プロモーションパッケージプラン にみるヤフー戦略の変貌 ZHD2022第二四半期(決算)
これからはネットであることが差別化要因ではない。企業は自らを知り、ネットで蓄積されたデータを活用して、顧客分析して然るべき相手に適切にアプローチすることが急務である。先ほど、Zホールディングスの2022年度の第2四半期決算発表会に出席し、痛感したことである。
モールの変貌
1.新ジャンルへの拡大で企業価値を底上げ
そもそも彼らは自らの業績の振り返りの中で、今、新しいジャンルに進出することの意味を強調していたように思う。従来の「Yahoo!JAPAN」などメディア中心の事業形態から脱却を図ろうとしていて、それがコマース事業や傘下企業の相乗効果を狙った戦略事業である。Zホールディングス全体で見ると、事業の拡大に伴い、増収を達成している点を彼らは強調し、売上収益は第二四半期として過去最高の3943億円。
実際、新しいマーケットの開拓は進んでいるからこそ、既存の事業における生産性を高めることを説いた。生み出した価値から無駄なく、利益を着実に生み出せる構造は何かと考える方向へシフトしている。その意味でも、新生「Yahoo!ショッピング」の誕生はわかりやすい例である。PayPayモールと統合ですることで、お互いで築いた長所は残しつつ、施策そのものは一本化して、効率を良くしていく
では、彼らにとっての新しいマーケットとはなにか。今後を踏まえて150億円もの投資を行い、それらの半分をコマース事業、続いてメディア事業で30%、戦略事業で20%を割いているわけである。
2.顧客満足度を高めるコマース事業の投資
では、50%も割いた「コマース事業」は、それをこの会社の柱とするべく、何をしたのか。その意味では、守りと攻めの両面での投資が見られる。Yahoo!ショッピングでは直下に物流拠点は持っていない。しかし、物流系企業との連携を密にして、その配送の質の向上に努めているのである。
それに合わせる形で、Yahoo!ショッピングでは「優良配送」を用意した。つまり、ある一定の配送条件を満たした企業を優遇する処置をしているのだ。当然、モール内での扱いが良くなる基準に物流を据えたことでストア側も意識が変わる。ストアが物流の価値向上を念頭に置くほど、モールにとっては顧客満足度が得られて、それが彼らの利点となる。
広告を出した企業が単純に有利になるとしない点が、これらが従来のモールの考え方と違うのである。いまや大事なのは、顧客満足度。それを高めていくことで、継続顧客となることが経済圏にとってプラスになるからである。この双方の変化に伴い「優良配送」の店舗の取扱高の比率が、YOYで2.0倍に増えた。
これらで顧客満足度を高めれば、同じ経済圏内で様々なサービスを共通して利用してもらうことができる。リピート率の向上につながれば、まわりまわって、コマースの利用機会も増える。彼らがその経済圏を構築して拡大していくことの意味が見えるわけだ。
3.合併により手に入れた他にはできない価値の創出
勿論、守り的な要素で足場を固めつつも、新しい収益は新しいビジネスチャンスに挑むことにある。だから、それがLINEを使った海外ECへの販促と開発なのだとして、その取扱高が847億円となったことを明らかにした。この数字はYOYにして+40.5%である。
また、LINEのトークをきっかけに、商品をプレゼントする「LINE GIFT」はこれまでにない文化の提案である。ここでYahoo!ショッピングの出店ストアにそれを促すことで、ストアにとってはそれが新しい仕掛けとなって、伸び代となる。母の日の取扱高はYOYで2.2倍だ。合併による彼らの強みを活かしたサービス提案で、新しい価値を創造したと言ってよい。
もっと踏み込んだチャレンジ的な要素では、話題のNFTなどをLINEと掛け合わせる等している。戦略事業として位置付け、まだこの辺は、投資的な側面が強い。
4.それらの取り組みを最大化させるID連携
上記にも示した通り、彼らは経済圏としての地位を盤石にするべく、Yahoo!JAPAN、PayPay、LINEのID連携をおこなう。それらの開発も順調に進んで、まさにこれがこの企業の価値を高める本丸であることを示した。
そこで、彼らのコマース事業を今一度、強化していく上での決断が、PayPayモールとYahoo!ショッピングの統合である。これにより、これらのID連携のもと、ポイントで還元する際に、よりわかりやすい仕様となって、本腰を入れていくわけだ。
ネットであることだけが差別化要因ではない
1.プロモーションパッケージプランの意味合い
さて、その中でこれからのコマース事業は、冒頭話した「ネットであることが差別化要因ではない」という点に戻ってくる。つまり、彼らは、その経済圏内で生産性高く、売上を作れる仕組みを提供しようとしているわけである。
その最たるものが最近、発表された「プロモーションパッケージプラン」だ。これまでは原則、無料を全面に押し出し、PRオプションという検索順位を上げる工夫を通して、各々の実力を発揮させてきた。
ところが、このプランでは手数料を最初から3%、支払ってもらい、PRオプション同様に、検索順位で優位にするだけではなく、モール内でのデータの閲覧できるようにしたのである。
つまり、ヤフーとしては0円ではなくお金を募り、この事業の安定化を図る。一方で、出店ストアは自らの個性を把握して、モール内でのデータを閲覧し、施策などで有効活用して、成果を出してもらうと言うわけだ。
2.物流施策を掛け合わせ、より分析的で戦略的に
ここに先ほどの配送の取り組みを掛け合わせて、優良店には、追加特典を用意するわけである。この優良店というのは、優良配送注文数シェア50%以上、総合評価12点以上、と言う具合に一定水準を超えている店舗のことを言う。
必然的に経済圏の中での売れ行きを分析し、必要な商品を開発して、適切な配送を心がけてしかける店舗は伸びていくという算段である。だから、上記の写真の通り、統合後の優良オプションの加入状況はPayPayモールのPRオプション利用の取扱高と比べて、32.6%も増えているのである。
3.ビッグデータが最大化できる環境づくりとは?
つまり、経済圏というのはある意味、ビッグデータの集まりだから、そこがZHDの最大の強みとなる。いかにして、ID連携などを通して関連サービスとの相乗効果で、正確な顧客データが集められるかということが肝になる。
それゆえ、自ずとこれまでで言えば、まず商品登録をして、広告を打つ、という王道も、徐々に変化し、データを生かすということがメインになりつつあるわけである。そして配送環境を整え、継続的な利用を意図して、一過性の売上に頼らない。
痛感するのは、ネットでのヒット商品の作り方が明らかに変わってきていること。今一度、これらモールの変化から、店舗自身もモールの活用に限らず、お客様との接点のあり方を見直すべき時にきているのかもしれない。キーとなるのは、データとインフラがもたらす顧客満足度である。小手先の広告ではない。
今日はこの辺で。