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リアルへの回帰は本当に来るのか?2021年、小売とネット通販が今こそ備えるべきこと

2021年はどんな年になるのだろう――。コロナ禍が長期化し、一都三県に再び緊急事態宣言が発令された2021年初頭。ネット通販事業者である「エーデルワイスファーム」の野崎 創さんと話す機会があった。その際に野崎さんから語られた「年末には一気にリアル(実店舗)に戻っていくのではないか」という見立ては、デジタルシフトが加速する今だからこそ、逆に興味深く、考えさせられる内容だった。(本稿は野崎 創さんが司会を務める「connect」に筆者が出演し、対談を通じて得た着想をもとにまとめたものです。)

 「リアル回帰」が起こり得る2021年に、小売やネット通販事業者がいかに備えるべきか。野崎さんの視点を参考に、その要点を整理してみたい。

1. 2021年、リアル回帰をどう読むか

コロナ禍が始まって以来、ネット通販は追い風を受けて急速に市場が拡大している。実際、野崎さんの「エーデルワイスファーム」も約1.25倍の伸びを記録しているという。その背景には、

• もともとネットでの地盤固めをしっかり行っていた企業が、コロナ禍で一気に需要を取り込んだ

• 「先を見越して地道にネットを強化していた人の勝利」である

といった見方がある。

ただ一方で、野崎さんは「2021年の年末には、一気にリアルの需要が高まるのではないか」と話す。長い自粛生活への反動が、リアル店舗への関心を呼び戻す可能性は十分あるだろう。となると今後、ネット通販への需要が落ち着くシナリオも頭に入れておく必要がある。そうした変化に備えるためには、今何をすべきなのかが大きな焦点となる。

2. 今こそネット通販事業者がすべき「ファンづくり」

リアル回帰が起こったとき、ネット通販事業者はその分の売上が急に落ち込む恐れもある。だからこそ野崎さんが力説していたのは「今のうちからファンづくりに注力すること」だ。

単純に「売る」だけにフォーカスするのではなく、自社や自ブランドを好きになってもらえる仕組みをつくる。たとえば、

• SNSや動画などを活用して、自社のストーリーやメッセージを伝える

• オンラインでイベントを開催し、顧客と直接コミュニケーションをとる

• メルマガやファンクラブ的なコミュニティを整備して、リピーターを増やす

といった取り組みが挙げられる。

ネット通販に注力して成長できた企業は、コロナ禍が落ち着いた後も、その「熱量のある顧客」をどうつなぎ止めるかが勝負の分かれ目になる。ファンがしっかり根付けば、リアルでの展開や販路拡大においても大きなアドバンテージが得られる。

3. リアルとネットの融合で見えてくる可能性

ネットがこれだけ浸透した今でも、リアル店舗には「現場でしか味わえない体験価値」がある。今後はリアルとネットの融合をどう進めるかが鍵となるだろう。

  • ネットで情報発信を徹底しながら、リアルで共感体験を提供する
  • ブランドの世界観をリアルな場で演出し、オンラインからの集客を誘導する

こうした戦略が実を結べば、ネットで商品を売りつつ、リアルでも魅力的な体験を提供できる。コロナ禍が収束したら、逆にリアルの「場」を確保・活用し、新たな顧客体験を生み出すチャンスかもしれない。

4. 依存しない経営を目指して時代に適応する

2020年を通して多くの事業者が学んだのは、「一つの方法に依存する怖さ」である。かつては、人の流れを当てにしたリアル店舗の在り方が常識だったが、コロナ禍でそれがいとも簡単に崩れ去った。

ところが今度は、ネット通販だけに依存すると、コロナ後の世界で取りこぼす可能性も出てくる。したがって、

  • • リアルとネットの両面を使い分ける柔軟さ
  • • 地域との連携や新たなサービスとのコラボレーション
  • • 自社のメッセージを軸にしたブランド力の強化

が求められる。

たとえば原宿のような商業エリアでも多くの店舗が閉店しているが、街全体としては新しい業態が生まれるなど、変化の兆しもある。今後は「戻す」のではなく「進化させる」発想が必要で、ネットとリアルの双方を取り入れながら、より強固なビジネスモデルを築くことが重要だ。

5. まとめ:2021年は「関係づくり」がカギ

2021年には、コロナ禍の反動で一気にリアルへの動きが強まる可能性がある。だからこそ、今ネット通販が好調なタイミングで「顧客との関係づくり」に注力し、ファンを育てておくことが得策だ。

リアルとネットの両立を図りながら、自分たちが「本当に伝えたい価値」や「メッセージ」を発信していく。その取り組みに共感するファンを積み重ねていけば、将来的にどちらに舵を切っても、あるいは両輪で進めても、確かな支持を得られるだろう。

コロナ禍で失われたものは多いが、「気づいたからこそ取り組める施策」もまた少なくない。ネットとリアルを行き来しながら顧客との絆を強化し、進化を続ける企業こそが、2021年以降の小売・通販市場で飛躍していくのではないだろうか。

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