「暑さと暮らしの変化」から見える、夏の買い物トレンド──楽天市場2025年夏の最新動向
観測史上最も暑かった昨年をさらに上回る暑さが予想される2025年の夏──私たちは今、「暑さ対策」が“特別な選択”から“日常の必需品”へと変わる時代を迎えている。楽天グループが2025年5月28日に行った夏のトレンド予測会見では、今年の購買動向として「暑さ対策商品の多様化」「冷房による冷えに対する“温活”志向の広がり」「主食のバラエティ化」という三大潮流が紹介された。本記事ではその詳細を掘り下げる。
1. 暑さ対策が“所持前提”に──機能性と感情の両立へ
20〜60代を対象にした調査に基けば、実に7割の人が暑さ対策のグッズを求めているという。すると、消費も増加傾向となり、楽天市場でいうなら、それらのグッズの流通総額は、1/5倍にも膨れ上がっている。
● 「いつも持ち歩く」が基準に変わった
ゆえに、ハンディファンやネッククーラーはもはや日常ツール。2024年データで、ハンディファンは前年比1.8倍、ネッククーラーは前年比2.5倍である。勿論、機能性が最重要視されるものの、そこに「優しさ」が潜んでいることが大事。「ほら、ファンに手が当たっても危なくない」と実践してみせた楽天の塩山さん。
必然的に、マーケットが広がれば、更に、商品自体は生まれ変わっていくわけだ。「カバンに入れていても邪魔にならない」「使わなくても安心材料になる」といった、“持つこと”そのものが消費価値になり、その形状に変化が現れる。提案の切り口がより多様性を持ったものとなる。中でも、楽天が掲げている今年の傾向としては、携帯性。だから、例えば、16gのネッククーラーや65gのミストファンなど、スペックではなく“感覚”で伝わる軽さが支持されていくと説明している。
● ファンも“用途の物語”で差別化
面白いのは、使う場面すら変容が見られる点である。たとえば、お弁当専用ファン、リュックと一体型など、“どんなシーンで使いたいか”が商品の存在意義に直結。もはや「涼しい」だけでは買われない。「これは、誰のための商品か」が語れるものに人は惹かれている 。
もともと、楽天は同じカテゴリー内に、多くの商品があるので、そこで覇権を握るには、その商品単位での切り口が、重要。比較的新しい視点が取り入れられて、上記のような意外な用途が生まれているというわけである。
● 「義務化」で熱中症対策はビジネス必須条件に
我々が取り巻く環境も変わってきている。2025年6月1日より、企業は職場での熱中症対策が法的に義務化。特に、工事現場など、外で作業をする企業においてはそれを徹底する方向が打ち出されるものと見られる。ゆえに、これに伴い、ヘルメット用アイスパッドや熱中症予防キットの売れ行きが急上昇。
ヘルメット用アイスヘッドや熱中対策ウォッチなどに加え、応急処置の知識まで備えたセットもあり、BtoBでも“安心を売る”発想が問われている 。ビジネスの局面が変わってきているし、その一方で暑熱馴化という考え方も生まれているとか。暑さに体を慣れさせることを意味しており、環境の変化が文化を変貌させている。これからますます消費の現場は変わるのだろう。
2. “冷え”が新たな悩み──夏こそ「温める」が支持される理由
● 冷房社会が生んだ、逆転のニーズ
なかでも、意外なのは、冷えに対する対策である。え?逆じゃない?いやいや違う。真夏のオフィスや自宅で「寒さ」を感じる人が増えているのだ。実際、冷えを感じた経験のある人の7割以上が「温活」に関心あり、または実践中という結果に 。この傾向が加速するのは、特にデスクワーカーや女性層。
対策としては腹巻きやレッグウォーマー、生姜湯が再評価されているが、その背景には“冷えによる不調”がQOLを下げることへの強い危機感がある。
● 温活も「自宅で本格」がスタンダードに
さらに、火を使わないお灸、よもぎ蒸しセット、白湯メーカーなど、かつては“温活女子”の専売特許だったアイテムが、今や誰でも使える定番に。とくに「時間を奪わず、体を整える」商品が支持されている点は、ライフスタイルの中で“健康=手軽で続けられる”が求められている証だ 。
「温めることで自分のコンディションをコントロールする」意識が広がっている。
3. 「食卓の常識」を超える夏──栄養と世界を選ぶ時代へ
● 主食が“体調管理の手段”に
単純に暑さ対策、冷え対策など、現象に対してのものと同時に、自分の基礎体力を高める動きも活性化している。
夏バテを防ぐため、もち米・玄米・もち麦の人気が急上昇。特に「もち米」は前年比2.4倍と驚異的な伸びを示した 。これまで白米が当たり前だった主食は、「機能性」という視点で見直されている。糖質制限やグルテンフリーといった志向に合致する穀類が、家庭内でも“定番化”されつつあるのだ。
● 海外の主食も“特別ではない”選択に
先ほどの暑さ対策と同じだが、マーケットが広がると、切り口の多様化が進む。そこで脚光を浴びているのが、海外の食材。ライスヌードル(2.7倍)、トルティーヤ、クスクスといった海外での主食的なものがぐっと身近に。特に楽天市場では5kg・10kg単位での「まとめ買い」が伸びており、外食ではなく“家庭で異文化を楽しむ”ムードが見てとれる 。
● 食卓は“ワールドツアー”になる
単に、米を食え!というわけではなく、いかにアレンジして海外文化を取り入れ、基礎体力を高めるかなのだ。今回の試食会では、アラブの「クスクス」や、メキシコの「トルティーヤ」、さらにはもち麦のカップ寿司までが登場。こうした体験は、ただ“味を楽しむ”だけでなく、「他国の食文化を家庭に迎える」という価値転換を感じさせるものだった 。
【結論】環境の変化はものづくりの進化を促す
気温という自然現象が、社会のインフラや家庭の買い物までを“再構築”しつつある今。楽天市場の購買データは、もはや単なるECの集計ではなく「暮らしの微細な変化の可視化」そのものだ。
そして、そこに浮かび上がるのは・・・
“誰かの不快を、誰かの選択肢で解消する”という、モノづくりの進化の物語。
この夏、私たちは「暑さをどうしのぐか」だけではなく、“どんな日常を選ぶか”という問いと向き合っているのかもしれない。