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全ての幻想はそれぞれの日常にある 蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠

 蜷川実花さんのフィルターを通して見ると、それは写真であり、映像であるけど、どこか自然を感じさせるもの。日常を意識しつつも、非日常への加工と調和が上手にとれていて、結果、受け手の心を動かす素敵な演出を醸し出している。虎ノ門ヒルズの情報発信拠点「TOKYO(トウキョウ) NODE(ノード)」では、今、「蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」 が行われていて、行ってみて思った。2024年2月25日まで開催中だ。

華やかなフィルターを通して見える世界

暗さと明るさの対比が印象的であり、入ると暗闇がある。

蜷川実花さん自身は、「今までの自分の経験値や感覚を全て集結させました」と語る。彼女曰く、映像インスタレーションが多いのだが、被写体はどこも何気ない日常を切り取ったもの。つまり、彼女は、自分の視点や見る角度がほんのちょっと変わるだけで、こんなにも世界は美しいんだ、と気づかせることを意図して、この場所を作り上げている。

先ほど、触れたように、暗闇を歩くと、パッと明るくなった。その先に、このような印象的なモチーフが並ぶ。透明感のあるモニターを通して、作品が流れるわけである。

また、その先にはミニシアターのようなスペースがあり、映像が流れる。その映像はどことなく、街の一面を切り取りつつも、彼女の感性のフィルターがかかって、二層仕立てで、現実と幻想を行き来しているような錯覚に陥る。

そして、さらに先へと進むと、細い廊下のような場所。ここすらも、リアルの東京タワーを巻き込んで、アートにしている印象。彼女の幻想的なアートはやや透明がかっていて、それにより、向こう側に東京タワーが透き通って見える。だから、これも先ほどと同様に、一つ一つの風景が何層にも見えて、リアルであり、ファンタジーなのだ。

空間すらも彼女の感性が支配する

そして、その先にはもっと大きなシアター。それは、広々とした空間を全て使って、蜷川実花ならではの躍動感のある映像がこんな風に流れるのである。

床には簡易的なソファが置かれ、寝転がって見る人の姿も。会場のスペースをフルに使えばこその体験である。

さらに、その先には、現実離れした可憐な夢のような世界が広がる。蜷川実花らしい、色使いによって花が咲き乱れており、そこに魅せられた来場者たちが皆、スマホを片手に、その幻想の中に身を置き、撮影するのである。

最後の最後、また、そこでは映像が流れ、ゆっくりと優しく流れる、自然の時の歩みを、僕らは目の当たりにする。それは、彼女らしく、透明感があって、色鮮やかで幻想的なフィルターをかけることによって生まれる、自然に対しての敬意。

僕らは実は、そんな現実に生きていて、だからこそ、面白い。アートを通して、蜷川実花さんは、それを伝える。僕らが暮らす世界が、人それぞれに楽しく切り開かれていて、全ての人にとって、魅力的な非日常が待っている。