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プラザ合意から40年──シニア資産こそ、未来の内需エンジン

1985年、ニューヨークのプラザホテルに集った先進5カ国(G5)が交わした協定──それが「プラザ合意」です。

当時のアメリカは、巨額の貿易赤字に悩まされていました。その相手国の筆頭が日本。アメリカはドル高を是正するため、主要国に協調してドル安を誘導するよう働きかけました。これに各国が応じ、日本円は急騰。1ドル=240円台から、わずか数年で120円台へ。円高は日本の輸出産業に大きな打撃を与え、「外需頼み」の限界を突きつけました。

この流れを受けて、日本政府と企業は「内需拡大」に舵を切らざるを得ませんでした。住宅投資や消費刺激策が進められ、その後のバブル景気へとつながっていきます。プラザ合意は、日本経済にとってひとつの大きな転換点でした。

再び揺れる為替と輸出、突きつけられる構造転換の必要性

2024年現在、日本の輸出の柱である自動車の対米輸出額は6兆261億円。これは堂々たる数字ですが、一方でアメリカでは再び関税強化の動きが見られ、為替政策も含めた外圧が強まりつつあります。

まさにトランプ政権下で打ち出された関税政策は、かつてのプラザ合意と似た環境を生み出しつつあります。

同じように、再び問われているのが「このまま外需に依存してよいのか?」という根本的な問いです。

ここで改めて「内需拡大」に目を向けたとき、注目すべきはシニア層が保有する巨額の金融資産です。

65歳以上が握る現金・預金、なんと626兆円!

個人が保有する金融資産は2021年時点で約2,000兆円。そのうち、65歳以上の高齢者が保有する現金・預金は約626兆円にのぼります。

これは2024年度の政府予算(112兆円)の約15倍。さらに、対米自動車輸出額(6兆円)の約100倍というスケールです。

仮にこのうちの10%が市場に回ったとしたら──。それだけで国内経済に与えるインパクトは計り知れません。

それでもお金が使われない現実──「死ぬ前が一番お金持ち」

ではなぜ、これほどの資産が使われずに眠っているのでしょうか?

経済ジャーナリスト・萩原博子さんは著書の中で「死ぬ前が一番お金持ち」という言葉を用い、高齢者の貯め込み傾向を皮肉交じりに指摘しています。

団塊世代を中心とするシニア層は、将来不安や年金制度への不信感から、消費よりも「貯める」行動を選びがちです。結果として、豊かな老後を楽しむ前に亡くなる人も多く、人生の後半に資産が活かされていないという実情があります。

鍵は「安心して使える社会」と「心が動く消費体験」

このお金を市場に流通させるには、2つの視点が不可欠です。

ひとつは「安心」。医療、介護、年金など、将来への不安を軽減する制度設計やサービスがあることで、ようやく財布の紐が緩みます。

もうひとつは「実感」。ただ節約するだけではなく、趣味や旅行、学び直しなど、心を動かす消費があれば、人は自然とお金を使います。

地域に根ざしたサービス、共感を生む商品開発、シニア同士のコミュニティなど、誰かとつながりながら「意味あるお金の使い方」ができる場の創出が求められます。

現代のプラザ合意は「為替」ではなく「お金の使い方の再合意」

1985年、世界経済のバランスを整えるために結ばれたプラザ合意。

それから40年──2025年の今、日本が必要としているのは、為替政策の協調ではなく、「貯めたお金をどう使うか」に関する再合意なのかもしれません。

外需依存から脱却し、内需を育てていく。その鍵を握るのは、今も豊富な資産を持つシニア世代です。

彼らの心を動かすモノ・サービスを提供できるかどうか。それがこれからの日本経済の未来を決めると言っても過言ではありません。

突破口は、意外と近くにあるのかもしれません。トランプ関税によってもたらされた圧力が、むしろ国内市場に目を向ける絶好のチャンスになっている今、シニア層に寄り添った新しいサービス設計が、日本再生のカギを握るのではないでしょうか。

今日はこの辺で。

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