ヤフー、データ活用で消費心理を可視化――新サービス「DS.API」を発表
ヤフー株式会社は先日行われた記者発表会で、新たなデータ活用サービス「DS.API」を発表した。これは、ヤフーが昨年から提供しているデータサービス「DS.INSIGHT」の延長線上にある取り組みだ。同社は自らが蓄積してきたデータを自治体や企業と連携し、より高度な消費者行動の可視化を実現することで、社会全体のデジタル化と経済発展を後押ししようとしている。
「DS.INSIGHT」とは何か
まず、今回発表された「DS.API」を理解するためには、既存サービスである「DS.INSIGHT」をおさらいする必要がある。ヤフーは自社ビジネスにおいて、検索データや購買データなどを活用し、大きく事業を拡大してきた。「DS.INSIGHT」は、その強みを自治体や企業向けに提供することで、それぞれの分野におけるデータ分析やマーケティング戦略の高度化を支援するサービスである。
例えば、最近の事例として、レジ袋有料化に伴うエコバッグの検索動向の分析が挙げられた。女性を中心としたエコバッグの利用増加において、「コンパクト」「折りたたみ」だけでなく「コンビニサイズ」など、より具体的なニーズを示すキーワードが増えているという。こうした検索データが、これまで見えづらかった消費者の行動や心理を浮き彫りにしてくれるわけだ。
新サービス「DS.API」の狙い
しかし、従来の「DS.INSIGHT」単体では、ユーザー企業が保有する独自データとの組み合わせによる深い分析が難しかった。そこで、ヤフーは「DS.API」を新たにリリースし、「DS.INSIGHT」で得られる様々な分析機能をAPI経由で提供することを決定した。
• API連携による高度な分析
企業や自治体が持つ独自の顧客データや購買履歴データなどを、「DS.INSIGHT」による検索データや行動データと組み合わせられるようになる。これにより、より多角的かつ深い分析を行い、社会や顧客に還元できるインサイトが増えるとヤフーは自信を示している。
• 組織的なデータ活用を支援
新サービスでは、1つのアカウントで社内の複数人が同時にデータを閲覧・活用できる仕組みを導入。これにより、担当者だけでなく、会議やプロジェクト単位など企業内のあらゆる部門が分析結果を共有しやすくなる。データを活用する社内文化を広めることで、本格的なデジタル化を推進したい考えだ。
データで可視化する消費行動の未来
ヤフーが目指すのは、消費者行動を可視化するだけではなく、関連するすべての人がデータを活用できる環境を整えることだ。企業や自治体がデータ活用力を高めれば、消費者の心理やニーズをより的確に捉えたサービスや商品開発が可能になる。そして、それが国全体のデジタル化の波をさらに加速させる一助になるかもしれない。
実際、国や自治体でもDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の動きが加速しており、今後は行政サービスの改善や地域経済の活性化にもデータが使われる場面が増えるだろう。ヤフーの「DS.API」は、企業・自治体がそうしたデジタル変革を進める上で欠かせないツールになりそうだ。
まとめ-データが経済活動の「血液」になる時代
「DS.API」のリリースは、ヤフーが持つ膨大なデータをより多くの企業・自治体と共有し、消費者の行動や心理を深く理解するための大きな一歩となる。データが“経済活動の血液”として機能する時代が現実味を帯びる中、ヤフーの取り組みは、日本のデジタル化と消費行動の可視化に向けた重要なカギを握っているといえるだろう。