共感の先に生まれる新たな小売体験──「hours」がもたらす“newn流”共同購入の可能性
近年、小売店は単にモノを売る場所ではなく、コミュニティとしての色彩を強くしているように感じます。SNSの台頭に伴い、店とお客様のあいだに「共通の価値観」を共有し合う関係性が生まれているためです。こうした流れを受け、“共同購入”という概念にも新たな意味が付与されつつあります。
“友達とお得にショッピング”を実現するアプリ「hours」
株式会社newn(にゅ〜ん)が2020年9月にステルスで運営を開始し、先日正式リリースしたアプリ「hours (アワーズ)」は、まさにこの新しい文脈を体現するサービスといえます。「hours」は、掲載された商品をグループ購入(複数人での同時購入)することで、24時間以内に成立人数以上の友人や知り合いを集めれば、お得な価格で商品を購入できるしくみです。
初期の商品カテゴリとしては、日用品・アパレル・食品飲料・家電製品などを中心に取り揃え、独自の仕入れ先や提携企業を通じて、質が高く、お得な商品を拡充していく予定とのこと。ここで注目したいのは、単に複数人で買うから割安になるというだけでなく、“誰と買うか”が重要になっている点です。
共通の価値観が生む“熱量”と共同購入
SNSの発展は「共通の価値観」を持つ仲間と瞬時につながることを可能にしました。その結果、「あの人のおすすめなら買ってみたい」「同じ感性を持つ友達とお得に手に入れたい」という心理が生まれています。
いわゆる共同購入といっても、共感・価値観の共有が土台となると、ただの「割り勘」で終わらず、コミュニティとしての熱量が瞬く間に高まりやすいのです。
驚くべき初動:バイラルが生む大きなうねり
「hours」はリリース直後24時間で数千ユーザーが登録し、そのうち60%以上が実際にグループ購入を経験。さらに口コミ(バイラル)の効果が二次・三次へと波及し、用意していた商品の約70%が売り切れる状況に至りました。なかには、成立人数を50人と設定していた商品が完売するケースも。
この盛り上がりから見えてくるのは、単なる割引目的にとどまらず、**「一緒に買う楽しさ」や「同じ感性の仲間と共有する価値」**が大きな原動力となっているということです。
女性の購買行動がヒントに? “同時多発的”な盛り上がり
筆者は以前から、女性の購買行動には独特の“同時多発性”があると考えてきました。万人受けするものはむしろ敬遠しつつ、似たような価値観を持つ仲間とは“おそろい感”や“特別感”をシェアしたがる傾向があるように思います。
売る側からしても、「大量に売れなくても、必要な相手に一気に届く」ほうが生産性が高く、コミュニティとしてのつながりを深めながら、効率的に売り上げを伸ばせる可能性があるでしょう。
これからの小売を変えるかもしれない「hours」の挑戦
こうした背景を踏まえると、「hours」は新たな小売体験の先駆けとなるかもしれません。今までの“共同購入”という枠を超えて、共感とコミュニティによる「小売の新しい在り方」を示す可能性を秘めているのです。
誰と、どんな価値観を共有しながら買い物を楽しむか。そこを支援するプラットフォームが充実していけば、小売店のスタイルはさらに変化していくでしょう。筆者としては、この“newn流”共同購入に期待を寄せると同時に、今後どのように広がり、どんな文化を生み出していくのかを見守りたいと考えています。