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利益は増えたのに、最終利益は減った──Amazon決算に見えた、AI時代の商売を支える企業への変化

米Amazon.comが2026年10月29日に発表した第3四半期決算は、一見すると不思議な結果だった。営業利益は前年同期比61%増え、営業利益率は過去最高の13.9%に達した。それなのに、最終的な純利益は減少している。さらに、AIへの巨額投資によって、フリーキャッシュフローは大幅なマイナスとなった。好調なのか、それとも苦しいのか。数字を一つずつ読み解くと、Amazonが今、何に投資し、どのような企業へと変わろうとしているのかが見えてくる。

営業利益61%増、なのに純利益は減少。その理由は何か

2026年10月29日、米Amazon.comが2026年第3四半期(7〜9月期)の決算を発表した。売上高は2,019億ドル。前年同期の1,802億ドルから12%増加した。営業利益は281億ドルで、前年同期の174億ドルから約61%増加。営業利益率は9.7%から13.9%へと上昇し、過去最高となった。

これだけを見れば、好調な決算である。

ところが、最終的な純利益を見ると、前年同期の212億ドルから207億ドルへと減少している。1株当たり利益も1.95ドルから1.89ドルへ下がった。なぜ、営業利益が大幅に増えたのに、純利益は減っているのだろうか。

その理由は、前年の決算にある。AmazonはAI企業Anthropicに投資しており、2025年第3四半期には、その投資に関連して95億ドルの税引前評価益を営業外損益に計上していた。

つまり、前年の純利益には、本業で稼いだ利益とは別に、投資による大きな評価益が含まれていたのである。今年は、その前年の特殊な利益が比較対象になっているため、営業利益が増加しても、純利益は減少するという結果になった。

ここで注目したいのは、どちらの数字が正しいかではない。そもそも、見ているものが違うということだ。営業利益は、事業そのものがどれだけ利益を生み出しているかを示す。一方、純利益には、投資の評価損益や税金なども反映される。

今回のAmazonは、純利益こそ減少したものの、本業で利益を生み出す力は大きく向上している。ただし、投資家の期待に応えられたかという点では、また別の見方がある。売上高と1株当たり利益は市場予想を下回り、決算発表後の時間外取引では株価が下落した。

つまり、事業の収益力が改善したことと、市場が決算をどう評価するかは、必ずしも一致しないのである。

Amazonの利益を支えるのは、もはや通販だけではない

では、Amazonはどの事業で利益を増やしているのだろうか。今回の決算では、Amazonの事業を北米、海外、AWSの三つに分けて見ると、その構造がよくわかる。北米事業の売上高は1,129億ドル、海外事業は431億ドル。そして、クラウドサービスを提供するAWSは460億ドルだった。

売上高では、北米と海外を合わせた小売中心の事業が圧倒的に大きい。

しかし、営業利益では様子が変わる。北米事業が87億ドル、海外事業が16億ドルだったのに対し、AWSは178億ドル。全社営業利益281億ドルの約63%をAWSが占めている。

しかも、AWSの売上高は前年同期比39.3%増。約5年ぶりの高い成長率となった。この数字から見えてくるのは、Amazonが単なる通販会社ではなくなっているということだ。もともとAmazonは、インターネットを通じて商品を販売する企業として成長してきた。品揃えを増やし、配送を速くし、買い物を便利にする。そのために技術と物流へ投資を続けてきた。

そして、自社の事業を支えるために培ってきた技術が、やがて他の企業にも提供できるサービスとなった。その代表がAWSである。

ここが興味深い。Amazonは、商品を販売することで顧客との接点を広げる一方、企業がサービスを動かすための仕組みも提供している。消費者に商品を届ける事業と、企業の活動を支える事業。異なる二つの領域が、それぞれAmazonの成長を支えている。

その意味では、今回の決算はAWSが好調だったというだけではない。Amazonが長年積み重ねてきた投資が、異なる形の収益源を生み出していることを示しているのである。

AIへの巨額投資。稼いだ利益を、次の成長へ振り向ける

もう一つ、今回の決算で見逃せない数字がある。それは、フリーキャッシュフローである。Amazonの直近12カ月の営業キャッシュフローは1,683億ドル。前年同期時点から29%増加した。

一方、フリーキャッシュフローは424億ドルのマイナスとなった。前年同期時点では148億ドルのプラスだったから、大きな変化である。営業活動で現金を生み出す力は強まっているのに、設備投資などを差し引くと、大幅な資金流出になっている。

その背景にあるのが、AI関連の設備投資だ。

Amazonは2026年、現金ベースで約2,200億ドルの設備投資を見込んでいる。さらに決算説明会では、2027年の設備投資が2026年を大きく上回る見通しも示された。なぜ、それほどの資金を投じるのだろうか。AIを動かすためには、膨大な計算能力が必要になる。データセンターを建設し、半導体やサーバーを確保し、電力や通信環境を整える。企業がAIを利用するほど、その裏側にあるインフラへの需要も増えていく。

Amazonが投資しているのは、AIのサービスそのものだけではない。AIが社会や企業活動の中で使われるための土台である。

これは、かつてのEC事業とも重なる。Amazonは、商品が売れてから配送網を整えるのではなく、より速く、より多くの商品を届けられる環境を先につくってきた。

今度は、それをAIの領域で進めているように見える。もっとも、巨額投資が必ず利益につながるとは限らない。設備が十分に使われるのか、競争が激しくなる中で投資を回収できるのかという問題も残る。

だからこそ、今回の決算では営業利益の増加と同じくらい、フリーキャッシュフローの悪化にも注目する必要がある。現在の収益力を高めながら、将来の成長に向けて資金を投じる。その両立をAmazonがどこまで実現できるのかが、これからの焦点となる。

AWSの成長が示す、AIを「使う」時代への移行

AWSの売上高が39.3%も増加した背景には、企業によるAI活用の広がりがある。ここで考えたいのは、AIの利用がどのように変わっているかということだ。生成AIが登場した当初、多くの人は文章を書かせたり、質問に答えさせたりするところから使い始めた。

しかし、企業がAIを本格的に利用しようとすると、求められるものはそれだけではなくなる。社内のデータを参照し、複数のシステムをつなぎ、日々の業務を実行する。そうした仕組みを安全かつ安定して動かすための環境が必要になる。

Amazonが提供する「Amazon Bedrock」は、企業が生成AIを活用するための基盤サービスである。今回の決算発表では、Fortune 500企業による同サービスへの支出が前年同期の約7倍、処理されたトークン量が約17倍になったことも明らかにされた。

また、AIエージェントの構築や運用を支える「Amazon Bedrock AgentCore」の利用も広がっている。この変化は重要である。AIが単に人の質問に答える道具であるなら、利用する人が増えることが成長の中心になる。

しかし、AIが企業の仕事の一部を担うようになると、業務の数だけ新しい利用機会が生まれる。受発注、在庫管理、顧客対応、分析、システム開発。さまざまな業務にAIが入り込めば、それらを動かすための計算資源やサービスも必要になる。

AWSの成長は、AIが話題として注目される段階から、実際の仕事を支える仕組みへと広がりつつあることを示す一つの材料である。

ただ、ここでも大切なのは、AIを導入すること自体が目的ではないという点だ。企業にとって本当に重要なのは、AIを使うことで何が変わり、どんな価値を生み出せるのかということだろう。

Amazonは、そのための環境を提供する側に立っているのである。

配送と買い物のAI化。ECの競争も変わっていく

一方で、Amazonの原点であるEC事業も変化を続けている。今回の決算発表では、2026年第3四半期にPrime会員へ当日または翌朝までに届けられた商品が15億点を超えたことが示された。

また、超高速配送サービス「Amazon Now」は世界450以上の都市・町に広がり、注文点数は前年同期の10倍になったという。配送を速くすることは、Amazonが長年取り組んできたことである。

ただ、ここで考えたいのは、配送時間が短くなることによって、消費者の買い物がどう変わるのかという点だ。これまでネット通販は、欲しい商品を注文して、届くまで待つものだった。

しかし、必要になった商品がすぐ届くようになれば、消費者は買い物のために時間を確保したり、あらかじめ購入を計画したりする必要が少なくなる。これは、実店舗とネット通販の役割にも影響する。

さらに、AmazonはAIを使った買い物支援にも取り組んでいる。「Alexa for Shopping」は、過去12カ月で4億人以上の顧客に利用されたという。会話を通じて商品を探したり、ギフトリストをつくったり、定期購入を調整したりする機能が広がっている。

これまで消費者は、検索窓に商品名を入力し、一覧から商品を選び、比較して購入していた。ところが、AIが買い物を支援するようになれば、消費者が自分で検索し、比較する作業の一部をAIに任せることになる。

すると、商品を選んでもらうための競争も変わる。単に検索結果の上位に表示されることだけではなく、消費者が何を求めているのかをAIが理解したとき、その選択肢として商品が提示されることが重要になるかもしれない。

これは、Amazonだけの話ではない。ネット通販を運営する企業にとっても、これまでの売り方や商品情報の伝え方を見直すきっかけになる。

Amazonが目指すのは、商売を成立させる環境そのもの

今回の決算を読み解くと、Amazonの取り組みには共通するものがある。ECでは、消費者が商品を選び、購入し、受け取るまでの環境を整えている。出店事業者に対しては、AIを使った在庫管理や価格設定など、商売を進めるための仕組みを提供している。

そしてAWSでは、企業がAIを活用し、新しいサービスを生み出すための基盤を提供している。それぞれ異なる事業でありながら、共通しているのは、人や企業が何かを実現するための環境をつくっているということだ。

ここに、Amazonの変わらない部分と、変わっている部分があるように思える。顧客にとって便利であることを追求する。その考え方は変わらない。

しかし、顧客が求めるものは変わっていく。欲しい商品を簡単に購入できることから、必要な商品がすぐに届くことへ。そして今は、AIが仕事や買い物を支援し、これまでできなかったことを実現できる環境へと広がっている。

Amazonは、その変化に合わせて事業の形を変えてきた。

そして今回の決算が示したのは、現在の事業で利益を生み出しながら、次の時代に必要となる環境へ巨額の資金を投じている姿である。もちろん、それが成功するかどうかは、まだわからない。

AIへの投資が大きくなるほど、その投資に見合う需要を獲得し、利益として回収する責任も大きくなる。だからこそ、営業利益が増えたという数字だけでも、純利益が減ったという数字だけでも、Amazonの現在地は捉えきれない。

重要なのは、何によって利益を生み出し、その利益や資金を何に振り向け、次にどんな価値を生み出そうとしているのかということだ。商売とは、今ある商品を売ることだけではない。

顧客が何を求め、何に困り、どんな環境があれば新しい行動を起こせるのか。それを考え、必要な仕組みを整えることもまた、商売の一部なのである。Amazonの決算は、企業が今どれだけ稼いでいるかだけでなく、これから何によって必要とされる存在になろうとしているのかを考える材料を与えてくれる。


参考資料

  • Amazon.com, Inc.「Third Quarter Results」(2026年10月29日)
  • Amazon Investor Relations 第3四半期決算説明会資料
  • Amazon.com 2026年第3四半期決算説明会

公式発表:https://www.aboutamazon.com/news/company-news/amazon-earnings-q3-2026-report

決算説明会:https://ir.aboutamazon.com/events/event-details/2026/Q3-2026-Amazoncom-Inc-Earnings-Conference-Call/default.aspx

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