1. HOME
  2. event
  3. 催し
  4. きゃりーぱみゅぱみゅと「原宿、−3℃はじめました。」──涼しさは、街と人の“やさしさ”でできている

きゃりーぱみゅぱみゅと「原宿、−3℃はじめました。」──涼しさは、街と人の“やさしさ”でできている

この夏、原宿の街に新しい風が吹いている。それはエアコンの風でも、スプリンクラーの水でもない。「ちょっとでも快適に過ごしてほしい」──そんな想いから生まれた、“人の温度”を感じる風だ。名前は「原宿 −3℃はじめました。」プロジェクト。花王を中心に、東急不動産、地元商店街、行政など9つの企業・団体がタッグを組み、猛暑の原宿をまるごと“涼しく”する取り組みが始まった。同プロジェクトは、2025.7.17から8.3までの最も暑い時期に、原宿を巻き込んで、行われる。

 その象徴として登場したのが、アーティスト・きゃりーぱみゅぱみゅさん。原宿カルチャーを背負ってきた彼女は、いま、この街の「涼しさ」をどう感じているのか──。

プロジェクトの裏側とともに、その言葉をたどっていく。

第1章:「私も、正直、暑すぎて外出たくない日あります」──共感から始まった“涼の共鳴”

「原宿って、本当に暑くなりましたよね」

 きゃりーさんの第一声は、そんなひと言から始まった。プロジェクト発表の記者会見で彼女は、透け感のある水色の衣装をまとい、ブルーのカラコンにグラデーションヘアという、まるで“涼の精”のような装いで登壇した。

 「今日は“マイナス3℃”を意識して、“見た目から涼しく”をテーマにしました」と笑う姿が印象的だった 。

 ここ数年、原宿の夏はまさに“灼熱”だ。花王がまとめた気象庁のデータによれば、原宿の平均気温は10年前に比べて約3℃上昇している 。アスファルトの照り返しと人混みの熱気で、体感はさらに上がる。

 「原宿って、私もしょっちゅう来てるんですけど、夏は本当にきつくて……並ぶだけでも汗だく。子連れの方とか、旅行者の方が多いからこそ、“ちょっとひんやり”できる企画って、すごくありがたいなって思いました」

 彼女の言葉に呼応するかのように、このプロジェクトが立ち上がった。

第2章:「冷やすのは、気温だけじゃない」──“心までひんやり”のしかけたち

 「原宿 −3℃はじめました。」という名前に込められたのは、「数字ではなく、体感で涼しさを届けたい」というメッセージ。プロジェクトの舞台は、原宿のシンボル・竹下通り。

 アーチを水色に染め、目から涼しさを届ける演出。このキャラクターを手掛けたのもきゃりーぱみゅぱみゅさんである。名前を「ひえてい」という。まさに、これはその涼しさの入り口である。見事だなと思うのは、原宿の要所でさりげなく、企業の魅力を涼しさというテーマの中で伝えている点である。

 例えば、「Strawberry Fetish」では、日差しの強い時間帯に花王の冷却シート「ビオレ 冷タオル」を配布。汗だくの行列にも、ささやかな癒しを──そんな願いが込められている 。

 「WEGO 1.3.5」では試着室に汗ふきシートを設置し、服選びの快適さをサポート。

 そのほか、WITH HARAJUKUの地下1階には“冷感ベンチ”と“ひやしスプレー”を完備した休憩所。

さらに、ハラカドの屋上では打ち水イベントや、盆踊りまで用意されているという徹底ぶりだ。そこでは、ほらこんな風にかき氷を食べられる。

第3章:Stray Kidsと打ち水と──グローバルとローカルの“涼の交差点”

きゃりーさんのお気に入りは「謎解きバス」。

「バスって、車内は涼しいはずなのに、汗ってなかなか引かないんですよ。そこに冷却シート使って、謎解きできるなんて最高すぎます!」と目を輝かせていた 。

 このバスがつくのは「ハラカド」ってわけだ。ちなみに、外を一巡して、あまりの暑さに手を出したオリジナルメニューがこれ。

「rit. craft chocolate and coffee」という店。このお店のオーナーは、クリエイティブディレクターとしての感性を活かしながら、チョコレート。ビーントゥバー──カカオ豆の選別からチョコレートバーになるまでの全工程を、一つの工房やメーカーが一貫して手がけるこの製造スタイルを、魅力的なデザインとともに、より身近な存在にしてくれる。

 また、竹下通りでは、もうひとつの熱が走っていた。それが、K-POPグループStray KidsとビオレUVのコラボによるPOPUPストアだ。テーマは「太陽こそが、あなたのスポットライト」。

 店内には体験ブースとフォトスポットが設けられ、近隣では“打ち水グラフィティ”も展開。水をかけると、アスファルトにStray Kidsのロゴが浮かび上がる──という粋な仕掛け 。

「熱中症対策×推し活」という、これまでにないアプローチ。“涼しさ”を入り口に、原宿の街全体が“グローバルな舞台”に変わっていく様子が垣間見える。

きゃりーさんも、「原宿はずっと個性的なカルチャーの発信地。でもこうして“涼しさ”までエンタメになるって、やっぱすごい街だなって思いました」と語る。

第4章:「育ててもらった街だから」──きゃりーさんと原宿の“深いつながり”

 プロジェクトにおけるきゃりーさんの存在は、単なる“顔”ではない。彼女は言う。

「原宿って、私のキャリアの原点なんです。『もしもし原宿』っていうデビュー作に始まり、今回の『くるくる原宿』で“第2ステージ”に進んだ感じがしてるんです」

 プロジェクトテーマソング「くるくる原宿」は、出産後初の新曲。エレクトロサウンドで涼しげかつ踊りたくなる1曲は、街のいたるところで流れている。

View this post on Instagram

A post shared by Kyary pamyu pamyu (@kyarypappa)

 そんな彼女にとって、原宿は特別な街だ。ある日、原宿でヴィンテージの靴底を落とした彼女がSNSで呼びかけたところ、翌日、見知らぬ人が事務所に届けてくれた──そんな心あたたまる思い出も、彼女をこのプロジェクトに引き寄せた 。

第5章:未来の涼しさは、子どもたちとともに

 プロジェクトは、次の世代にも目を向けている。渋谷区の小・中学校で開催された「ひやします講座」では、花王社員が“首元を冷やす”仕組みをわかりやすく解説。

 子どもたちは実際に冷却シートを使いながら、熱中症対策を学んでいく。「このプロジェクトが本当にすごいのは、“商品を売る”だけじゃなくて、“社会を涼しくする”ところまで目が向いているところ」と、ある先生は話していた。

 体感−3℃。でも、実際はもっと大きなものを冷やしている。それは、「この街で過ごす人の心」だ。

「夏のお風呂って、軽視してませんか?」──小杉湯から届いた、やさしい答え

 そして、このプロジェクトメンバーに名を連ねる株式会社ゆあそび 関根江里子さんに僕はあえて聞いた。夏になると、湯船を避けがちになる。

正直に言うと、「シャワーで済ませれば十分じゃん」そう思う人も多いのではないか。

 すると、「夏こそ、ちゃんと汗をかける体をつくることが大事なんだよ」と、思いのほか丁寧な答えが返ってきた。実際、関根さんは、こんなふうに語り出したのだ。

「最近の若い方は、汗をかきにくくて、体に熱がこもりがち。そこから熱中症になるケースもあるんです。だから、お風呂にちゃんと入って、汗をかきやすい体づくりをしておくことが、じつは暑熱対策としてもすごく効果的なんですよ」

しかも、こう続く。

「ご自宅では面倒に感じるお風呂でも、銭湯だったら楽しく入れるという方も多いですし、それがきっかけで“お風呂っていいな”と思ってもらえたら嬉しい。とくに普段あまり湯船に浸からない方にこそ、体験してほしいです」

 なるほどな、と思った。

 涼を求めて入る場所で、じつは体を温めることが、外での涼しさにつながっていく。それって、ちょっと不思議で、でもすごく人間的な話だ。だから今夜は、湯船にちゃんと浸かってみようと思う。ほんの少しだけ、自分の“体温”に向き合うために。

 そして、さりげなく、その横には花王の冷感グッズがあるわけだ。

おわりに:「涼しい」には、想いがある。

「原宿 −3℃はじめました。」という言葉は、ただのキャッチフレーズじゃない。それは、“人と街が寄り添うための魔法”だ。冷却シート1枚。アーチの水色。アイシャドウの青。

──そのどれもが、「暑っっっ」に対しての小さな「共鳴」から生まれている。

歌に、絵に、とその共鳴をアーティスティックに束ねて、きゃりーさんは最後にこう言った。

「原宿って、やっぱり“面白いことが始まる街”なんです。

 だからこの夏も、ひとつのきっかけになるといいなって思ってます」あなたがこの夏、原宿でふと立ち止まって、涼しさとやさしさと、その中にエンタメを感じたなら──それは、誰かの本気がそっと届いた証かもしれない。

今日はこの辺で。

 

Current NEWS

“情報”を追う | 催し