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楽天 「 緊急停止命令 」 取り下げ と前日の慶大教授の見解

1. 公正取引委員会の動き

3月10日、公正取引委員会は、楽天による「送料込みライン」の施策について

• 出店事業者が「参加するかどうか」を自ら判断できるようになるのであれば、当面は緊急停止を求める必要性は薄いと判断

• 東京地方裁判所に申し立てていた「緊急停止命令」を取り下げると発表

ただし、今回の違反被疑行為(優越的地位の濫用など)の審査は継続するとしています。

2. 楽天のコメント

一方で楽天は、

「今後も店舗様とのコミュニケーションを深めながら進めていき、楽天市場の送料体系をわかりやすくしていきたい。新型コロナウィルスの感染拡大が予測しづらい状況のため、さらなる施策については状況を見極めつつ、決まり次第順次お知らせしていく」

とコメント。実施の進め方や時期は、社会情勢を踏まえて柔軟に判断していく姿勢を示しています。

3. 慶應義塾大学大学院法務研究科・石岡克俊教授の意見書説明会

当メディアでは3月9日、「公正取引委員会による楽天に対する緊急停止命令の申し立て」に関する、石岡克俊教授(慶應義塾大学大学院法務研究科)による意見書の説明会の内容を掲載しました。ここでは、以下の点が特に注目されました。

1. 公正取引委員会の「緊急停止命令」制度の位置づけ

• 独占禁止法第70条が根拠。

• 違法疑いのある行為を“直ちに止めないと回復困難な被害”が生じる場合に行う措置。

• もともとは「排除措置命令」前に時間がかかっていた(改正前は勧告・審判が必要だった)ため、仮処分的にストップをかける意味合いを持つ。

2. 70年の歴史での「緊急停止命令」の先例

• 中部読売新聞事件など、合計6件が存在。

• 多くは激しい「顧客争奪戦」の中で不可逆的な状態(新聞購読の長期契約など)が生じ、直ちに停止しないと取り返しが難しいケースが認められている。

3. 今回の楽天の場合の「不可逆性」

• 送料込みラインはまだ本格的に実施されていない段階で、既に緊急停止命令を申し立てていた点への疑問。

• 合併のように一度決定すると簡単には元に戻せないケースとは異なるため、緊急停止命令が必要なほどかどうかは疑問だという見解。

4. 「優越的地位の濫用」について

• 独占禁止法2条9項5号ハに基づく「不利益を相手方に押し付ける行為」があったかどうか。

• 楽天がシェアを高めるために出店店舗を圧迫し不当な負担をかけているかどうかが争点。

• しかし楽天自身は出店事業者が売上を上げることで手数料収入を得るビジネスモデルであるため、出店者を不利にする行為に合理性があるのかは疑問。

4. 総括:プラットフォーム規制をどう考えるか

公正取引委員会の狙い

• テクノロジーの進化により、Google・Apple・Amazon・Facebookなどの巨大プラットフォームが市場を独占し、消費者利益が損なわれるリスクが懸念されている。

• 今回の楽天への対応も、そうした“プラットフォーマー規制”の流れの一環と見ることができる。

一方での疑問

• 法改正後は「排除措置命令」までの手続きが迅速になっているため、以前のように仮処分的措置として緊急停止命令を多用する必要があるのか。

• 送料込みラインの施策を「不可逆的な損害が生じる」というほど深刻に扱う意義はあったのか。

今後の展開

• 公正取引委員会の審査は引き続き続けられるため、司法の場で「優越的地位の濫用」に該当するかどうかが判断される。

• 結果次第では、巨大なオンラインモールの在り方や、EC業界におけるプラットフォーマーと出店者との関係が大きく見直される可能性がある。

5. まとめ

今回、公正取引委員会が「緊急停止命令」の申し立てを一時的に取り下げたことで、楽天による送料込みライン施策は、当面は出店者の選択制を前提に進められる見通しです。ただし、優越的地位の濫用疑惑に関する審査は続くため、楽天が最終的にどのような判断を受けるか、引き続き注目されます。

ネット通販はもちろん、テクノロジー分野全体にとっても、プラットフォーマーと利用者・取引先との関係性をどう公正に保つかというのは重要なテーマです。今回の事例が、今後のプラットフォーム規制を考える上での大きなきっかけになる可能性は十分にあるでしょう。

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