経済圏 の方向性の違いがチラリ 現段階では 楽天 は“物流” で。 ヤフー は“ソーシャル”で。
不思議なものだけど、楽天とヤフーは共に、経済圏を形成しているのだけど、若干、性質が違うと僕は思った。敢えて、議論する必要すらあるのかわからないのだけど、思い付いたのだから、しょうがない。ここで書かせてもらおうと思う。まず最初に言うなら、楽天は(主に)カードとポイントを重視しているのに対して、ヤフーは(主に)スマホ決済と残高によるボーナスを重視している。
楽天 と ヤフー 経済圏 金融面での違い
1.カードを推したい楽天
勿論、スマホ決済を蔑ろにしているわけではないけど、そこまで積極的になれない理由があって、それは楽天としては「楽天カード」の方で決済してほしいからである。そもそも、よく考えたものだけど、「楽天市場」というネットの売り場はクレカ決済の方が便利なので、クレカを楽天ブランドにしてしまえば両方利用されて、両方成長するわけである。しかも両方にとってお互いが付加価値になる。
そこにポイントという発想を持ち込んで触発すれば、ECとクレカの両方で覇権を握れると考えたわけで今やSPU(スーパーポイントアッププログラム)の礎になっている。
2.ならばとスマホ決済を攻めたヤフー
一方で、ヤフーは「PayPay」を強く打ち出しているけど、これまたよく考えたもので、後発でクレカに参入してもなかなか存在感を出すことができない。そこで、着目したのがスマホ決済だったのではないかと思う。
彼らは「PayPay」をリアルのお店で使ってもらうことで存在感を出し、まずはここでナンバーワンのインフラをとってそこから、ネット通販などを使うきっかけを作れば楽天とは違う切り口で強さを発揮できるわけである。
これが実は両者の戦略にも若干、影響をもたらすのだということに気付かされるわけである。
楽天 自ら物流 を抱えて差別化を図る狙い
1. 自社で積極的に物流を構えようとする楽天
そもそも一番、最初に物流の意味を考えていたのはAmazonであり、商品さえ、集めてくれれば、あとは全て自分たちが行うというフルフィルメントの発想で、多くの企業から商品を集め、かつお客様への利便性を図るに至った。
その後、ここ数年で通販の急拡大に配送業者が追いつかなくなってきたことで、宅配クライシスの問題が起こり始める。だから、楽天グループの三木谷浩史さんは2000億円投資するという考えを明らかにするとともに、独自の配送網を築き、物流拠点の設置にも関わり始めた。
2.インフラ強化のために日本郵便と合弁会社
ただ、そうはいっても自社で全て投資をして行うというのには、限界もあってその後、日本郵便との合弁会社JP楽天ロジスティックの設立へと至る。楽天は自らデジタルのプラットフォームを提供しつつ、その裏側でこれらの物流を当てて、一体で付加価値を提供することをより鮮明にした。
3.デジタルと物流をセットで企業に売り込む
喫緊の課題を抱えるのは「楽天市場」なので、ここを優先的に投資をして行いつつ、楽天西友ネットスーパーなど、自らリソースを抱えて、一体で考える。
この真の狙いは、楽天のデジタルプラットフォームを使ってもらうことにある。つまり、例えば、楽天ファッションがそうだけど、楽天からすると ヤフー陣営のZOZOなどは、まだブランド力で追いかける立場であることは言うまでもない。
そこで、ブランドに対して存在感を出すために、注目したのが、物流なのだと思っていて、具体的に言えば「オムニチャネル」である。
関連記事:「 楽天ファッション 」オムニチャネル 施策 機会損失をなくし 売上 と 利益率 を改善
4.オムニチャネルは急務だけど投資もできない
リアルを主とする企業はデジタル化が遅れているので、リアルとネットを融合させて、生産性高く運用したいところだが、それにはお金がかかる。そこで、楽天はそれを支援する形でリアルとネットを紐付けて、紐づけた暁には拡大する物流のリソースと組み合わせて、物流コストを軽減しようというわけだ。
だから、最近徐々に、楽天西友ネットスーパーの物流拠点も増やしている。これは予想の域を脱しないが、楽天ファッション向けの拠点ができてもおかしくないと思う。
ヤフー PayPayの広がりとLINEのインフラ で差別化
1.LINE のコミュニケーション性の高さが強み
ヤフーはLINEとの連携をテコにして、交流=コミュニケーションを強みにしたいところであって、だから、公式アカウントを強く打ち出す。既存のYahoo!ショッピングでも、PayPayモールでも、ZOZOでも、企業とお客様をトークで繋げば、そのままCRMにも繋げて、継続顧客に持っていける。
だんだんこの辺から楽天との姿勢の違いを垣間見ることができる。
2.きっと自社ECもヤフー陣営は強化してくる
恐らくヤフーは楽天との違いの中に、自分達は「自社ECもバックアップする」ということを宣言してくるに違いないと思うのだ。
繰り返しになるが、LINEは公式アカウントを通じて、お客様との接点を持っていて、ここに紐づける形で、LINE(ヤフー)が用意する自社ECプラットフォームに紐付ける。
そうすると、自社ECにありがちな「集客できない」という問題は、LINEのコミュニケーション性により救われることになるわけである。
3.地元の店すらもEC化の対象にする
ヤフーはPayPayにおいて営業力を発揮して、多くの加盟店を持っている。これが同時に、まだECを作っていない店舗も多く含まれるはずなので、そこで彼らはこの自らが提供する自社EC=Smart Store Projectを促す。勿論、決済にPayPayを使うとお得になる施策を通してメリットを作り、それとLINEとの合わせ技で、そちらにもお客様が集まるように仕掛けることになりそうだ。
4.新しいマーケットも作り出す
その上で、新しいマーケットも模索して、店舗への付加価値をつける。「LINEギフト」がそうで、Yahoo!ショッピングとPayPayモールに出店しているお店に対して、そこへの出店を促進させている。「LINEギフト」はLINEのトークを通して、友達にギフトが送れるというものである。
相手の住所を知らなくても商品を送ることができるわけで。LINEを通じて、その商品をプレゼントしたことを伝えて、もらう側は自分で住所を入力することで、送り届けてもらうという仕組みなわけである。
5.最後にヤマトと連携して物流を強化する
ヤフーは「安さ勝負」でそこに挑んでも疲弊するだけなのは、わかっているから、彼らは彼らなりに違ったメリットを提示するべく、Yahoo!ショッピング、ペイペイモール、そして自社ECと実店舗を合わせたインフラを一つのアカウントでできるようにしたら、そこに物流を紐づければ、安さに関係なく、選んでもらえますよね?
そこでヤフーとヤマト運輸との連携である。ヤフーでヤマト運輸との連携を強化して、ヤフーは楽天とは別軸で利用者を増やし、スケールメリットを生み、下記のように価格でもある一定の戦いをしながらも、総合力で物流を選んでもらおうということじゃないかと思う。
「モールの強さ」か「決済とソーシャルの合わせ技」か
すると、楽天はあくまで「楽天」という冠の中で、最大限、楽天ポイントでリアル店舗へ送客したり、ネットショップに利点をもたらして、お客様を回遊させようとするのに対して、ヤフーはYahoo!ショッピング、PayPayモールに加えて、自社ECを含めてPayPayにおける付与を特典にして、それぞれに回遊させようとしているのであって、似ているようで、その戦略は異なるわけである。
ただ、いずれにせよ、小売と物流を一体で捉えて、どこの経済圏との関係性に重きを置くかが迫られる時が少なからず、店舗にはやってくるに違いない。今のうちに、その座組みを考えて、備えておくことで、冷静な判断ができると思う。今のうちから、小売と物流、表裏一体だけに、ちゃんと物流のコストも計算して、事業計画を立てておくことが吉だろう。
今日はこの辺で。