2025年、米小売業の危機:店舗閉鎖数が過去最多の1万5,000店に
小売業界に吹き荒れる逆風
2025年、米国の小売業界に激震が走ろうとしています。米国調査会社コアサイト・リサーチの発表によると、2025年の小売店閉鎖数は約1万5,000店に達する見込みで、これは2024年の7,325店舗の2倍以上、さらに2020年のパンデミック時の閉鎖数(約1万店)をも上回る過去最多の規模となります。一方で、2025年の新規開業数は約5,800店舗と横ばいの見通しであり、小売業界の厳しい現実が浮き彫りとなっています。
倒産と閉鎖が相次ぐ専門店・薬局・百貨店
米国の格付け会社S&Pグローバルの統計によれば、2024年の倒産件数は14年ぶりの高水準に達しています。特に大きな影響を受けるのは、裁量的な商品を扱う専門店、薬局チェーン、百貨店などです。
個別企業を見ても、その影響は深刻です。2024年12月に破産法第11章を適用したパーティー・シティは738店舗を閉鎖し、ディスカウント大手のビッグ・ロッツは2024年9月の経営破綻に伴い601店舗を閉鎖しました。また、薬局チェーンのウォルグリーンも333店舗の閉鎖計画を進めています。これらの動きは、実店舗を中心とした小売業の厳しい現状を如実に示しています。
インフレと消費者の変化が影響
こうした大量閉店の背景には、インフレの長期化があります。消費者は商品の価格と利便性を重視するようになり、より安価な商品を求めてオンラインショッピングを活用する傾向が強まっています。その結果、アマゾン、コストコ、ウォルマートといった大手小売業者が市場シェアを拡大し、中小規模のチェーン店や専門店は競争に敗れ、店舗縮小を余儀なくされています。
コアサイト・リサーチのデボラ・ワインスウィッグCEOは「消費者は最も手軽な購入手段を選ぶ傾向が強まっています。サプライチェーンの最適化やテクノロジーの導入を進められなかった小売業者は、厳しい局面を迎えています」と指摘しています。
今後5年で4万5,000店が消滅か
スイスの金融機関UBSのアナリストによると、電子商取引(EC)のさらなる普及により、今後5年間で約4万5,000店の小売店舗が閉鎖する可能性があるとされています。賃料や人件費の高騰、デジタル化の進展により、実店舗中心のビジネスモデルはますます厳しさを増しています。さらに、小売業者への銀行融資が慎重になることで、資金繰りの悪化が閉店を加速させると警告されています。
変化に適応できるかが生き残りの鍵
米小売業界は今、大きな岐路に立たされています。EC化の波に乗り遅れた企業は厳しい競争を生き抜くことができず、事業縮小や撤退を余儀なくされています。しかし、一方でデジタル技術の導入や新しいビジネスモデルを取り入れた企業は、逆に成長の機会を見出しています。今後、小売業界はどのように変化し、生き残りを図っていくのか、その動向に注目が集まっています。
※本記事はジェトロのビジネス短信を参考に作成しました。