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新しい消費スタイルを象徴するZ世代発のプラットフォーム──ファッションECサイト「nugu」の決算から読み解く、いま求められるマーケティングとブランド戦略

2023年のEC業界は、コロナ禍以降のオンライン需要の飽和がささやかれる一方で、Z世代を中心に“自分らしさ”を求める消費傾向が一段と強まった年でもありました。単に「モノを買う」ことだけでは満足しない彼らにとって、ファッションやコスメなどライフスタイル全般が「自己表現の手段」であり、「共感を生むストーリー」である必要が高まっています。この潮流を巧みに捉え、急速に事業を拡大しているのがファッションECサイト「nugu」です。ここでは、nuguが発表した2023年の事業成果と2024年の事業計画から、EC市場がいまどのような方向に進んでいるのかを探ってみます。

急成長を続けるnugu──取引総額50億円の達成

nuguの2023年GMV(取引総額)は、前年の25億円から倍増となる50億円を記録。さらに、2023年12月の売上額は4億円に達し、オープンから3年が経過してもその勢いは衰えを知らないことを証明しました。

nuguは日本のZ世代を主なターゲットとし、「一番トレンディーな商品とブランドを集めた」ECプラットフォームとして注目を集めています。特に、インフルエンサーを軸にしたマーケティング戦略が功を奏し、ファッションやコスメはもちろん、雑貨やライフスタイル雑貨など多岐にわたるカテゴリーで商品展開を拡大。Z世代の「感度の高さ」に応えるラインアップをそろえたことが、高いリピート率とブランド認知度の向上につながりました。

2023年の挑戦──撮影ロケーションの海外進出とオフライン店舗開設

2023年、nuguはサービスの“体験価値”をさらに高めるための取り組みを積極的に推進しました。特筆すべきは、日本と韓国以外の国へ撮影ロケ地を拡大し、現地ならではの風景やカルチャーを取り入れたクリエイティブを生み出した点です。ECにおいて商品写真やプロモーション動画のクオリティは購買行動を大きく左右しますが、nuguはそれを単なる「商品紹介」にとどめず、ブランドやインフルエンサーの世界観をファンに共有する“物語”として発信。多くの競合が存在するファッションEC市場の中で、「差別化されたコンテンツ」を育てることに成功しています。

さらに、9月には新宿ルミネエストにオフライン店舗をオープン。開店初日には建物外まで長蛇の列ができたことからも、オンラインのみならずリアルの場でもZ世代からの支持が厚いことがうかがえます。2024年には大阪で2号店オープンを予定し、ブランドの認知度を関西エリアにも広げる狙いです。

インフルエンサーブランドから日本ブランドへ──2023年の事業拡大のキーポイント

2022年まではインフルエンサーブランドの出店を強化してきたnuguですが、2023年には日本ブランドの入店にも注力

これまでのnuguは「インフルエンサー×ファッション」というイメージが強く、特定のファン層に支えられていた面がありました。しかし、既存の枠にとらわれず「DISCOAT」や「ADAM ET ROPÉ」といった幅広いブランドとのコラボイベントを実施し、nuguの得意とするインフルエンサーマーケティング手法を積極的に活用。コラボ商品をインフルエンサーが着用し、PR動画を制作することで、「インフルエンサーブランドに興味がある層」と「既存のファッションブランドに愛着のある層」の双方を取り込む試みにチャレンジしました。

2024年からは、これら日本ブランドとの連携をさらに深め、オフライン店舗でのイベントや韓国市場への進出サポートを強化する計画も発表されています。海外から日本へ──という一方通行ではなく、日本ブランドを韓国でも活躍させるための施策を打ち出すことで、アジア全域におけるファッションECの“ハブ”を目指す戦略といえます。

nuguを支える投資と、親会社のサポート体制

nuguの運営会社は、MEDICARELABSの親会社である(株)MEDIQUITOUS(メディキトアス)。すでに30億円以上の投資を誘致中であり、韓国でもnuguの成長が大きく注目されています。さらに、韓国の流通大手・新世界(シンセゲ)グループ系列のCVCからの投資も決定しており、その流通チャネルを活用した日本ブランドの進出が加速する可能性も高いとみられています。

理事のパク・ハミン氏は、次のようにコメントしています。

「日本のインフルエンサーとコマースの生態系がnuguによってさらに成熟し、成長していることをとても嬉しく思っています。今年は日本のブランドもnuguでZ世代により愛されるよう、入店とマーケティング事業を強化し、日本ブランドが韓国のオンライン・オフライン市場に進出できるよう手助けをしたい。新世界系列の様々な流通チャネルへの日本ブランドの進出にも積極的に乗り出したい。ぜひnuguの2024年に注目してください。」

いま求められる“共感”と“体験”──nuguの決算から見えるECトレンド

nuguの快進撃の背景には、以下のような要因が挙げられます。

1. Z世代の特徴を捉えた世界観の構築

インフルエンサーを活用し、ユーザーが憧れ・共感を抱く“物語”を作り上げる手法は、SNS全盛の現代において不可欠なマーケティング戦略です。

2. オンライン×オフラインの相乗効果

オンラインストアでの豊富な商品ラインアップと、ポップアップや実店舗による体験の提供を組み合わせることで、ブランドに対する愛着や信頼感を高めています。

3. グローバル視点の拡大

ロケ撮影を海外に広げるだけでなく、日本ブランドを韓国市場に送り出すなど、国境を超えたコラボレーションにより、プラットフォームとしての価値を高めています。

Z世代は、従来の大量消費スタイルとは異なり、自分が購買する商品やブランドの背景にある「ストーリー」や「共感」を重要視します。加えて、インフルエンサーの影響力を積極的に受け取る一方で、“見せかけ”だけではないリアルな体験やコミュニティも求めるようになっています。nuguはまさに、そのニーズを満たす仕組みを柔軟に拡張しているといえるでしょう。

まとめ──nuguが切り拓く次世代ECの可能性

2023年の決算から見えたnuguの成長は、EC業界がこれからどのように展開していくかを示唆しています。単に「安さ」や「便利さ」を追求するのではなく、ブランドの世界観やインフルエンサーを活用した“ストーリーづくり”と“共感”を軸に、オンラインとオフラインを行き来する新たな消費体験を提供する──それこそが、Z世代を中心とした今のユーザーに選ばれるための鍵となっているのです。

日本ブランドとの連携強化や韓国への市場展開、実店舗の拡大など、2024年もさらなる動きが期待されるnugu。ECプラットフォームは数多く存在しますが、「感性を刺激するコンテンツとグローバルな視点を持った展開」という点で頭一つ抜け出している印象です。若者文化から新たなトレンドが生まれ続ける今、nuguの挑戦がファッションやライフスタイルの枠を超えて、どのようなイノベーションを起こしていくのか。これからも目が離せません。

参考記事:磨かれ輝く“宝の原石” ファンと共に育まれるお店の真価 nugu SUMMER MARKET 潜入ルポ

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