GINZA SIXが追求するユニークな体験価値―ラグジュアリーと体験の融合が生む未来
銀座の中心にそびえ立つ「GINZA SIX」は、単なるショッピングモールではなく、特別な「目的地」として存在感を放っています。その背景には、商品そのものだけでなく、訪れる人々に「体験」という新たな価値を提供しようという大胆な発想があります。2025年1月に「ファッションweek」で行われた近藤保彦社長の講演では、GINZA SIXが目指すラグジュアリーの再定義と、日本ならではの商業施設の未来像について語られました。その内容をもとに、私自身の考えも交えながら、彼らが追求する「体験価値」の本質を紐解きます。
ラグジュアリーの新定義――体験が人を動かす
かつて「ラグジュアリー」といえば、高価なジュエリーやバッグ、毛皮といった物質的な豊かさが中心でした。しかし、近藤社長が語るように、現代のラグジュアリーは「体験」によって再定義されています。GINZA SIXでは、アートや文化との融合を通じて、訪れる人々の心を動かす取り組みが展開されています。
例えば、屋上庭園での季節ごとのインスタレーションや、クリスマスシーズンのスケートリンクは、日常では得られない特別な体験を提供しています。
さらに、これらの体験をSNSで共有する仕組みを取り入れ、多くの人々と感動を共有する文化を醸成しています。
思うに、日本の商業施設がこうした「体験価値」を追求するのは非常に理にかなっています。日本が誇る潔癖さ、職人技の光る丁寧さ、そしておもてなしの精神は、世界で通用する強みです。
GINZA SIXの取り組みは、これらの日本的な価値観をラグジュアリーとして昇華させ、訪れる人々に特別な時間を提供する絶好のモデルだと感じます。
次世代を引き込むマーケティング戦略
講演では、顧客層の変化についても触れられていました。かつて銀座は中高年層が主な顧客層でしたが、現在では20代から40代が全体の約7割を占めています。
この若年層の支持を得た理由の一つが、SNSやポップアップストアといった新しいトレンドを取り入れたマーケティング戦略です。
変な話だけど、これも比較的海外では若年層でも富裕層と思える存在が日本よりも多いように感じますから、年齢層の若返りは、海外を巻き込んでやる方が良いでしょう。
GINZA SIXでは、訪れるたびに新しい発見がある空間づくりを徹底しており、リピーターの多さがその成果を物語っています。また、ラグジュアリーブランドの旗艦店を数多く誘致し、個々のブランドが持つ世界観を最大限に体感できる店舗設計も、顧客の心を掴むポイントです。
つまり、ラグジュアリーブランドが一堂に集まることで生まれる相乗効果には大きな可能性があります。それぞれのブランド価値が引き立つだけでなく、そこにアートやカルチャーが融合することで、銀座という街全体が魅力的な「目的地」になっているのではないでしょうか。
地域との共生と未来への展望
GINZA SIXの取り組みのもう一つの柱が、「地域との共生」です。能楽堂でのイベントや盆踊り大会など、銀座という街の文脈を活かしながら、地域全体の価値を高める活動を行っています。また、子ども向けの体験型イベントやSDGsをテーマにした屋上庭園のプログラムなど、次世代へのメッセージ性も強く感じられます。
こうした取り組みを聞くと、やはりGINZA SIXは単なる商業施設に留まらず、銀座という街の新しい形を提案しているのだと感じます。日本が持つ文化や伝統を現代的なラグジュアリーの文脈で表現することは、他国には真似できない強みではないでしょうか。
世界に発信する「日本のラグジュアリー」
GINZA SIXの目標は、世界有数のデスティネーションモールになることです。近藤社長は、日本国内だけでなく海外にも視野を広げ、世界中の人々に「日本のラグジュアリー」を発信することの重要性を強調していました。実際、ラグジュアリーブランドの旗艦店を集めることで、訪れる人々に唯一無二の体験を提供し、富裕層にもアピールする仕組みを整えています。
それで、このような取り組みこそが、別に、GINZASIXに限らず、今後の日本にとって必要不可欠な方向性なのだと感じます。というのも、日本人自身の消費が伸び悩む中、海外の富裕層を取り込むことで、経済を活性化させることが求められているように思うから。
そして、それを実現する鍵が、日本の持つ「職人技」「おもてなし」「文化的洗練」を最大限に活かしたラグジュアリー空間です。
日本の未来を照らすGINZA SIXの挑戦
GINZA SIXが追求するのは、「物を売る場所」ではなく、「感動を提供する場所」です。その取り組みは、日本が誇る潔癖さや丁寧さ、そしておもてなしの心を軸に、世界に通用するラグジュアリー体験を創り上げる挑戦です。
国内外の富裕層に付加価値のあるサービスを提供し、彼らの心を満たす場所として機能することで、日本の経済が少しずつ豊かになる。その結果、日本人の生活や給料が向上し、その豊かさがまたGINZA SIXへと還流していく。そんな循環を、私はこの施設の取り組みから期待したい。
もちろん、これは一朝一夕で実現できる話ではありませんが、GINZA SIXが示している方向性は、日本が未来に向けて進むべき道を教えてくれているように感じます。訪れる人すべてに「特別な体験」を提供する場として、これからも挑戦を続けてほしいと願っています。
今日はこの辺で。