円安で加速する「越境EC」最前線――イーベイ・ジャパン「2024年第1四半期レポート」から読み解く国際市場の今――
世界最大規模のオンライン・マーケットプレイス「eBay(イーベイ)」で、日本のセラーが海外のバイヤーに商品を直接販売する“越境EC”市場が大きな盛り上がりを見せています。イーベイ・ジャパン株式会社は2024年1~3月期の越境EC取引データをまとめたレポートを公開し、円安による価格競争力や日本製品への信頼感、さらに個人輸出や副業としての越境EC参入が加速している実態を明らかにしました。この記事では、本レポートのポイントを整理しながら、今まさに起こっている“越境EC”のトレンドを分かりやすく解説します。
越境ECが拡大する背景:円安・国際配送・日本製品への信頼感
イーベイ・ジャパンによると、日本のセラーの海外販売(越境EC)が顕著に伸びている要因は大きく以下の5点に集約されます。
1. 円安による価格競争力
日本円が海外通貨に対して安くなっていることで、日本の商品は海外バイヤーにとって割安感が高まり、購買意欲が高まっています。
2. 国際配送の進化
DHLやFedExなど国際クーリエサービスの利用により、アメリカなど主要市場へ国内配送並みに早く商品が届けられる仕組みが整ってきました。
3. 日本の優れたカスタマーサービス
丁寧な包装や素早いコミュニケーションといった日本ならではのサービス品質が、海外バイヤーから高く評価されています。
4. 中古品需要とサステナビリティ
環境への配慮意識が高まる中で「日本の中古品」への需要も増加。特に状態の良い中古品には人気が集まっています。
5. イーベイの支援ツールの普及
公式配送サービス「SpeedPAK(スピードバック)」や多国展開ツール「eBaymag(イーベイマグ)」など、新規参入セラーでも海外販売をスムーズに行えるサポートが充実してきました。
第1四半期の取引金額トップカテゴリと成長ランキング
イーベイ・ジャパンのレポートでは、2024年1~3月の取引額ランキングは以下の通りとなりました。
- • 1位:レディース アパレル&バッグ ブランド小物
- • 2位:時計・パーツ&アクセサリー
- • 3位:アニメアート&キャラクターグッズ
一方、成長率トップは「自動車パーツ」「デジタルカメラ」、そして大きく盛り返した「スニーカー」もランクインしています。
円安による“高額商品の伸び”という全体トレンドがある中で、旧車パーツやフィルムカメラなど、ニッチな分野でも需要拡大が見られるのが特徴です。
カテゴリー別販売動向:何が売れている? なぜ売れる?
1. コレクティブルズカテゴリー
• アニメ関連グッズ・トレカ
ポケモンカード人気は継続しつつ、『ONE PIECE』や『ドラゴンボール』関連の商品需要も急上昇。特に鳥山明氏の訃報報道後には、追悼や作品への再注目が売上に直結しています。
• レトロゲーム・日本刀
レトロゲームは海外にもコレクターが多く、日本刀は海外ドラマ『SHOGUN』などの影響で世界的な関心が高まっていることが背景となっています。
2. カメラカテゴリー
• デジタルカメラ・ミラーレス需要増加
旅行再開の流れを受け、コンパクトデジタルカメラやミラーレスカメラが好調。
• フィルムカメラも再人気
特にオーストラリアなど一部の国ではフィルムカメラ愛好家が増えており、ツールを活用してターゲット国に直接販売できることが大きなメリットです。
3. 自動車パーツカテゴリー
• 旧車パーツが大幅に伸長
海外では「ワイルド・スピード」シリーズなどの影響で日本製旧車の人気が根強く、足回り部品や駆動系部品などの需要が止まりません。
• 軽トラック需要の波及
アメリカでは軽トラックがブーム化し、補修用パーツにも注目が集まっています。
4. ライフスタイルカテゴリー
• ゴルフグッズの盛り上がり
若者のカジュアルゴルフブームが広がり、日本製品や中古クラブなどの需要が増加。
• キッチン用品も好調
インバウンド需要で人気となった日本製キッチン用品が越境ECでも注目を集めています。
5. ファッションカテゴリー
• 円安で高額商品が好調
時計やジュエリーなど、海外バイヤーにとって割安感のあるハイエンドアイテムが大きく売上を伸ばしています。
• ブランドバッグ・スニーカーも人気
エルメスやルイヴィトン、シャネルなどのラグジュアリーブランドに加え、日本ブランドのスニーカー(アシックス、オニツカタイガーなど)も世界で高い支持を得ています。
イーベイ・ジャパンの新施策と今後の展望
イーベイ・ジャパンは、昨年導入した「SpeedPAK(スピードバック)」や「eBaymag(イーベイマグ)」、さらに「真贋保証サービス」によって、多くの日本セラーの海外進出を後押ししてきました。
2024年度は、これらのサービスに加え、ワケあり品をディスカウント販売する「Refurbish(リファービッシュ)プログラム」の本格提供を予定しています。商品の状態に合わせた価格設定が可能となるため、多様なセラーが参入しやすくなるでしょう。
【結び】
円安や国際配送インフラの向上、そして日本製品への根強い人気を背景に、越境ECはさらに加速していく見通しです。副業として個人輸出を始める人が増えているのも、この流れを象徴しています。イーベイ・ジャパンが公開した「2024年第1四半期 越境ECレポート」は、こうした最新のトレンドを押さえるうえで必見の内容といえます。日本のセラーが世界市場でどのような可能性を秘めているのか、そして円安や各種支援ツールがもたらすメリットは何か。これらを理解すれば、越境ECのビジネスチャンスを逃すことなく捉えることができるでしょう。
SpeedPAK(スピードバック): https://www.ebay.co.jp/speedpak/detail/
eBaymag(イーベイマグ): https://ebay.co.jp/ebaymag
Refurbish(リファービッシュ)プログラム: https://www.ebay.com/b/eBay-Refurbished/bn_7040708936
越境ECの今に注目が集まる時代、今後もイーベイ・ジャパンのレポートは海外販売動向を把握する上で大きな助けとなるはずです。国際市場への挑戦を考えている方は、ぜひ最新情報をチェックしてみてください。