日本郵便 佐川急便 協業 ネット通販 拡大で 物流インフラの効率化
先日、佐川急便と日本郵便が連携をさらに強化することを発表 しました。両社は協業に関する基本合意を結び、記者会見を行いました。お互いの強みを活かせる 親和性の高い取り組み ではあるものの、気になるのは 「日本郵便ならではの個性」 です。では、今回の連携の具体的な内容を見ていきましょう。
1. 日本郵便 × 佐川急便、それぞれのインフラを活用
今回の協業のポイントは、大きく 3つ に分けられます。
まず 1つ目 は、日本郵便の「ポスト投函型配送」と、佐川急便の宅配ネットワークを組み合わせること です。日本郵便はもともと 手紙や小型郵便物の配送が得意 ですが、佐川急便には 「小型宅配便」のサービスがない ため、日本郵便のポスト投函の仕組みを活用することで、この分野の需要を取り込もうとしています。
2. 国際配送の強化——EMSを活用
2つ目 は、国際郵便サービス「EMS」を活用し、佐川急便の顧客にも提供すること です。日本郵便は 120以上の国・地域に配送可能な国際ネットワーク を持っています。この仕組みを 佐川急便の顧客が利用できるようにすることで、越境ECの需要拡大にも対応 できるようになります。
3. 佐川急便の冷蔵・冷凍インフラを日本郵便が活用
3つ目 は、日本郵便の弱点である 冷蔵・冷凍輸送の強化 です。日本郵便はこの分野ではまだ強みを持っていませんが、佐川急便の物流インフラを活用することで、冷蔵・冷凍配送を強化 し、日本郵便のユーザーに新たな選択肢を提供しようとしています。
この連携により、日本郵便と佐川急便は 互いの強みを補完し合い、新たな市場を開拓する可能性 を持っています。しかし、一方で 「日本郵便ならではの独自性」はどこにあるのか? という視点も重要になりそうです。
佐川急便と日本郵便の連携、その本質とは?
先日発表された 佐川急便と日本郵便の連携強化 は、互いの強みを活かし、より効率的な物流ネットワークを構築する狙いがあります。
日本郵便の ポスト投函型配送 を佐川急便が活用し、一方で日本郵便は 佐川急便の冷蔵・冷凍配送インフラ を利用することで、補完し合う形となっています。また、日本郵便が持つ EMS(国際郵便サービス) を佐川急便のネットワークに組み込むことで、越境ECの需要にも対応できる仕組みが整えられようとしています。
しかし、この動きを見ていると、語弊を恐れず言えば、日本郵便が単体で 「配送企業」としての個性を確立できているのか? という疑問が浮かびます。
日本郵便の個性とは? 小口配送インフラの課題
今回の連携の背景には、日本郵便が 小口配送(個人向けや小規模事業者向けの宅配便) において十分なインフラを持っていないという課題があると考えられます。
小口配送とは?
一般的に 小口配送 とは、小規模な荷物(80サイズ前後までの段ボールや封筒など)の配送 を指します。これはEC市場の成長とともに需要が急増し、現在の物流業界では 最も重要な事業領域 となっています。宅配便や宅配ロッカー、コンビニ受け取りといった ラストワンマイル配送 の進化も、この小口配送を支えるための仕組みです。
ヤマト運輸や佐川急便は、この 小口配送の分野で強固なインフラを持ち、長年の経験から効率的な物流システムを築いてきました。一方、日本郵便はもともと 手紙や郵便物の配送を中心とした業務形態 で、小口配送の分野では他社に後れを取っています。
物流に詳しい方々に話を聞くと、次のような指摘がありました。
「日本郵便はもともと手紙中心の企業で、小口配送の主流である 80サイズ以上の荷物の取り扱い にはあまり強くない。拠点は全国にあるものの、ラストワンマイルの配送インフラとしては十分ではない というイメージがある」
また、
「全国に郵便局や配送員を抱えているものの、小口配送の分野での基盤はヤマト運輸や佐川急便に比べて弱い」
言葉を選ばず言えば、日本郵便は 手紙配送の枠組みから抜け出せなかった歴史 が、現在のような 他社との連携を必要とする状況 を招いたのかもしれません。
国際物流の視点から見た日本郵便の立ち位置
この話をしていると、「ドイツポストのDHLとは違うよね」という意見も出てきました。
ドイツでは、かつて東西に国が分断されていた背景があり、「国家ですら分断される」 という危機感 を持っていたことが、DHLのような 強固な国際物流網の構築 に繋がったと言われています。一方、日本郵便は 「親方日の丸」的な発想 から抜け出しにくかったのではないか、という指摘もあります。
この違いは、国営企業としての成り立ちや歴史の違いが影響しているのかもしれませんが、ドライな視点で見ると、やはり 日本郵便は「単独での物流企業としての個性」を確立するのが難しい状況 にあるのではないかと感じます。
物流は「当たり前のインフラ」へ——企業連携の必要性が増す時代
いずれにせよ、日本郵便単体では 小口配送のインフラとしての弱さ を抱えています。そのため、ヤマト運輸の動向を見ながら 足元の弱さを補うために佐川急便と連携を組んだ という見方もできます。これは、小口配送のインフラ整備を後回しにしてきたツケ が、このような形で表れているとも言えるでしょう。
その視点で見ると、ヤマト運輸が民間企業として物流網を着実に構築し、その基盤を確立してきた戦略 は、非常に見事だと感じます。もちろん、その手法に賛否はあるかもしれませんが、結果として「日本郵便とは異なる強固な物流インフラ」を築いた ことは事実です。
これは、ネット通販の拡大に伴い、物流の定義そのものが再編のフェーズに入っている ことを示しているのではないでしょうか。たとえば、現在の物流は 配送拠点を経由する形 ですが、EC業界では 配送拠点を介さずに当日配送する新たなモデル も模索されています。今後、この分野においても さらに再編が進む可能性 は高いでしょう。
いずれにしても、ネット通販の需要が増加する中で、物流は より「当たり前のインフラ」 へと進化する必要があります。そのためには、単なるスピード競争ではなく、コストパフォーマンスを向上させ、伸びしろのあるEC市場を最大限活かす戦略が求められる のです。
結果として、企業の垣根を超えた連携が 今後ますます増えていく ことは間違いないでしょう。
今日はこの辺で。