“LYPマイレージ”が示すLINEヤフーグループの新たな方向性──オフラインとオンラインをまたぐ購買データ活用
1. はじめに
LINEとヤフー、PayPayが新たに提供を開始したマイレージ型の販促サービス「LYP(エルワイピー)マイレージ」。
これまでは「国内物販eコマース取扱高No.1」を目指すなど、ネット中心の展開が印象的でしたが、今回の施策は“リアルとネットをまたぐ購買体験の向上”に注力している点が注目されます。単なるポイ活や値引き合戦ではなく、オフラインとオンライン両方のデータを活用するという、LINEヤフーグループならではの強みが存分に生かされています。
2. 「LYPマイレージ」とは?
「LYPマイレージ」は特別なエントリーや登録が不要で、対象商品を購入するだけで自動的にマイレージ(購入金額)がたまるサービスです。
- • 対象商品を探して購入
- • オフライン(店舗)購入:支払い方法はPayPay
- • オンライン購入:「Yahoo!ショッピング」
- • 各商品ごとに設定された一定額を購入すると、PayPayポイントなどの特典が自動的に付与される。
ユーザーは「LYPマイレージ」の画面上で自分の購入金額の進捗や特典の付与状況をリアルタイムに確認可能。煩雑な登録手続き不要で参加できる点が最大の特長です。
3. リアル×ネットで購入金額を合算、データを一元管理
「LYPマイレージ」では、同じ対象商品をオフライン(実店舗)と「Yahoo!ショッピング」の両方で購入した場合、その購入金額を合算できます。
この合算にはYahoo! JAPAN IDとPayPay IDの購買データをひも付ける必要がありますが、それによってLINEヤフーグループはユーザーのリアルとネット双方の購買行動を把握できるようになるわけです。
これは、従来のようにオンラインとオフラインの購入がバラバラに管理される課題を解決し、一体となった顧客体験を提供する仕組みを作り出しています。
4. 今後はLINE公式アカウントとも連携予定
「LYPマイレージ」は、今後参加企業のLINE公式アカウントとも連携を予定。
ユーザーの購買履歴を活用して、LINE上での情報発信やお得なクーポン配信などが行われる見込みです。
すでに国内屈指のユーザー数を誇るLINEと連動することで、さらに便利でパーソナライズされた買い物体験が期待できます。
5. いま、この新展開が意味するもの
LINEヤフーグループといえば、かつてはEC領域での“日本一”を目指し、大規模キャンペーンやポイント還元を前面に打ち出していました。しかし今回の「LYPマイレージ」では、
- • オンラインとオフラインのデータを連携し、ユーザー行動を多面的に把握する
- • ID・決済・コミュニケーションツールを横断して利用できる環境を整備する
- • ユーザーが能動的に登録せずとも自然に特典を受け取れるUXを提供
といった彼らの強みを最大限に生かす方向へシフトしつつあります。これは、企業主体の「ポイント還元合戦」から、ユーザーの体験を軸にしたサービス設計へ切り替えた姿ともいえるでしょう。
オフラインとオンラインの垣根が徐々に溶けつつある*今の時代”において、購買データを一元化・可視化してユーザー体験を向上させる本サービスは、企業にとってもユーザーにとっても大きな価値をもたらすはずです。
参考記事:“国内物販eコマース取扱高No.1”を目標にするのをやめた理由