楽天が挑むファッション支援プロジェクト「by R」
1.「ファッションに魂を」――楽天が込める想い
楽天株式会社代表取締役会長 兼 社長の三木谷浩史氏が「ファッションに力を入れる」と明言した際、その想いは楽天が掲げる「エンパワーメント」の精神に通じるものだと感じた。これまで楽天市場を通じて日本全国の商店に活力を与えてきたように、ファッションの世界にも新たなエネルギーを注ぎたいという考えが背景にある。
2.「by R」の誕生――日本のブランドを世界へ
そんな楽天が立ち上げたのが、日本発のファッションブランドを支援するプロジェクト「by R」(バイアール)である。目的は明快だ。才能ある若手デザイナーの活躍の場を広げ、日本生まれのデザイナーズファッションを世界へ発信することにある。
実は楽天は、ファッションに関して新たな取り組みをすでに進めていた。2019年8月には一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構(JFW機構)とパートナーシップを締結し、「Rakuten Fashion Week TOKYO」の冠スポンサーとなっている。これにより、国内外から注目を集めるファッションイベントを通じて日本のファッションブランドを世界に発信し、業界活性化を目指してきた。
3.「by R」がまず手がける支援とは
「by R」は、そのファーストステップとして、2020年10月12日(月)から10月17日(土)に開催される「Rakuten Fashion Week TOKYO」でのファッションショー支援を行う。具体的には、世界から注目される日本のブランド「doublet(ダブレット)」と「FACETASM(ファセッタズム)」のショー企画・実行をサポートし、「Rakuten Fashion」上でファッションショー映像の配信も実施する。こうしたオンライン配信によって、ファッション業界の関係者だけでなく一般のファンにもショーの世界観を届ける狙いがある。
3-1.「doublet」
「doublet」は井野将之氏が手掛けるブランドだ。見慣れたモノに“違和感”を加え、日常着に新たなアクセントを生み出すデザインが特徴。2018年には「LVMH Prize」でアジア人初のグランプリを受賞し、2020年1月にはパリでブランド初のランウェイ形式のインスタレーションを披露した。井野氏は「パリのデジタルファッションウィークで新作を発表したが、今回『by R』と組むことで新たな見せ方に挑戦したい」と意気込んでいる。
3-2.「FACETASM」
一方、「FACETASM」はデザイナーの落合宏理氏が率いるブランド。「facet(ファセット)」という言葉から派生した造語で、宝石の切り子面や物事の様々な側面を意味し、多角的な視点からファッションを生み出す姿勢を象徴している。落合氏は「ミラノやパリで発表を続けてきたが、今年は価値観や環境が大きく変化した。6年ぶりに東京でショーを行うのは大きな意味がある。これまでの経験や想いを強いクリエーションとして注ぎ込みたい」とコメントしている。
4.日本ファッションの転換期と楽天の狙い
「Rakuten Fashion Week TOKYO」のレセプションパーティで、ビームスの設楽洋氏が「最近、日本発のファッションブランドの話題が少なくなったのは残念。こうした機会を通じて、世界に羽ばたくブランドが出てきてほしい」と語ったように、日本のファッションシーンには新たな一手が求められている。
また、昨年はZOZOがZホールディングスの子会社となり、ファッションビジネスの勢力図にも変化があった。ファッションが単に“斬新さ”だけではなく、経済圏を有するデジタルプラットフォームとの連携やマーケティング力を駆使し、ビジネスとして生産性を高める方向へ進まざるを得ない潮流が生まれている。
そうした状況の中で、楽天は「楽天市場」で培ってきたプラットフォーム運営力をファッションにも活用したい考えだ。ネット通販を活路としてきた地域の商店のように、ファッションブランドにも光を当て、世界へと送り出す「推進役」を担おうとしているのが「by R」なのである。
5.「by R」にかける期待
新型コロナウイルス感染症の拡大によって、人々の生活や価値観は大きく変化した。オフラインの場での発表や販売機会が限られる一方、オンラインには可能性が広がっている。未だ世界に知られていない日本のブランドが「by R」を通じて活路を見いだし、大きく羽ばたいていくチャンスになるかもしれない。
斬新なクリエーションによる“驚き”を求めるファッションファンにとっても、「by R」がどのようにショーを支援し、国内外に情報を発信していくかは大いに注目すべきところ。日本のファッションに新たな活力を取り戻すために、楽天は“エンパワーメント”の精神をいま一度発揮してくれるだろう。
以上が、楽天のファッション支援プロジェクト「by R」をめぐる背景と意義、そして今後への期待をまとめた再構築文です。日本発のブランドが世界へ羽ばたくための大きな後押しとなるか、今後の展開に注目が集まります。