宝塚に学ぶCRMの本質。そしてAIへ──“個の熱”と“箱の構造”を両立させるには?
先日、電通デジタルの望月さんとお酒を酌み交わしながら語った話の中で、忘れられない気づきがありました。それは、CRM(顧客関係管理)に必要なのは、熱狂を生む“個”と、それを持続させる“構造=箱”の両立ではないか、という視点です。驚くことに、それはAIを企業が活用する上でも大事な気づきをくれる様に思います。
宝塚の構造がヒントをくれる
宝塚歌劇団では、俳優一人ひとりが熱心なファンクラブを持ちながらも、全体として“宝塚”という箱のブランドで成り立っています。誰かが引退しても劇団は続くし、新たなスターが自然に育つ仕組みがあります。この構造があるからこそ、“個”の輝きが際立ちつつも、ブランドは継続していけるのです。
ビームス、Instagram、そしてAI──個性は“構造”があってこそ引き立つ
僕は望月さんにこんな話をしました。「いまの時代、Instagramなどでスタッフが自分の個性を発信する文化が広がっている。でも、それが成り立つのは“ビームス”というブランドの色があるからじゃないか」と。スタッフは自分のコーディネートを載せながらも、その背景には“ビームスらしさ”という共通認識がある。それが土台となり、個性が安心して発揮できる。
その上で僕はこう続けました。「だったら、企業の中でAIを活用する時も、同じように“共通のプラットフォーム”があれば、そこから個人のアイデアや発案が活きてくるんじゃないか?」と。
それは、この日立製作所の話を思い浮かべて、自分なりに派生させて考えてみたものです。
そのとき望月さんは、「それってまさに宝塚だよね」と言ってくれました。
一見すると繋がりがないのですが、実は奥が深い。実は、AIを活かす企業構造は、CRMを育てる企業構造と似ているというわけです。
CRMは「個の魅力を育てる箱」をどうつくるか
つまり、CRMでも同じことが言えます。一人の担当者の優しさや対応力が光っていても、それが“構造”として共有されていなければ、関係性は属人的になってしまいます。そこで重要なのは、「誰が対応しても、そのブランドらしさが伝わる」状態を設計することです。
望月さんが言っていたのは、「“個”の接客体験がデータとして集積され、それがAIに学ばれていくと、それ自体が企業のブランドになる」という考え方でした。それは、宝塚のファンクラブが、俳優ごとの魅力を起点にしながら、最終的に“宝塚”という信頼の箱に還元されていく構造ととても似ています。
要するに、AIのプラットフォームを作るとしたら、こうなります。そこには個々のスタッフの個性を尊重して、なお成立する企業の箱としての理念があってこそだと。
永続する関係性には“箱”が必要
個人の熱量や思いだけでは、長く続く関係性は築けません。一方で、構造だけでは感情が動きません。この両方を両立させる仕組みが、今の時代には求められているのだと思います。
つまり、「感動的な対応を、誰もが自然にできるようにする」ための箱。それがCRMにおける“宝塚的思考”。
実はその構造的理解をすることで、AIを企業内でプラスに作用させられるのだと思います。──今日はこの辺で。