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光でたどる150年と、その先へ──高輪の挑戦を体感する「TAKANAWA LIGHT JOURNEY」

高輪ゲートウェイ駅前に広がる夜の空間が、光と音、そして記憶によって変貌する。「TAKANAWA LIGHT JOURNEY」は、単なるプロジェクションマッピングイベントではない。150年前、日本で初めて鉄道が海の上を走った“挑戦の地”高輪。その歴史と、今なお続く未来への実験精神を、没入体験として立ち上げる試みだ。

 街そのものを舞台に、過去・現在・未来を旅するこの夜の体験は、東京のナイトタイム観光に新たな輪郭を与えていた。

鉄道のイノベーションから始まった街──高輪が背負う「挑戦の記憶」

 このイベントの背景には、高輪という場所が持つ特異な歴史がある。

 語られたのは、約150年前、日本で初めて鉄道が走ったときのエピソードだ。西洋の技術と日本の知恵を掛け合わせ、海の上に堤を築いて線路を通す——当時としては前例のない、まさにイノベーションの象徴だった。「TAKANAWA LIGHT JOURNEY」は、その記憶を単なる解説ではなく、“体験”として現代に呼び戻す試みである。

 高輪ゲートウェイシティが掲げる「100年先の心豊かな暮らしのための実験場」というコンセプトは、この歴史の延長線上にある。過去に挑戦があったからこそ、今の街があり、そして未来への挑戦が続いていく。アクセス性の高さという都市的条件も、このイベントの意味を後押しする。羽田空港や都心主要ターミナルからの導線を活かし、夜の時間帯にこそ体験できる価値を発信する。

 それは単なる観光施策ではなく、「都市の夜をどう使い直すか」という問いへの一つの答えでもあった。

自動走行モビリティが象徴する“未来の入口”──体験としての都市

 オープニングイベントの象徴的なシーンが、ゲストの登場方法だった。堤真一さんと當真あみさんは、自動走行モビリティに乗ってステージに現れた。このモビリティは、水素エネルギーを使った環境配慮型の次世代移動手段。単なる演出ではなく、高輪ゲートウェイシティが描く未来の都市像を、そのまま体験として提示する存在だ。

 堤さんは「振り落とされるかと思った(笑)」と冗談交じりに語りつつも、木材の質感や乗り心地の柔らかさに触れ、「心地いいスピード」と表現する。當真さんも、手すりの感触や音楽、説明音声など、五感に訴える体験としての完成度に言及し、「ずっと乗っていたい」と語った。

 ここで重要なのは、未来技術を“説明”するのではなく、“自然に受け入れさせる”設計だ。高輪ゲートウェイシティが目指すのは、先端性を誇示する街ではなく、知らないうちに未来を体験している街。その思想が、登場シーンひとつからも伝わってきた。

街と光が一体化する没入体験──「TAKANAWA LIGHT JOURNEY」の核心

 イベントの中核となるのが、駅前広場「Gateway Park」を舞台に展開される没入型プロジェクションマッピングだ。今回採用されたのは、日本初となる“移動型プロジェクションマッピング”技術。映像そのものが空間内を移動し、天井まで含めた立体的な演出が可能になっている。

 さらに、噴水との連動によって、光・音・水が一体となった空間表現が実現した。これにより、観客は「映像を見る側」ではなく、「映像の中にいる側」へと立場が変わる。

 作品タイトルは「光の記憶航路 タイムボヤージュ」。

 150年前の鉄道開通から現在、そして100年後の未来までを一気に巡る構成で、1枚の切符が届くところから物語が始まる。“時間を巡る”というコンセプトは、単なる過去回顧ではない。この街が積み上げてきた記憶と、これから描こうとしている未来を同じ地平で捉え直す。その体験自体が、「TAKANAWA LIGHT JOURNEY」という名前に込められている。

「難しさ」を引き受けるという挑戦──演出家・石田尚志が語る裏側

 この作品の演出を手がけたのが、石田尚志さんだ。登壇早々に語られたのは、「めちゃくちゃ難しかった」という率直な言葉だった。ガラス面が多く、複雑な構造を持つこの空間は、プロジェクションマッピングにとっては最難関レベル。

 それでも高輪という「挑戦の場所」である以上、「難しい」と言って避けるわけにはいかなかったという。そこで採用されたのが、映像が動く「ムービングミラー」という技術。さらに噴水との連動まで加え、難易度は一段階ではなく、何段階も引き上げられた。

 石田さんが着目したもう一つの軸が、「チケット」という概念の変化だ。通行手形、切符、ICカード、そして顔認証へ。行き先が決められていた時代から、自由に選べる時代へと移行してきた人間の移動の歴史。

 その変遷を、高輪のモビリティの進化と重ね合わせた。ラストに掲げられたメッセージは、「未来への行き先は私が描く」。これは作品の締めであると同時に、この街全体に向けられた宣言でもあった。

見るのではなく、来て感じる──堤真一・當真あみが語る体験の価値

 上映後、二人が語った感想は、共通して「吸い込まれるようだった」という言葉に集約される。當真さんは、歴史から現代、そして未来へと一気に駆け抜ける構成に強く惹きつけられたと語る。堤さんも、江戸から明治、そして現代へと続く鉄道の進化に触れながら、「その時代ごとの技術のすごさ」と「今、ここまで来ている現実」への驚きを率直に語った。

 目的がなくてもいい。ただ歩くだけで癒される空間。雑踏ではなく、自然と調和した都市のフォルム。夜だからこそ立ち上がる、高輪ゲートウェイシティのもう一つの表情。

「TAKANAWA LIGHT JOURNEY」は、光のイベントであると同時に、この街がどこへ向かおうとしているのかを、静かに、しかし確かに体感させる場だった。

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