【消費者白書から学ぶ】食品ロス・大量廃棄を防ぐ通販・物流の新戦略
1.大量廃棄・食品ロスが指摘される背景と「消費者白書」
令和2年に公表された消費者庁の「消費者白書」では、産業革命以降の経済発展を背景とした大量生産・大量消費の流れが、結果的に食品ロスや大量廃棄を生み出してきたことが指摘されている。
過去には大規模な宣伝によって多量に商品を売り込む一方で、売れ残り(=消化率)に対しての意識は低かった。この問題を解決するためには、製造・生産から小売・消費者の手元に届くまでの仕組み全体を見直す必要があると考えられる。
2.「パルシステム」の事例に見る通販・物流の重要性
2-1.パルシステムの概要と宅配の仕組み
パルシステム生活協同組合連合会は、首都圏を中心に約 160万世帯が加入している生活協同組合で、全国の生協に先駆け個人宅配を始めた。日本における個人宅配サービスの草分け的な存在であり、その歴史は1970年代まで遡るのだ。
パル システムでは、定期的に組合員と接触の機会がある宅配の強みをいかし、産地の生産者、消費者である組合員、商品の調達や提供を行う生協職員が一体となり、互いの理解を深めながら、それぞれが持つ課題を解決する「協同」の具現化に取り組んでいる。
・1970年代 – 1980年代
1977年に「首都圏生活協同組合事業連絡会議」が発足し、1980年代には生協運営の方針が整った。1981年には、PB(独自開発)牛乳「こんせん牛乳」が誕生し、品質向上に取り組む姿勢が示されました。1984年には、ハムを生産する株式会社が設立され、商品開発が進んでいった。
・1990年代 – 個人宅配の開始
1990年頃から共働き世帯が増加し、生活様式の変化により、個人宅配のニーズが高まってきた。1990年に首都圏で個人宅配サービスの試験的な導入が行われ、1992年には本格的な提供が開始されたのである。この取り組みは全国の生協に広まり、1993年以降に急成長を遂げたことが記録されている。
・利点
そもそも生協の宅配事業は、事業者の視点からは事前受注で数量を把握することができ、そのため在庫リスクが少なく、また消費行動の視点からも店舗購入と比べて衝動買いが少ないなど食 品ロスが発生しにくい仕組みになっている。注目すべきは、生産者や消費をする組合員との普段からのコミュ ニケーションがあったからこそ実現した食品ロス削減の取り組みがあることだ。
例えば、形がいびつだったり、傷がついていたりする規格外の農産物は、味や食感といった本来の品質には問題ない。このような規格外農産物をうらごしやスティック状に加工し販売したところ、なかでも「うらごし野菜」シリーズは、離乳食やスープの素材として好評。いずれも栽培履歴が明らかな産地指定の食材を使用しているため、食品の安全性に関心の高い主婦層からも人気がある。
この宅配事業には以下のような特徴がある。
- • 事前受注により必要数量を把握できるため、余剰在庫を抱えにくい。
- • 衝動買いが起こりにくく、食品ロスの発生を抑制しやすい。
- • 生産者・消費者(組合員)・生協職員のコミュニケーションを通じて、お互いの課題を理解・共有しやすい。
2-2.食品ロス削減の具体的な取り組み
• 規格外農産物の活用
形が不揃いでも品質に問題がない農産物を「うらごし」や「スティック状」に加工して販売。特に「うらごし野菜」シリーズは離乳食やスープの素材として好評で、安全性を重視する主婦層からも支持を得ている。
• 天候不順による農産物の有効利用
ひょう害りんごを使ったジュースや、台風の影響で白濁する「シラタ米」を積極的に呼びかけるなど、生産者支援と食品ロス削減を両立。
• ブロッコリーの廃棄率低減
茎部分を長めに残すアイデアによって廃棄率を45%から25%まで削減し、同じ原料から商品化できる割合を増やした。
3.配送員と顧客の信頼関係がもたらす付加価値
パルシステムでの取り組みを支えているのは、配達員と組合員(顧客)の密なコミュニケーションである。信頼関係があるからこそ、規格外農産物や天候不順で品質が変化した農作物の価値を理解・共有できる。
一方、昨今の物流業界では人材確保のコストが課題となっており、ヤマトホールディングスの決算でも人件費増加による利益率の低下が報じられた。単に「配送」だけにとどまらず、ドライバーが果たせる付加価値を最大化するような事業モデルへの転換が必要かもしれない。
4.今後求められる事業の在り方と“未来の常識”
新型コロナウイルス感染症の拡大で、出荷先を失った農家が大量の農作物を廃棄せざるを得ない事態も発生した。こうした問題は農家だけの努力では解決が難しく、生産から流通・消費までが一体となって「消化率」を高める仕組みを構築する必要がある。
特にネット通販では、楽天やヤフーなどのプラットフォーマーが物流に力を入れ始めているが、安さの追求だけでなく、生産者や顧客との信頼関係を活かした効率化が望まれる。信頼を基盤とした連携によって、生産者支援や食品ロスの削減、消費者への価値提供が同時に実現できるはずだ。