D4DRセミナー「AIと共創する学びの未来」で語られた中学3年生起業家のビジョン
「AIと共創する学びの未来」と題したD4DRのセミナーに登壇したのは、なんと現役中学3年生・近藤にこるさん。EdFusionという教育系スタートアップを立ち上げ、AI教育の普及に取り組む彼女。同世代の声なき声をすくい上げながら、大人顔負けのビジョンで未来を語ります。今回は、D4DRセミナーでのその力強いプレゼンテーションを、細かく紐解きながら紹介します。
1. 起業のはじまり
起業は「授業」からはじまった
近藤にこるさんが起業の世界に興味を持ったのは中学1年生の時。学校の総合学習で「起業家プログラム」に出会い、「自分のアイデアが形になる面白さ」に目覚めました 。
ステーションAIとの出会い
その後、名古屋にあるスタートアップ支援施設「ステーションAI」との縁が生まれ、学生起業家向けプログラム「STACS」に参加。ここで特別賞を受賞し、さらなる可能性に気づきました 。
学内に「起業部」を立ち上げ
学びを深めたいという想いから、中学校で「起業部」を立ち上げたのです。最初は2人から始まり、静まり返った教室で一人話す日もありました(笑)。しかし、やがて下級生が司会やプレゼンに加わるまでに成長。生徒主体で運営されるユニークな部活動になっています 。
2. AIとの出会いと「教育」への視点
生成AIとの衝撃的な出会い
あるAIイベントにモデルインターンとして参加したにこるさんは、生成AIの革新性と可能性を目の当たりにします。「人間とAIの関係性を、どう築くかを考える必要がある」との思いが芽生えました 。ここで、AIとにこるさんの接点が生まれたのです。
教育をアップデートする使命感
AIに触れる中で、自分の将来だけでなく「これからを生きる世代の学び方」そのものに問題意識を持ち始めます。AIに仕事を奪われるのではなく、共に可能性を広げる学びが必要だというビジョンのもと、EdFusionを設立しました 。本当に起業を果たしたわけです。
3. 実践する「AI×教育」の現場
自治体や学校と連携
創業からすぐに、衆議院議員会館での登壇を果たし、学校や自治体の関係者と連携。生成AIの授業を学校現場で実施するという挑戦も実現させました 。
自ら授業を届ける
文化祭では、AI関連イベントの導入を提案。今年は全国の学校に向けて、自らAI授業を届ける構想を進行中。これまでに20回以上の講演やワークショップを重ね、対象も中高生から社会人、海外まで多岐に渡ります 。
AIは「自己表現」のツール
にこるさんにとって、AIはただのツールではなく「自分を表現するための手段」。資料作成や英語学習、趣味のクライミングとの掛け算など、AIは彼女にとって創造性を広げる相棒です 。
4. 子どもが主役の社会を作る
子どもに発言の場はあるか?
にこるさんは、社会における子どもの発言機会の少なさを課題とします。防災や地域課題に関して「協力したい」と思う子どもが多数いる一方で、実際に機会があるのは1割未満という現実に着目 。
メタバース×教育で挑戦の場を
そこでにこるさんが開発しているのが、メタバース型教育プラットフォーム「BTTFRYベース」。技術を学び、課題を探究し、メタバース上でプレゼンまでを完結する“挑戦の循環サイクル”を実装しようとしています 。
教える側へ──学びの循環構造
BTTFRYベースでは、学んだ子どもが次に「教える立場」になる仕組みも内包。挑戦は無料で提供し、企業からの協賛によって運営費を確保。大人が学び、子どもが羽ばたく「逆転構造」のモデルです 。
5. 世界へ──AIバ博と次のステージ
大阪万博に向けた「子どもAIバ博」
この構想を実現する第一歩として、メタバース企業「子どもが国」と連携し、5万人規模の「子どもAIバ博」を大阪万博の最終フェーズ(10月予定)で開催予定。子どもたちが社会課題に取り組むワークショップを企画中です 。
SDGs・地方創生とも接続
このモデルは、防災だけでなく、地方創生や教育格差、社会参画といった多様な課題とも接続できるポテンシャルを持ち、SDGsやEST(Education for Sustainable Thinking)にも直結する発想です 。
結び──「中学生であること」が力になる
にこるさんは「中学生という立場だからこそ、内側から学校や社会を変えられる」と話します。同じ目線で感じる課題、同じ立場で行動できる仲間。その特権を活かして、教育の未来を静かに、しかし確実に塗り替えようとしています。
「AIと共創する学びの未来」は、テクノロジーの話にとどまりません。そこには、子どもが主役になる社会、その可能性が確かに映っていました。ちょっと一度、取材してみたいな。