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楽天 (決算) 2Q/2021発表 継続顧客 が生命線 追い風と投資の裏 その ARPU 向上を狙って

ショッピングモールは形を変えたサブスクリプションへと転換している、ということか。先程、楽天グループ株式会社は、2021年第2四半期決算説明会を行った。その中で、国内ECの流通総額が前年同期比12.2%増で、巣ごもり需要が落ち着きながらも成長していることを明らかにして、それを思った。ただ追い風が吹きつつ物流・モバイルへの投資も積極的で、Non-GAAP営業収益は270億円減。どう受け止めるか分かれるところだ。

継続顧客 が 楽天 にとっての生命線

1.ショッピングECが前年同期比23.6%増

冒頭に記載した「国内EC」というのは楽天市場、トラベル、デリバリーなどを含んだ数字であり、流通総額の金額でいえば1.2兆円だという。この背景にあるのは、直販とマーケットプレイスからなる「ショッピングEC」の好調ぶりで、前年同期比23.6%増に至っている。

僕自身は「ショッピングEC」が伸びている理由が気になるところなのであるが、注目したのが継続顧客。決算資料の中でも「Q1/21での購入者がQ2/21でも購入している割合が約76%に及んでいる」という説明があって、この部分は大きいだろう。

昨年4月の緊急事態宣言時が最もネット利用が進んだ時期ではあるものの、その後、若干、生活に緩みが出てきて、その時ほどにネット利用は進んでいないはずなのに、これだけの利用があるのは、やはりその時買ったお客様が継続的に購入する形を取っているからだろうと推測できるわけである。

2.継続顧客を作り、ARPUを上げる装置が経済圏

特に、購入回数が3年で36回以上、購入しているお客様を彼らは「ロイヤルユーザー」と呼んでいるようだが、この割合がコロナ前までは4.5ポイント増だったのに対して、2021年では12.5ポイント増になっているわけである。

それを支えているのはいうまでもなく、楽天経済圏。すなわちポイント還元などが決め手になって楽天市場など、ショッピングECで購入する形になっているのだろうと思う。

なので、長期的な展望にたてば、ここで急激に、新規が増えることを意図するよりは、いかにまずは継続してもらうか、そして一人一人のお客様のARPUを上げていけるかであり、その部分でも経済圏を利用していくわけである。

そこで欠かせない動きがクロスユースであり、その意味ではいい流れは生まれつつある。フリマのラクマでは63.6%を筆頭に、ブランド系の楽天ファッションは30.9%、ネットスーパーの楽天西友ネットスーパーは12.9%に及んでいるからだ。

相互に利用しやすい環境は、それぞれのユーザー数も増やすことにも繋がり、楽天ファッションでは34.3%増、楽天西友ネットスーパーでは43.9%増となっていて、これらが結果、相互に好影響をもたらしあっていると思われる。

Amazonなどを見るに、生鮮食品ジャンル(ネットスーパーなど)を背景に、日常生活に入り込んで、プライム会員の増加を意図的に伸ばしているけど、彼らでいうなら、それを経済圏での利用で、ARPUを上げられるかということになるわけであろう。

ユーザーの消費動向に合わせ、どれだけネットに引き込めるか?

1.トータルでジャンルを抑えながら、それぞれの伸び代を見る

そうやって、あらゆるジャンルに彼らは進出したことで、そのカバーする範囲も、今や直販とマーケットプレイスなどの両方を足すと全般に渡る。ただ、これからは単純に伸ばせばいいという話ではなく、お客様の消費動向とその中身を見ながら、それぞれのカテゴリーでどれだけ増やしていけるか、サービスの内容と伸び代を見極めて、業績の伸びを予測していくことになろう。

下の数値は市場規模の額である。食料品、家具、家電、娯楽嗜好品などであれば、90.82兆円であって、その中にちゃんと楽天を冠にしたサービスが存在しているわけで、それではそこにどうアプローチするか。

食品で言えば、ネットスーパーを通して、その可能性を模索する。そこはリアルとネットを掛け合わせて然るべき方法で、消費行動に寄り添いながら、それを経済圏に還元していくというわけだ。その辺が以前、触れていた三木谷さんがネット通販だけではなくリアルも取り込んでいく必要性があるという話の趣旨だと思う。

そうやって家計消費の中で、少なからずリアルないしは、他の通販サイトを使っていたお客様がその楽天の経済圏の恩恵によって、継続的な購入を楽天内で実現させるか。冒頭話した通り、サブスクリプション的な形になって、伸びる格好になれば、まだまだ伸び代があるというのが彼らの考えなのだろう。

また、会長兼社長 三木谷浩史さんなどは、物流における投資の成果を強調するが、ある意味、それらは表の消費行動と連動して、奏功していると言って良いだろう。なぜなら、最近、店側の意識も変わっており、楽天スーパーロジスティクスの利用を通して、適時適量、在庫を確保して、売れるタイミングで極力、物量を動かせる環境を作る意味を感じ始めていると思うからだ。ただ、必ずしも、送料無料ラインの成果によるかは、決算の数字を見る限りでは言及しづらい。

関連記事:機会損失とは ? 小売 でそれが大事な理由 楽天 が物流を重視する意味も

2.ECが継続的に売り上げを作れば金融も安定

こういう背景を受けて、金融にもプラスの波及効果を生む。楽天カードでのショッピング取扱高は34.0%に及んでいて、売上収益を見ても前年同期比で16.4%である。すなわちショッピングのサブスクリプション的になればなるほどにカードの利用機会と利用額が増えてくるので、他のカードを扱う金融企業よりも小売をフックに存在感を表しやすくなっているということだろう。

ここまで彼らのコア事業といえる部分の話をしてきたが、それを盤石にさせようとしているのが楽天モバイルなのだろう。積極的な投資もあって、顧客獲得スピードは楽天カードの時の4倍以上らしい。これもまた、繰り返すが携帯料金がサブスクリプション的な安定収益を作り上げ、そこから派生して色々なサービスに繋がる為、次なる戦略の肝となっている思われる。

今やデジタルを起点として、日常生活があるので、そこのインフラをいかに抑えるかが彼らに取っての急務なので、注力するのもうなづける。

企業成長は経営者のリーダーシップによる

ただ、モバイル然り、ECに絡んでの物流の投資などは、それなりの額を投資しており、Non-GAAP営業収益は270億円減。この辺は、三木谷さんが、これまでの成果が数々の投資のもとに成り立っていることを背景に、今の投資に対しても理解を求めている格好だが、その成果は如何なるものか。

勿論、物流などの成果は一定の効果が見られるものの、それらの最大化をする為の送料無料ラインはその浸透度が出店店舗の90%といえど、店舗の心情を思えば、まだ議論の余地はありそうだ。また、モバイルも「RCP」という、モバイル上のインフラを作り、そこで彼らがその事業の拡大にあたって、活用したソフトウェアをオープンにして、多くの企業のモバイル環境の成長を促すことで自らの収益を目指しているが、どうだろう。

三木谷さん自身も話していた通り、AmazonがそのECの成長を背景に、AWSを提供して、一気に成長の速度を加速させたように、彼らもまた、それに近しいことをモバイルでやろうとしている。Amazonのような劇的な成長絵図を描けるとすれば、それは期待を持ってみてみたいが、それもまだ未知数であると思う。

少なからず、楽天を冠にした企業同士の価値を相互に活用して、クロスユースを促し、それ自体がユーザーにメリットをもたらすこの経済圏という構想はこのコロナ禍でのネットシフトの中においては、奏功している。

やはりいつも賛否が大きく分かれて議論を呼ぶ三木谷さんの強いリーダーシップで楽天の今はある。この追い風ムードに甘んじることなく、積極投資を繰り返す限りにおいても、まだまだ彼は満足いくことなく、更なるチャレンジが続くということだろう。

 

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