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ファンが企業を育てる時代へ──カンロのCX戦略に学ぶ“愛されるブランド”のつくり方

甘さの向こうにある“気持ち”を届けたい

「良い商品」さえ作れば、売れる時代がありました。でも、時代は変わりました。今、私たちが向き合っているのは、“誰かの心に残る”ということの本質です。

カンロ株式会社・常務執行役員 マーケティング本部長の内山妙子さん。先日、マーケティングweekのセミナーで、話してくれたその語りはとても真っ直ぐ。迷いながらも覚悟を持ち、会社と“人”の関係を見つめ直してきた歩みを感じさせるものでした。

テーマは、「商品」ではなく「関係性」。企業とお客さまが“出会い”、そして“育ち合う”──そんな未来を、カンロは本気で考えていました。

ダサい、でも品質はいい──10年前の“直視”から始まった挑戦

 かつてのカンロは、「品質はいいけど、ちょっとセンスがないよね」と言われていたそうです。それは外の人たちからだけではなく、社員自身の声でもありました。「一流企業になりたい」と願いながらも、世の中の評価と向き合う勇気が必要だった──。

 その突破口として始めたのが、2012年にオープンした直営店「ヒトツブカンロ」でした。“見た目”を徹底的にこだわり、F1層の心をくすぐるデザイン。ギフトに選ばれる飴を目指して、品質の高さとセンスを掛け算にした。

 結果、今では東京駅の「定番手土産スイーツ」ランキングで常連入りを果たし、行列が絶えない人気ブランドに育ちました。評価を他人任せにせず、自ら手を動かして“見せ方”を変えたことで、ブランドは確かに一歩進んだのです。

コロナ禍で見つけた、届けるための「手段」と「覚悟」

 “店舗が閉まった。飴が売れない。でも、欲しいと言ってくれる声がある。”コロナ禍で直営店が休業に追い込まれたとき、内山さんは即断しました。「オンラインショップを、3ヶ月だけでも立ち上げよう」と。

 アンケートフォームで注文を受け、エクセルで管理し、銀行振込で決済。まるで手づくりのようなEC。でも、その緊急対応は多くのファンの想いに応え、「キャンディーでもECで売れる」ことを証明しました。そこからデジタル推進チームを立ち上げ、マーケティング戦略の再構築へ。

 届ける手段を選ばず、でも“届けたい想い”を手放さなかった。その姿勢に、企業としての誠実さがにじみ出ていました。

“いいね”より“わかる”がほしい──ファンがファンを育てる仕組み

 やがてカンロは、ただのECではなく「ファンマーケティング」へと踏み出します。会員制コミュニティ「カンロポケットクラス」では、飴の裏側にある開発秘話や、製品に込めた思いを共有し、ユーザーの投稿や投票がブランドを育てる循環が始まりました。面白いのは、ファンの“濃度”を見える化したこと。

 コアファンからライトファンまでを分析し、それぞれに合わせた発信を行うようにしたことで、「キャンディーを月に4つ以上買う人が45%」という成果も見えてきた。評価ではなく“理解”されるブランドへ。カンロは、「知ってくれてる人」に“話しかける”コミュニケーションを、ひとつずつ丁寧に重ねています。

ブランドの人格を磨く──企業を「好き」になってもらうために

「どんなに売上があっても、ファンがいなければ一流じゃない」内山さんがそう言い切った時、会場の空気がふっと変わった気がしました。売上ではなく、信頼。規模ではなく、共感。カンロは「人格のある企業」になることを目指し始めています。

 “お母さんが子どもに「これはカンロだから大丈夫」と手渡すようなブランド”──それが、デジタルCX戦略の理想の姿です。ポッドキャストやアプリ開発、イベントやリアルなタッチポイントも活用しながら、「人となり」を伝える努力を続けている。

それはまるで、“人間のような会社”になろうとしているかのようです。

まとめ:一流とは、「愛されること」かもしれない

「一流って、なんだろう?」

 問いの答えを探す旅は、まだ続いているようです。でも、内山さんの話を聞きながら、こう思いました。

商品が主役の時代から、関係性が主役の時代へ──。

 そのとき企業に必要なのは、飾った言葉でも、煌びやかなキャンペーンでもなく、自分たちの“素の姿”をちゃんと見せて、信じてくれる人に寄り添い続けること。

チャーミングで、真面目で、ちょっと不器用だけど、誠実なカンロ。そんな企業に、つい“好き”と言いたくなるのです。

 今日はこの辺で。

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