メルカリ FY2025.6 2Q業績速報とメルカリShopsの成長戦略
売上成長率と取引高の動向
2024年下期(2024年7~12月)のメルカリ連結売上収益は941億6100万円と前年同期比+1.9%の増収となりました。流通取引総額(GMV)は前年同期比+5%程度の緩やかな成長に留まり、月間アクティブユーザー数(MAU)は前年同期比で3%減と伸び悩んでいます。これらの数字から、フリマアプリ事業の国内市場は成熟が進み、ユーザー数の頭打ち傾向が見られ、GMVの大幅な拡大が難しくなっていることが伺えます。
一方で、前年同期比わずか+5%のGMV成長に対し売上収益の伸びが+2%(ポイント費用の会計処理変更前で+4%)とやや低いのは、ポイント還元分を売上から控除する会計基準への変更や収益構成の変化によるものです。つまり、メルカリの取引高自体は横ばいに近いものの、手数料収入など売上計上方法の調整により表面的な増収率は抑えられています。
コスト構造の変化
利益面では大きな改善が見られました。2024年下期の営業利益は114億1300万円と前年同期比+45.9%と大幅増益を達成しています。営業利益率(IFRSベース)も約12%強となり、前年から大きく向上しました。さらに調整後コア営業利益率では39%に達し、特別要因を除けば事業の収益性は非常に高い水準です。
この利益率改善の背景には、コスト構造の見直しと効率化が挙げられます。北米事業においてはマーケティング費用の効率化や固定費の見直しを進め、不採算事業へのリソース投下を抑制しました。組織縮小ではなく収益性の高いプロダクトへ人員・予算を再配分する形でコスト削減を図り、これにより米国事業の損失幅が大幅に縮小しています。実際、赤字が続いていた米国事業は2024年12月単月で黒字化を達成するまでになりました。
利益率の改善
また、国内外での広告・マーケティング投資を見直し、費用対効果を高めました。特に会計基準の変更により、一部のポイント付与費用を売上収益から直接控除する方式に切り替えたことで、販管費上の広告宣伝費が減少し、投資効果の透明性が向上しました。過度なクーポン・ポイント施策を抑制しつつユーザー獲得・活性化を図る戦略に転換し、利益率の底上げに寄与しています。
加えて、米国マーケットプレイスの手数料体系を購入者側負担から再度出品者負担に戻す料金モデル変更を実施したところ、取引数が持ち直し、収益基盤が安定しました。また、「返品すり替え」など不正取引への対策を強化したことでマーケットの健全性が向上し、安心感から取引単価が上昇したことも利益率改善に寄与したと考えられます。
主要セグメント別のパフォーマンス
国内CtoCマーケットプレイス事業(メルカリ本体)
日本のフリマアプリ事業は引き続きメルカリの中核を占めていますが、取引高の成長は一桁台に留まっています。暖冬による冬物商品の売れ行き遅れや一部不正取引の影響もありましたが、アプリホーム画面の刷新などプロダクト改善策で徐々に取引量は持ち直しています。
メルカリShops・BtoC領域
フリマアプリ内で事業者が新品商品を販売できる「メルカリShops」は、前期の流通額が前年の約2.7倍と急成長を遂げた領域です。低成長に直面するCtoC事業を補完する役割を果たしつつあり、今後の成長ドライバーと位置付けられています。
メルカリShopsの今後の業績への影響
メルカリShopsの成長は今後のメルカリ業績にポジティブな影響を与える可能性が高いです。
今後のBtoC取引拡大によってGMV成長率を+10%前後まで高めることを目標としています。将来的には広告枠販売や有料オプション機能などで収益化を進める可能性もあり、EC市場における「第三の柱」として売上・利益に貢献することが期待されています。
思うに、メルカリShopsは初期費用・月額固定費が0円で、販売手数料は商品代金の10%。参入障壁が低いことが利点として考えられます。BASEのような手軽さでありながら、モールのような集客力を持つという感じでしょうか。ただ、その分、商品の広がりが出た時に、品質面ではその分、チェックをしていく必要性がありそうですが、まずは成長を優先させた格好でしょう。
EC事業者がメルカリShopsを活用する視点
メルカリShopsは、低コストで販路拡大が可能なプラットフォームとしてEC事業者にとって魅力的な選択肢となっています。若年層・フリマユーザーへのリーチ、在庫処分・アウトレット品の販売、顧客とのコミュニケーション強化など、柔軟な運用が可能です。
また、Amazon・楽天と並ぶマルチチャネル戦略の一環として活用する店も出てくると思われ、その動向は気になるところです。
今日はこの辺で。