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LINE Yahoo! PayPay も本腰入れて経済圏注力へ ZHD 2023年3月期第1四半期(決算)

どこの企業も一様に注力する部分が近しくなってきたように思う。先ほど、Zホールディングスは2023年3月期第1四半期決算発表を行った。eコマースの存在感が増しており、その背景にあるのはポイントをベースにした経済圏ということになっていくのだろう。モールは店を集めて集客するという役目を終えて、経済圏となって新たな顧客を呼び込む、大きくも新しいフェーズに入ったことを意味している。

ZHD 2023年3月期 決算 経済圏の色彩強く

1.ポイントを本格的に自らの企業価値に繋げる

ポイント経済圏は聞き慣れた言葉である。けれど、実はヤフーはあくまで「購入機会の創出」とだけ位置付けていたからなのか「企業内での相乗効果」という部分でポイントを見ていなかったように僕は受け止めている。

だから、TポイントではなくPayPayポイントを作り、そこに合わせて、2022年10月から、LINE、PayPay、Yahoo!Japan(ヤフー)のID連携を行う。ポイントが新たに加わり、そこで、LINEとの連携を密にする。ポイントを軸にした経済圏をここで、再構築しようということである。それをこの決算発表では、強調していたように思う。

業績について見てみると、売上収益は3,905億円(YoY +4.6%)、調整後EBITDAは865億円(YoY +0.2%)とそれぞれ小幅ながら、増収増益を果たしている。セグメント別の業績に関しても、下記の表の通りでコマースが存在感を示している。

2.コマースの内訳

コマースの内訳を見てみると、下記の通りである。物販ECが前年同期比4.3%増ということで、一定の成長が見られ、アスクル、ZOZOなどとの相乗効果が果たすものである。特に、PayPayモールにこれらのモールを出店させて、良質なユーザーと引き合わせをして、そこで継続利用を促した結果であると見ていいだろう。

しかも、今回から、海外ECもeコマース取扱高に入れている。これは、うまい。海外との接点がリアルでは薄いからだ。コロナ禍のリアルでのインバウンド減少の影響を、ネット通販は吸収している。そして、さらに、今は円安の動きがそこに拍車をかけている。だから、その勢いを、決算発表に活かそうというものであろう。

ただ、やや冷静に見れば、コマース事業では、これまではアスクルやZOZOとの連携を経て、常に、活況に湧くイメージが出ていたのに比べれば、落ち着いてきた。

コロナ禍の落ち着きが、リアルへ流れるという傾向は彼らに限らず、一定の影響が出ていることは言うまでもない。この点、彼らは正直に、Yahoo!ショッピングは国内モールでは第三位という部分もあり、一位二位よりもそのバリューが低い分だけ、影響を受けやすかったのではないか、と分析しているようだ。

3.インフラの強化を意識し始めてきた

この信用部分を得られるようにするべく、顧客満足度を高めることが急務である。それで、今度は必然的に、インフラとしての強化を図っていて、それが施策にも現れている。例えば、「優良配送」がそうだ。

つまり、ユーザーへの最短「お届け希望日」が「注文日から2日以内」、出荷遅延率が一定水準未満という条件を満たした店舗の商品を、優良配送と見なし、アイコンを表示させるものである。これに対応する店舗は、ヤフーとしても推奨する方針を示している。要は、専用アイコンを表示する商品に対して掲載の場所を優遇しているのだ。

それに対して、あれ?と思った人はいるのではないか。かねてより「PRオプション」で検索順位を上げるなどをしてきた。本来であれば、PRオプションを利用するほど、ヤフーの取り分が増えるはずだ。なのに配送を強化する理由は、その顧客満足度により、リピート率が上がるからである。結果、経済圏としての土台を作る上で、そちらの方が重要である、と判断しているからなのである。

さて、そういう意味で、インフラを整えて、継続利用の機会を生み出し、経済圏としての土台を作った上で、IDを連携させる。そこにポイントを持ち込んで、回遊させることで、さらにリピート利用を促すわけで、他の経済圏の動きに近しくなっているというのは、そういう意味である。

4.彼らなりにLINE +ECで独自カラー

また、彼ら独自の動きとしては、LINEを活用したeコマースである。LINE GIFTでは、LINEのトークをする延長で、商品を送りあう仕組みで、下記の通り、YOY82%増という成果を見ている。

そこに加えて、今後期待したいのは「マイスマートストア」という自社EC。自社ECはそのお客様との関係構築が難しいところを、LINEの公式アカウントを通じて、お客様との接点を設けることで、成果につなげるものである。

勿論、既存店舗がやるのもありだが、PayPay加盟店がこの仕組みを使って、リアルに限らない売上を作ることも大事だろう。そういう動きを通して、従来のeコマース企業との差別化ができて来れば、彼らの経済圏も少し違った様相が見えてきそうに思う。

経済圏強化の流れが加速

1.PayPayも金融的色彩が強く

ただ、先ほどから話している通り、全体の大枠の戦略は各経済圏に近いものになっていて、彼らの注力しているPayPayにも変化が見られている。

なるほどと思ったのは、PayPayはあくまでも決済という手段であるという事。それらが利用手段にとどまらず、より付加価値を持つためには、カード利用の推奨も意図した。決済手段にとどまらず、カードローン、リボ払いの金利収入など、金融としての色彩を強めていく必要性があって、それで、PayPay直下にカード社を移管するわけである。

必然的に、業界トップの楽天カードと争うことになる。ただ、彼らが強調していたのはプラスチックのカードに関心があるのではなく、もっと現実的に、先ほど触れたような、金融としての利用価値である。決済手段だけにとどまらず、PayPayとしての影響力をもっと高めるために、決済手段を強みに、このジャンルにもより深く入っていくということである。

2.今後の成り行きは?

こうなってくると、いかにデイリーユースを生み出すか、であろう。楽天はその土台を、モバイルという端末に据えた。そこでの固定利用で、楽天のイメージを植え付けて、自然と楽天の利用機会を増やそうとしている。では、結局、ヤフーの場合、大事になってくるのは何だろう。結局、僕は、「メディア」という強みであるように思う。

いうまでもなく、「Yahoo!Japan」や「LINE」のアプリを毎日、開くユーザーが多いはずである。また、スマホ決済で「PayPay」を「使う」ユーザーも多い。彼らはスーパーアプリと話していたけど、今こそ、メディアとしてのコンテンツ力を高めて、利用機会を増やし、ここから経済圏に繋げて、いかにeコマースなどでの利用機会を増やしていけるか、ということになるのではないかと思う。

強みをどう派生させるかがデジタルの真骨頂。今、彼らに求められているのは、自分達の強みへの理解とそれを伸ばす知恵だと思う。あとは、他の経済圏同様にインフラ部分への投資を行い、顧客からの信頼を獲得していくことに、その未来が開かれることになるだろう。近しいからこそ、差別化要因が大事だ。僕はそう思う。

今日はこの辺で。

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