電を購入した後も、エディオンのアプリを通じて顧客との接点が続くからです。

日々の家電の利用状況から、暮らしの中で何が起きているのかを知る手がかりが生まれる。見守りサービスのように、そこから新しいサービスを提供することもできます。

今回のCEATECでは、こうした生活データを将来的な防災・減災インフラなどへ活用する構想も紹介されていました。もちろん、生活データを扱う以上、本人の同意やプライバシーへの配慮は欠かせません。また、データが取得できることと、そこから人の状態を正しく判断できることは別の話です。

それでも、技術の進歩によって、家電量販店が顧客との関係を深める可能性が生まれているのは確かでしょう。

ある意味に、ECにも通じます。商品を販売し、届けたら終わりではなく、その商品を使う暮らしにまで関心を向ける。そうすることで、今まで見えていなかった困りごとや、新たな需要に気づくことができるのではないでしょうか。

その意味で、今回の取り組みは、単なるスマートホームの提案ではありません。家電量販店が、商品を販売する場所から、暮らしを支える存在へと役割を広げようとしている。その一つの形なのだと思います。

そして、その象徴が炊飯器だったというのが、なんともいいなと思いました。最先端のテクノロジーを扱うCEATECで、僕が心を動かされたのは、毎日ご飯を炊くという、何気ない暮らしの風景だったのです。

今日はこの辺で。

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