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楽天 ネットスーパー 経済圏戦略で重要な理由 インフラは全国に オープンに

楽天はネットスーパーの環境を整えることで、リアル市場への本格進出を明確にした。先日、楽天グループはネットスーパーのプラットフォーム「楽天全国スーパー」の提供を発表。この新サービスは、西友で培ったノウハウを活かし、受注管理やオンライン決済などネットスーパーのインフラをオープン化するものだ。

1.楽天 ネットスーパーのインフラを作る理由

1.三木谷さんの言葉から垣間見られる戦略

「楽天全国スーパー」の登場により、全国のあらゆるスーパーがこのプラットフォームを活用し、ネットスーパー機能を標準装備できるようになった。楽天は、急速に進むDX(デジタルトランスフォーメーション)の波に乗り遅れないための手段を提供した形だ。

以前の決算発表で、三木谷さんは「どれだけネットが伸びても、売上の7割はリアル」と述べていた。この発言からも、彼の視線は確実にリアル市場へと向いていることがうかがえる。その視点に立てば、すべてをEC化するのではなく、リアルの小売業にDXプラットフォームを提供することで、リアル市場への進出を果たそうとしているのではないか。つまり、次のような構図が見えてくる。

ネットスーパーをファッション業界と同じ視点で捉えるとわかりやすい。どちらもリアル店舗にDX(デジタル化)のリソースを提供する点で共通している。

関連記事:「 楽天ファッション 」オムニチャネル 施策 機会損失をなくし 売上 と 利益率 を改善

2.日本の生活環境を配慮

楽天がこの戦略を取る理由は、日本の小売環境にある。特にスーパーは、至るところに店舗があり、日本人にとって日常的な買い物の場となっている。そのため、無理にネット購入を促すのではなく、リアル店舗を基盤にDXを活用し、顧客の利便性を高めながらネット利用を促す方が合理的だと判断したのだ。

ちなみに、ファッション業界の場合、リアル店舗の在庫管理が経営の課題となるため、DXの活用目的はやや異なる。しかし、本質的にはスーパーと同じく、リアル店舗にDXのリソースを提供することでメリットを生み出す点は共通している。この関係性については、下の図にまとめた。

3.そして日本人の習慣を考えて

以前も述べたが、食品分野のEC化率はわずか3%程度にとどまっている。この数字こそ、楽天がネットスーパー事業に乗り出す必要がある理由を示している。コロナ禍で食品のオンライン需要が高まったにもかかわらず、EC化率は依然として3%にとどまっているのだから、単独のEC戦略では市場拡大が難しいことがわかる。

だからこそ、無理にECでシェアを奪おうとするのではなく、リアル店舗と連携する方が合理的だ。楽天の答えが、このネットスーパーのプラットフォームというわけだ。

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2.お店側とユーザー側とに利便性を

1.楽天ポイントを活かしたネットスーパーの利便性

このネットスーパーでは、郵便番号を入力するだけで、自宅エリアに対応したスーパーを検索し、簡単にサービスを利用できる。決済時に楽天IDでログインすれば、登録済みの住所やクレジットカード情報を使ってスムーズに買い物ができるだけでなく、「楽天ポイント」を貯めたり使ったりすることも可能だ。これにより、楽天経済圏の一部として、ユーザーにとって利便性の高い買い物体験を提供している。

また、このサービスは特に主婦層を意識している。例えば、出産を控えた妊婦にとっては、買い物に行かずに必要なものを届けてもらえることは大きなメリットになる。こうした利便性が定着すれば、家族が増えた後も食費の一部が自然とネットスーパーにシフトしていく流れが生まれるだろう。

2.楽天経済圏の拡大戦略

リアル店舗のスーパーにとっても、このプラットフォームを活用することで楽天ポイントを通じた集客が可能になる。ネットユーザーをリアル店舗に誘導し、新たな顧客層を取り込むチャンスが生まれるのだ。さらに、これは推測の範囲だが、生鮮食品など賞味期限の近い商品の販売を効率化し、物流の最適化や食品ロス削減にもつながる可能性がある。

この戦略は、決済サービスのPayPayが商店街に浸透した流れと似ている。楽天は、街中のスーパーを自社の経済圏に組み込み、主婦層などのユーザーを取り込むことで、継続的な利用を促している。

以前の記事でも触れたが、楽天にとって重要なのは、ユーザーが「楽天市場」「楽天ファッション」「楽天フリマ」「楽天スーパー」など、さまざまなサービスを継続的に利用することだ。これにより、サブスクリプションのような形でユーザーを定着させ、企業価値を向上させる狙いがある。この動きは、楽天経済圏をさらに強固なものにする重要な施策と言える。

関連記事:楽天 決算 2Q/2021発表 継続顧客 が生命線 追い風と投資の裏 その ARPU 向上を狙って

3.企業の参入と楽天の未来

すでにベイシアがこのプラットフォームへの出店契約を締結しており、今後も同様のメリットを感じる企業が増えていくだろう。この流れがどれだけ継続的な利用につながるかが、楽天の成長にとって非常に重要な意味を持つ。ネットスーパーの普及が進めば、楽天経済圏全体の活性化にもつながり、さらなる企業の参入を促す好循環が生まれる可能性がある。

4.配送の課題と日本郵便の可能性

もう一つ注目すべきは、ネットスーパーの配送部分だ。これは以前の記事でも触れたが、ネットスーパーの当日配送は、通常の宅配便とは異なる仕組みを必要とする。そのため、この分野に日本郵便が参入するのではないかと考えている。もし日本郵便が関与すれば、新たな物流市場が生まれ、同社にとっても新たなビジネスチャンスとなるだろう。今後の展開に注目したいところだ。

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3.楽天の経済圏、次のフェーズへ

1.買収ではなく出資で

三木谷さんは以前、「今後は買収だけでなく、出資を通じても経済圏を強化していく」と発言していたと記憶している。つまり、すべてを自社で抱え込むのではなく、既存の価値を活かしながらDXを推進する方向へと舵を切っているのだろう。

今回の「楽天全国スーパー」に加え、オムニチャネル化を進める「楽天ファッション」の展開も進んでおり、この2つを軸に物流を絡めたインフラを構築し、さらなる存在感を示していくことが予想される。楽天経済圏は、まさに新たなフェーズに突入したと言える。

2.楽天市場の出店者にとっても重要な変化

楽天市場に出店する店舗にとっても、この動きは大いに関係がある。経済圏の変化により、ユーザー層の動向がどのように推移していくのかを注意深く見守る必要がある。それによって、どの商品が売れるのか、売上に直結する部分が変わってくるからだ。

時代は確実に進化している。この変化をいち早く捉え、次の展開に備えることが、今後の成長につながるだろう。

今日はこの辺で。

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