資金調達とヤマト運輸連携で攻めの姿勢を鮮明にする「食べチョク」
ビビッドガーデンは、ジャフコをリードインベスターとし、マネックスベンチャーズ、VOYAGE VENTURES、デライト・ベンチャーズ、NOWといった既存株主から総額6億円の第三者割当増資を実施した。同社が運営する生産者直送のオンラインプラットフォーム「食べチョク」は、今回の資金調達を機に、農家や生産者の課題解決に向けて本格的に動き出す。また、生産現場の出荷業務効率化を目的としてヤマト運輸との連携にも着手。攻めの姿勢をいっそう鮮明にしている。
「食べチョク」とは
「食べチョク」は、生産者が自ら育てた野菜や果物、魚、花き(観賞用植物)などを直接消費者に届けるためのオンラインプラットフォームだ。生産者が収穫の瞬間を写真に収めて「食べチョク」に出品すれば、その思い入れやこだわりをダイレクトに消費者に伝えられる。価格設定も生産者自身が行うため、単なる価格競争に陥りにくく、「作り手の熱意」が付加価値として評価されやすい特徴をもつ。
さらに、「食べチョクコンシェルジュ」や「食べチョクフルーツセレクト」といった定期便サービスも提供。ユーザーの嗜好に合わせて、生産者とのマッチングを行う仕組みを整えている。こうしたサービスを通じて、消費者と生産者との間で長期的な信頼関係を築くことを目指している。
なぜ今、資金調達が必要なのか
日本の農業従事者の平均年齢は67歳を超え、従事者数は減少の一途をたどっている。高齢化や後継者不足による廃業リスクは深刻な課題だ。ビビッドガーデンは「食べチョク」の仕組みをより多くの生産者に早期に利用してもらうことで、こうした課題解決を図りたいと考えている。そのために必要な拡大やサービス強化を実現するため、6億円の資金調達を実施した。
調達した資金は、以下の用途に充てられる見込みだ。
- 1. 新規顧客獲得のためのマーケティング強化
- 2. 開発人材・幹部人材の採用強化
- 3. 物流サービスレベルの向上(食べチョク物流構想への投資)
ヤマト運輸との連携――「食べチョク物流構想」
今回の出資を背景に、ビビッドガーデンは「食べチョク物流構想」を始動すると発表。2023年9月頃からヤマト運輸とのシステム連携を開始し、「食べチョク」サイトとヤマト運輸のデータを接続する。これにより、生産者は以下の業務をワンストップで行えるようになる予定だ。
- • 出荷指示の取得
- • 伝票発行
- • 配達状況の確認
煩雑になりがちな受注・出荷業務を効率化できるため、生産者の負担軽減が期待されている。伝票発行方法は主に以下の2種類が用意されるなど、細部にわたって使いやすさへの配慮がなされている。
- 1. ヤマト運輸が印字済みのピッキング・出荷用伝票を生産者に届ける
- 2. 生産者自身でデータ入力済みの伝票を印刷する
物流効率化による生産者・消費者双方のメリット
物流業務の効率化が進むと、コスト面の改善にもつながる。ビビッドガーデンは、ヤマト運輸との連携を通じて「食べチョク特別送料」を設定する予定だ。たとえば、関東発・関東着60サイズなら通常送料845円程度のところ、食べチョク特別送料550円(税別)で配送できるようになる。安価な配送料は消費者にとって魅力となり、生産者にとっては販路拡大の後押しになる。
今後の展望
日本の農業は、高齢化や担い手不足による厳しい現状に直面している。そうした状況を打破する一手として、ビビッドガーデンの「食べチョク」は、生産者と消費者をダイレクトにつなぐプラットフォームの強化と、物流面の改善に取り組む。今回の6億円の資金調達とヤマト運輸との連携は、まさに攻めの一手。農家や漁師、生花農家などの一次生産者が新たな販路を築き、持続可能な事業として成長していくために、今後もサービス拡充を進めていく見通しだ。