楽天市場、「共通の送料無料ライン」を正式導入
楽天は2020年3月18日、「楽天市場」において3,980円(税込)以上の買い物で原則送料無料となる“共通の送料無料ライン”を正式導入すると発表した。本施策はネット通販の転換点とも言える大きな取り組みであり、ここに至るまでにはさまざまな議論や動きがあった。以下、その経緯と背景を整理する。
1. 三木谷氏の言及から始まった一連の動き
◇ 昨年の新春カンファレンスでの言及
• 楽天の三木谷浩史会長兼社長は、昨年の新春カンファレンスで「送料込みの合計金額では他より高くなるのに、商品価格だけを安く見せる」店舗があると指摘。
• 「送料分で儲ける」店舗の姿勢は消費者の信頼を損なう恐れがあり、楽天市場全体の利便性向上が必要だとして、共通の送料無料ラインの導入方針を示した。
◇ 楽天による物流投資への言及
• 三木谷氏は、送料に関わるコスト負担を軽減するため、Rakuten Super ExpressやRakuten Super Logisticsなど自前の物流システムに約2,000億円を投資する考えを表明。
• 楽天自身が物流インフラを整備することで、出店店舗を可能な限り支援する姿勢を強調した。
2. 反対運動と公正取引委員会の調査
◇ 楽天ユニオンなどの反発
• 一部出店者らが送料無料ラインの強制を問題視し、「楽天ユニオン」などの団体を結成。
• これを契機に、公正取引委員会が楽天の送料無料施策を独占禁止法の観点から調査するに至った。
◇ 「楽天出店者友の会」の発足
• 楽天市場で長年ビジネスを続けてきた店舗が中心となり、「楽天出店者友の会」を設立。
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• 彼らは送料無料ラインに一定の理解を示しつつも、一方的な対立構造には懸念を示し、楽天との対話強化を通じて店舗・楽天双方が協力できる関係構築を目指すと表明した。
3. 公取委「緊急停止命令」から一部実施へ
◇ 緊急停止命令と楽天の対応
• 公正取引委員会は一時、「緊急停止命令」を通達しようとしたが、楽天は新型コロナウイルス感染症拡大による店舗・物流への混乱を考慮し、「準備が整った店舗から順次送料無料ラインを導入する」と発表。
• これを受けて公正取引委員会は「緊急停止命令」の発動を見送り、楽天の施策は一旦落ち着きを見せた。
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◇ 3月18日から正式導入
• 上記の経緯を経て、最終的に楽天市場は3月18日より共通の送料無料ラインを正式に開始。
• 記念キャンペーンとして「39ショップ(送料無料ライン対応ショップ)」を対象に、3,980円以上の購入でポイント5倍などの特典も打ち出し、施策を後押しする姿勢を明らかにした。
4. 物流投資と送料無料ラインの関係
◇ 受注予測に基づく効率的な物流
• 楽天は「売り場(ECプラットフォーム)」を持つため、ある程度の受注数を予測できる。
• 受注予測をもとにドライバーの手配や賃金設定を行い、ドライバーの確保・満足度向上を図ることで、物流の効率化とコストコントロールを可能にする。
◇ プラットフォーマーが物流を担う必然性
• ネット通販が拡大する中、出店店舗が個別に物流を最適化するのは難しい。
• プラットフォーマーである楽天が物流に大規模投資をすることで、出店者が送料負担のリスクを極力減らし、消費者へ統一的なサービスを提供できるメリットがある。
5. 今後の展望と期待
◇ 店舗と楽天の「歩み寄り」が鍵
• 三木谷氏のリーダーシップで楽天市場は大きく発展してきたものの、企業規模の拡大に伴って出店者との距離が生まれたのも事実。
• 「楽天出店者友の会」のように、ただ対立するのではなく建設的な対話を重ねることが、今後のネット通販の健全な成長に重要となる。
◇ ネット通販のさらなる発展へ
• 共通の送料無料ラインはネット通販における大きな流れの一端にすぎない。
• 環境変化が続く中で、店舗と楽天が協力し合い、利便性向上や持続的な物流体制の整備を進めることが、業界全体の発展につながると期待される。
【まとめ】
楽天市場の「共通の送料無料ライン」導入は、送料を明確化して消費者の不満を解消する一方、店舗には一定のコスト負担も伴うため、多方面で議論を呼んできた。公正取引委員会の調査や、新型コロナウイルスによる影響などが重なった結果、一部店舗からの先行導入を経て、2020年3月18日に正式実施がスタートした。
楽天が進める大規模な物流投資は、送料無料施策に不可欠な要素と位置づけられ、EC市場全体の利便性を高める狙いがある。今後も店舗と楽天が歩み寄りながら、ネット通販全体の成長と持続可能な物流体制が実現していくことが期待される。