死をポジティブにデザインする:棺桶デザイナー布施美佳子の「夢と希望の最期」
今日、4月14日は、なんの日かご存知だろうか。実は、良い死の日である。死を「暗く、避けたいもの」と捉えるのではなく、「生き方の延長線」としてポジティブに見つめる人が増えている──。そんな時代に、日本唯一の棺桶デザイナーである布施美佳子さん(GRAVETOKYO)は、“人生の最期にこそ、夢と希望と喜びを”という思いを胸に、棺桶をデザインし続けている。
Deathフェスで語られたその哲学からは、弔いの価値観が変化する今、私たちがどう「死」と向き合い、「生」を祝うかのヒントが浮かび上がる。
ライフスタイルとしての“弔い”をデザインする
布施さんが語ったのは、「今の時代、弔いもライフスタイルの一部であるべき」という思想。仏壇やお墓も、従来の形式にとらわれず、インテリアとして生活に溶け込む存在になってきているという。「キャンドルホルダーでも、クリスタルでも、自分が“これで眠りたい”と思えるものなら、それでいい」と布施さん。形式よりも、自分らしさが大切だという彼女の視点は、送る側だけでなく、送られる側の幸福をも尊重している。
キャラクター葬で“好き”と最期をつなぐ
布施さんが今取り組んでいるのは、キャラクターとのコラボ棺桶の展開。背景には「好きなキャラクターと共に旅立ちたい」という今の60代の願いがある。「その世代は、子供の頃に“買ってもらえなかった”キャラに強い憧れを持っている」と彼女は言う。バンダイナムコでの新規事業経験を活かし、“キャラクター葬”という新しい市場を築こうとしている。
「お別れ」は、想像以上に“希望”を生む
ある時、余命を告げられた方から依頼され、たった2日で棺を製作し納品したという布施さん。驚いたのは、その方が「自分の最期が楽しみになった」と語り、なんとその後回復したこと。「もちろん偶然もあるけれど、“これに入れる”というワクワクが生きる力になったのかもしれない」と布施さんは語る。“死”が“希望”に変わる瞬間を、彼女は幾度も目にしてきた。
家族だからこそ、知らないことがある
布施さんが問題提起するのは、「家族葬」がもたらす“知らないまま終わる危うさ”。「家族こそ、本当は一番知らない存在かもしれない」。仕事仲間や友人など、故人の“外の顔”に触れる機会がなければ、その人の全体像を知ることはできない。「生前葬」のように、本人の声で人生を締めくくる場を作ることも、今後ますます重要になるだろう。
死をもっと自由に、もっと自分らしく
GRAVETOKYOが掲げるコンセプトは、「人生の最後にこそ、夢と希望と喜びを」。その一言に、布施さんのすべての行動の原点が込められている。棺桶を“もの”としてではなく、“メッセージ”として届ける彼女の姿勢は、「死=終わり」ではなく、「死=祝福の転換点」と捉える新しい文化の幕開けを感じさせてくれる。