楽天 “国内EC”好調 三木谷氏の“挑戦”の結果と未来 2021Q1 (決算)
今まで地道に積み重ねてきた“挑戦”が結実してきたのは間違いなく、追い風は吹いているが、投資がど未来にどう作用するか。先ほど、楽天グループ株式会社(以下、 楽天 )は 2021年第1四半期 決算 ( 2021Q1 )の発表を行い、売上収益は3915億円1300万円(前年同期比18.1%増)と明らかにした。第1四半期として過去最高の数値である。印象的だったのは、代表取締役会長兼社長の三木谷浩史さんが「カードはNO1、証券も1位に近づき、銀行はネット銀行1位」と自信を見せたところで、楽天市場他「 国内EC 」とネット系を強みに、経済圏を構築してきた“挑戦”の成果と見て間違いない。ただ、数々の投資が響いて373億円の営業損失であり、彼の新たな“挑戦”も含めて、そこを見据えて考えたい。
楽天 2021Q1 決算 発表 国内EC は堅調
楽天市場を筆頭に、楽天ファッション、ブックス、Rakuten24、ネットスーパー、ラクマなどから構成される「ショッピングEC」の流通総額は前年同期比33.9%増。ここにトラベル、ゴルフ、デリバリーなどを追加した「国内EC」流通総額も1.1兆円と前年同期比22.4%増である(ともに2021年第1四半期の数値)。
故に「国内EC」の売上収益は前年同期比27.4%増となり、営業利益は前年同期比19.8%増と高水準。営業収益の額は12.7億円で、これは物流関係などの投資7000万円も含んだ数字である。コアビジネスと言われる事業が堅調に推移した結果、赤字幅が縮小していると説明した。
楽天 2021Q1 決算 国内ECを支えたのは何か?
それを支える要因はいくつかある。まず利用者数の増加傾向。昨年同期比で「楽天市場」が16,4%増、「楽天ブックス」が22.6%増、「楽天ファッション」が47.9%増、「楽天西友ネットスーパー」が55.6%増という具合である。そこに加えて、1ユーザーあたりの購入額と購入頻度。購入額は前年同期比15.5%増、購入頻度は前年同期比15.9%増となっている。
さらにそれを下支えしているのは、彼らが掲げる経済圏である。それによりエンゲージメントが高まり「定着率」は73%(2020年第4四半期で購入した人が2021年第1四半期で購入した割合)。合わせて「クロスユース率」も39.4%(楽天市場とラクマなどを2021年第1四半期併用した割合)となっており、これらがお互いを引き上げあっているという状況である。
コロナ禍でキャッシュレス、デジタル利用の増加でフィンテックが伸長
フィンテック事業も好調で、楽天カードは2200万人の会員を突破し、コロナ禍でのキャッシュレスの流れが追い風となっている。カード事業は営業利益は12.5%増で2桁成長を遂げて、楽天市場での流通総額における楽天カード決済比率は66.8%にまで広がっている。また、楽天証券も営業収益が43.5%増と好調に推移している。
実感するのはお金の出入りをする部分をしっかり抑え、そこの部分でSPUによるポイント施策を絡めて、双方に好影響をもたらす流れが、奏功している。コロナ禍によって利用度合いが増加し、会社全体の収益に寄与しているということになる。ただ、冒頭にも書いた通り、楽天モバイルをはじめ、好調を背景に、積極的な投資を行なっていて、それが営業損失373億円という結果になっていると思われる。その部分を含めて、三木谷さんはどう思っているのか、その辺が気になるところである。
三木谷さんは追い風を背に挑戦の姿勢
今や楽天カードはクレジットカードではナンバーワンの地位にあり、かつ楽天証券も1位に近づいていて追い越せるだろう。楽天銀行はネットバンキングでは一位で将来的にはメガバンクと口座数で肩を並べる規模になる。デジタル環境と経済圏の強みをフルに活かして、様々な業種に楽天の存在感を見せている、と自信を示したのが、何を隠そう代表取締役会長兼社長の三木谷浩史さんである。
日本郵政との資本提携、特に物流への投資の必要性
この決算発表に先駆けて、彼は今後の展望についても話しており、いずれにおいても強気に、チャレンジする姿勢を鮮明にした。
まずネット通販に絡むところでは物流を含めて、この業界を発展させていく様子で日本郵政との業務資本提携の意義を述べた。国内ECが通年で3兆円規模になり、楽天として物流を他人事に考えられないから、自らで投資をしてそのジャンルに入っていき、0から全て自前でやる方向性も模索はしていた。
しかしながら、全国70%以上の地域をシェアをすることを考えると、コストがかかる。一方で時を同じくして、日本郵便は手紙が減少する中で、ネットビジネスの広がりとともに宅配を強化するフェーズにあった。だから、連携することは物流コストを合理化できる良い座組みであると胸を張ってみせた。
また楽天西友ネットスーパーにおいては冷凍をはじめとする低温度帯に関する部分の管理と配送の部分に関心を示した。まずは西友などの拠点を活用しながらネットスーパーの土台を作る。ただ、それでも全国津々浦々、カバーできるわけではないので、その仕組みをもとに地方に点在するスーパーとの連携をする。そうやって、リアル店舗の送客、DXを支援しながら、これらの生鮮食品的なものを全国に配達できる環境を整えるわけだ。生鮮食品の難しさもありながら、そうすることでしっかり実がとれると判断しているようだ。
次の好調を生み出すのはモバイルの今の“挑戦”と三木谷さん
昨今、話題のモバイル事業に関しては、今やもうモバイルはライフラインであると語気を強める。電話に限ることなく、コンテンツを見る、ラジオを聞く、決済も行い、さらに健康状態までチェックする。それなのに、容量を気にして使わなければいけなかったり、高額な支払いをする環境はマクロの経済効率としては良くない。そう言って“アグレッシブなプライシング”を提供する楽天モバイルの意義を述べた。それは基地局を使わない完全仮想化のモバイルネットワークなどを活用することで、十分に利益を出すことができると自信を見せたのだ。
ただ三木谷さんの意識はむしろその先に向いているように思えて、この携帯事業は、この日本の携帯事業に加えて、携帯プラットフォームの輸出の2本で成り立つことを明らかにした。輸出の部分は、つまり、それ自体で利益を作り、エコシステムに貢献していく事、そのものが他にはないので、そのビジネススタイルやそこにまつわるプログラムを海外に輸出していくことを意図している。
これは以前話していたことだが、AWSが自らのECの成長を通して、そこで活用するサーバーなどを外部にオープンにして、高収益を出した。その過程では、ウェブ事業の敷居を下げて、多くのウェブ事業が誕生して、それこそ、多くの賛同者が生まれたことで、高収益を作り出したわけである。それに近いことをモバイル環境でやろうというのだ。
国内ECが好調なことを受けて一層、投資への意欲が増しているように思える。以前、三木谷さん自身が株主総会で、自らの株主に「チャレンジがなければ、普通のインターネット企業に留まっていただろう」と振り返り、「これからもチャレンジするので見守っていて欲しい」と訴えかけたように、この追い風は楽天の三木谷さんを前向きな気持ちへと駆り立てている。その挑戦の踏み出した一歩は、どんな新しい追い風を呼び込むことになるのか注目である。
今日はこの辺で。