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アスクル、2021年5月期第2四半期決算──堅実さが際立つ一方、冒険心への期待も

アスクルの2021年5月期第2四半期決算は、新型コロナウイルス感染症の影響を色濃く反映した内容となった。当初は緊急事態宣言によるBtoB事業の落ち込みがあったものの、解除後には持ち直し、結果として同期間として初めて売上高2,000億円超えを達成している。要因としては、コロナ対策関連商品の需要が拡大したことに加え、自社が運営するBtoC事業「LOHACO」の損益改善が寄与したためだ。

また、EC利用の拡大に伴う梱包資材などの需要増も後押しとなり、「それまで想定していなかった形での需要」が生まれた点も、今期の特徴といえる。

BtoBとBtoCの両輪で伸長する売上

BtoC事業の代表である「LOHACO」は、前年同期比で約15億9,800万円増の256億5,100万円(同6.6%増)となった。その結果、アスクルの強みであるBtoB事業に加えて、BtoC合計でも前年比約20億9,200万円増の337億5,100万円(同6.6%増)を記録。売上高全体を底上げする形となった。

一方、ヤフーとの連携強化によって販促費や固定費を抑制したことで、売上高販管費比率は前年同期比0.1ポイント減少。販売費及び一般管理費は445億7,600万円となり、営業利益は66億3,300万円(同101.3%増)と大幅な増益を実現している。ここでは、利益率の改善を前面に押し出し、経営の安定性と効率化を強くアピールしている。

進むオリジナル商品の拡充とBtoC戦略

アスクルはもともと、BtoBを主力としながらもオリジナル商品の展開に注力してきた。売上高の約33%が自社オリジナル商品で占められ、1万点を超えるアイテムを持つという。これは同社がBtoB領域で“SPA(製造小売業)的”なポジションを確立してきたことを示している。

そうした流れはBtoCにも波及しつつある。近年の「暮らしになじむLOHACO展.com」では、日用品メーカー23社との共同開発商品を30点以上販売。オリジナル商品の比率を高めることで、BtoB同様に高い収益率と差別化を目指している。さらに、購買データを活用することで商品開発の精度を上げ、独自性を強化していく姿勢がうかがえる。

物流への投資とDXの加速

物流拠点を自社で保有していることも、アスクルの大きな強みだ。2022年8月の稼働を目指す「(仮)ASKUL新東京センター」には、約105億円の設備投資を行う。これにより在庫アイテム数は2.6倍、出荷能力は1.3倍となる見込み。商品の開発から顧客の手元に届けるまで、一貫したデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、ヤフーを含むZホールディングスグループのなかで直販の強みを発揮していく考えだ。

今後への期待と課題

今回の決算では、利益率の向上や堅実な設備投資の方針が目立つ一方、ヤフー傘下での安定志向が強調される印象もある。かつてのベンチャー気質がやや影を潜めていると感じる向きもあり、同じZホールディングス傘下のZOZOに見られるような独創的な試みに期待する声も少なくない。

アスクルはBtoB・BtoC双方のマーケットでオリジナル商品を軸に攻めつつ、物流強化やDX推進でさらなる成長を目指す段階にある。今後の戦略がどのように展開されるか、冒険心と安定感のバランスに注目が集まっている。

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