2020年第1四半期の音楽配信売上は187億円超:ストリーミングが急伸【日本レコード協会】
日本レコード協会加盟各社が集計した2020年第1四半期(1~3月)の音楽配信売上は、前年同期比112%の187億5,600万円となりました。なかでもストリーミングの伸びが顕著で、曲を「所有」するダウンロード型よりも、サブスクリプションで膨大なラインナップから選んで聴くスタイルに移行していることがうかがえます。
【トレンドの変化】
- • 従来のように特定のアーティストの曲を購入して所有するよりも、定額制サービスで自由に音楽を聴ける時代へシフトしている。
- • これによりヒットの作られ方も変化し、今まで注目されていなかったアーティストにも光が当たる可能性が高まっている。
- • ヒットが分散する一方で、ユーザーは自分の好みに合ったアーティストと簡単につながり、適切な価値が交換される時代になっていくと考えられる。
売上データ内訳
ダウンロード(合計)
- • 数量:2,108万ダウンロード(前年同期比82%)
- • 金額:49億7,800万円(前年同期比80%)
1)シングルトラック
• 数量:1,931万ダウンロード(前年同期比83%)
• 金額:30億8,000万円(前年同期比81%)
2)アルバム
- • 数量:164万ダウンロード(前年同期比78%)
- • 金額:18億5,900万円(前年同期比79%)
3)音楽ビデオ
- • 数量:13万ダウンロード(前年同期比66%)
- • 金額:3,900万円(前年同期比67%)
ストリーミング(合計)
• 金額:134億700万円(前年同期比132%)
1)サブスクリプション/音楽
• 114億4,700万円(前年同期比130%)
2)サブスクリプション/音楽ビデオ
• 4億2,200万円(前年同期比173%)
3)広告収入/音楽
• 5億6,600万円(前年同期比264%)
4)広告収入/音楽ビデオ
• 9億7,100万円(前年同期比110%)
Master ringtones
• 概要
- • 楽曲の原盤(マスター音源)から切り出して作成した、いわゆる「本物の歌声」や「原曲そのもの」を着信音として利用できるコンテンツです。
- • かつては「着うた®」などとも呼ばれ、フィーチャーフォン(ガラケー)の普及期に大きな市場を形成していました。
- • スマートフォンへの移行やストリーミング型の音楽消費が中心になりつつある昨今、ダウンロード数や売上は減少傾向にあります。
• 数量:39万ダウンロード(前年同期比63%)
• 金額:4,200万円(前年同期比65%)
Ringback tones
• 概要
- • 電話をかけた側(発信者)が呼び出し音の代わりに音楽を聴けるようにするサービスです。
- • 着信者側が「この曲を流したい」という設定をしておくことで、かけた相手が普通の呼び出し音ではなく、設定された楽曲を聴く仕組みになっています。
- • Master ringtones(着信音)とは違い、“かける側が聴く音”という点が特徴です。
• 数量:392万ダウンロード(前年同期比79%)
• 金額:2億6,500万円(前年同期比80%)
• 数量・金額の前年比
- • 「前期比63%」「前期比79%」など、いずれも前年同期比を下回っているものが多く、特にMaster ringtonesの落ち込みが大きいことが分かります。
- • これは、ストリーミング型の音楽視聴やスマホの普及にともない、従来のダウンロード型コンテンツの需要が下がっていることを示唆しています。
• 依然として一定の需要がある
• 完全にゼロになるわけではなく、特にRingback tones(待ちうた®)は「79%」「80%」とMaster ringtonesよりはダウン幅が小さいため、いまだに根強い需要があると考えられます。
• 今後の市場動向
• スマートフォン時代に合わせて、音楽はサブスクリプションや動画配信サービスへシフトしつつありますが、特定のユーザー層には着信音や待ちうた®が継続して利用されている模様です。
• とはいえ、音楽消費全体の潮流は「ストリーミング中心」に大きく移行しており、こうしたダウンロード型サービスの市場規模は今後も徐々に縮小していくと推測されます。
【まとめ】
2020年1~3月期は、ストリーミングが大きく伸び、ダウンロードの減少をカバーする形で音楽配信全体の売上が前年同期を上回りました。音楽の「所有」から「定額制でアクセスする」消費スタイルへの変化に伴い、今後はヒットが分散し、新たなアーティストが注目される機会が増えることが予想されます。結果として、アーティストとファンがより自分好みの音楽で結びつく時代が到来していると言えるでしょう。